16話 惨劇
ラグライズに着いた頃には日が昇りきっていた。人気が全くない。地面には人の死体が転がっていた。ショッキングな光景に吐き気を催す。思わずリオンが走り出す。一軒の家の扉を開け、中に走り込んだ。
「お姉ちゃん!!」
グンマも続いて入った後、私はあたりを見回して何か、動くものがあったのに気づいた。なんだろうと思い近づくとそれは炎を纏っている狼だった。だが、体が小さくて炎の輝きはとても弱々しく、せいぜい小さな火種程度のものであった。「死なせたくない!」と動物が大好きな私は思った。
(やったことなんて無いけど…やるしかない!)
これは見るからに魔力欠乏が原因。属性を持っているような動物は生命の維持に魔力を必要とする。人間だと魔力欠乏を起こしてもせいぜい気絶するくらいで済むが、属性持ちの動物だと最悪の場合死に至ることもある。
狼に右手を当てる。そして私の魔力を注ぎ込む。
(魔力を形にせずに力のまま右手から出していく感じ…)
少しして狼の纏う火が少し強くなった。そのまま更に魔力を流し与え続けるといきなり動きだした。少し元気を取り戻したらしい。やはり炎魔法が適しているだけあって私の魔力は炎に近いのだろうか。
狼がひとまず動けるようになったようなので安心し、狼から離れてリオンが入っていった家に入るとリオンがうずくまっていた。その傍らには1人の女性が倒れていた。顔に血の気が無く、全く動かない。
何も言えず立ち尽くす。
しばらくして、家の扉が突然破られた。見るともうかなり元気を取り戻した火の狼が怯えたように飛び込んできていた。
「なっ…なんだよこいつ!?」
グンマが叫ぶ。同時にマークはもう大剣を構えている。
「ちょっと待って!!」
慌ててマークを止める。
「なに?」
マークが怪訝そうな顔をする。
「この子…さっき死にかけてた…」
そう言って、さっきの話をした。
「…そんなことがあったんだ…」
「てかお前魔物助けるって正気か?」
「だってこいつ魔物じゃん。アホじゃねぇの」
私が怒って怒鳴ろうとしたとき狼が私の方に向かってきた。
「危ない!」
マークが叫ぶが遅い。
「えっ…」
狼は襲いかかっては来なかった。代わりに私の後ろに隠れるように縮こまっていた。
「怯えてる…?」
「でも何にだろう…」
首をかしげる。
「…っ!」
私ははっとして、急いで家から飛び出す。
「テレス!?」
狼がわざわざ隠れに来たということは、それだけの脅威が迫っているということにほかならない。
「…え?」
追いかけてきたマークが声を漏らす。グンマも後ろに続いている。リオンはまだ家の中だろうか。そして3人だけで戦わなくてはいけない目の前の相手を見据える。
そこには六腕の魔物がいた。全身真っ黒。だが、腕にところどころ線が入っており、そこから溢れ出す魔力はドス暗く燻んだ赤色で禍々しい。そのせいで身長2mほどと人間とそこまでの差はないのに尋常じゃない威圧感がある。またその6本ある腕のうち4本はそれぞれ盾、大剣、槍、槌を持っていて、それらの武器は例外なくドス黒い血の色に染まっている。
「こいつ…!」
その血の色に染まった武器が全てを物語っていた。
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