表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/33

第20話 優等生かAIマニアか

 前園メンテナンスでは、高間が誰よりも経験と知識を持つメカニックだった。

 ただ、高間も五十歳を超えており、年を重ねるにつれて最新の知識が頭に入りにくくなってきていた。

 特に、レースでのAIの活用については理解を深めることができず、苦手意識を持っていた。

 

 近年のレース界におけるAI技術の台頭は、著しいものがある。レース戦略や車両のセッティングのみならず、ドライビングスキルの向上やチーム運営にまで、その影響は広がってきていた。


 他のチームでは、AI技術の活用が、かなり前から当たり前に行われていると聞いている。

 環境を整え、杉山に戦えるマシンを与えるためには、AIの導入が急務だと、高間は考えていた。

 

 高間は前園に、AI技術者の採用を提案した。小さな会社で人員を増やすことは難しいかと思われたが、意外にも前園は二つ返事で承諾した。

 前園は、今回のC3車両のメンテナンスを契機に、会社を大きくしたいと考えていた様子であった。


 急ぎ求人広告を出したところ、二名の応募があった。

 二人は偶然にも同じ工業系大学の学生で、一人は太田という来春卒業予定の四年生、もう一人は世良という、二年留年している一年生だった。

 書類選考は参考程度にして、早々に面接が行われた。


 太田は、はきはきと話す明るい青年で、大学での成績も良く、昔からレースが好きで応募をしてきたとのことだった。

 一方、世良の方は常に伏し目がちで、受け答えのテンポも悪かった。レースのことは全く知らず、AIを仕事にできるからと一言だけ志望動機を述べた。

 前園と高間で面接を行ったが、どちらを採用するかは高間に一任された。


 普通に考えれば、太田を採用するのが無難だと思われたが、高間は世良を選んだ。 

 大学を中退してすぐに働けること、AIに精通していることもそうだが、杉山という才能に対しては、世良の異質さが釣り合うのではないかという、高間の直感による決定だった。


 世良の要望でガレージの横に小さなプレハブが建てられ、中には、そのスペースには不釣り合いな四台のエアコンが設置された。

 そこは世良専用の部屋となり、常時肌寒い空間には、多数のサーバーが設置された。世良は、そのサーバーと複数のパソコンに埋もれるようにして働いた。


 入社当初は世良が高間に質問をしてくることもあったが、徐々にそれはなくなっていった。

 世良は、AIを学ぶうちに習得した英語と、インターネットとを駆使して、世界中からモータースポーツにおけるAIの活用についての情報を集め始めた。


 ドライバーである杉山と世良の相性について高間は懸念していたが、杞憂に終わった。杉山は人付き合いが器用なほうではなかったが、なぜか世良とは話が合ったようで、次第に世良のプレハブに立ち寄ることが増えた。


 二人は仲が良いという訳ではなかった。

 杉山は速さを、世良はAIを、それぞれに極めようとする求道者同士として、知見を深めあっている関係のように、高間には見えた。

 そんな二人を見て、高間は、今回の世良の採用は成功だと思っていた。


 しかし、世良が入社して半年がたった頃、その評価を揺るがす出来事が起きた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ