9話 討伐
「いっ……」
ユイがうめき声をあげたかと思うと結界がぼやける。見ると右腕に木の根が突き刺さっている。相討ちだ。痛みで集中が乱れたのか、どんどん結界が薄れていく。ユイが結界を結び直そうとするが、怪我をした手ではうまく印が結べない。
これ幸いとカラスが羽根を飛ばす。ゴーレムが弾いてくれるが、結界が完全に消滅すれば厳しくなるだろう。そう判断し決着をつけるためつい最近使えるようになったばかりの魔法を紡ぎ始める。
そは熱を奪い温もりを捨つ死の象徴
そは柔を奪い動を捨つ静の象徴
美の極致たる氷よ出で来よ
私を中心に波のように冷気が広がっていくのが見える。氷の第3階梯、氷波。
氷は得意属性ではないが、いつか使えるだろうとこっそり練習していたのだ。貴重な範囲攻撃。それも3次元での。
それで終わり。
異様なまでに硬い羽根は急な低温に耐えきれず砕け散った。カラスは翼が凍りつき落下する。なんとか生きてはいるが、そこにマークが容赦ない剣戟を叩き込む。
たちまち翼が粉々に砕ける。叫ぼうとするが喉がうまく動かず声にならない。そしてマークが胴に深く剣を突き刺した。カラスはしばらくじたばたと暴れていたがやがて動かなくなる。
「やった…勝った…」
誰からともなく声が漏れる。それで我に返る。
酷い風景だった。広場の半分は真っ黒に焦げており、もう半分は真っ白に凍てついていた。せっかくなのでカラスの死体を持って帰ることにした。何かに使えるかもしれない。亀の方も持ち帰りたかったが、もはや使えるものではなさそうだった。
〜その夜〜
「お前ふざけんなよ!!!」
「あれで倒せたから良かったものの、倒せてなかったらヤバかったんだけど?」
「なんか弁明があるならしてみろよ!!」
「…おっしゃるとおりでございます」
私は4人から叱責を受けていた。ことの発端はあの氷波なのだが…
「…黙ってたら…いいとか…思ってない…よね?」
普段はほとんど喋らないユイまで追い打ちをかけてくる。
「調整ミスったってお前!魔法使いとしては初心者ってわけでもないだろうが!!」
魔法はそのまま使うことは少なく、威力や対象などを制御して使うのだ。その分威力は下がるが、まぁそうしなかったら味方にも平気で当たるからしょうがない。
あのですね…氷波は覚えたばっかりでして…余裕もなくって…そのー…制御を忘れてたと言いますか…なんと言いますか…制御せずにブッパしてしまって…とっさに大剣で防いだマークとゴーレムに庇われたユイを除いて…そのー…凍っちゃいまして…
「俺ら死ぬところだったんだぞ!?」
「俺だって大剣にヒビが入って今修繕してもらってるし」
「…ゴーレム…今までで…最高の性能…」
「…ごめんなさい」
マジで悪かったから…その…リオン?無言でどす黒い謎の薬品を調合するのをやめてくれないかな?
「飲み物買ってきたよ」
リオンがフラスコに入ったままどす黒い薬品を渡してくる。
「テレス、味見してみて?」
いややだよ?死ぬもん。机にこぼれたのがシュワシュワーってなって凹んでってるもん。
こうして叱責(及び殺人未遂)は明け方まで続いた…
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