キジンとデス・イーターの章17
ベタですみません。
あかきはあたりを見渡した。デスたちがそれを不思議そうに見ている。武器でも探しているのか?と思っていた。あかきは必死になっていた。デス・イーターが起きたら、今度こそ殺される。キレたデス・イーターに殺されてしまう。この旅で、この戦いで、こんな終わり方だけは嫌だった。そりゃそうさ。なんでよりによってキッピーに殺されなきゃならないんだよ。有り得ないだろ、そんなこと。許されないだろ、万が一にも。
俺は、キッピーも未来も、今も過去も全部守るために戦っているんだ。じゃあ、デスなんかほっとけばよかった。のか?キッピーに喰わせれやればよかった。のか?違う。それは違う。初めに戦ったデスなら、どうでもよかった。あいつらは、完全な敵だ。倒すべき、倒さなきゃならない敵。でも、どうだ?こいつらは、演技かもしれない。演技かもしれなかったが・・・俺には、違って見えた。
その瞬間、吹くはずのない風が、吹いた。髪がたなびいた。体が浮かび上がりそうなほど、強い風が吹いた。その風は、まるで体の中をすり抜けていくように、両脇から内臓、肺、鼻の頭、最後に頭の中をすり抜けて行った。脳に、キジンの顔がはっきりと見えた。笑った?俺も思わず笑った。キジンが笑ったかどうかは分からない。けど、確かにそう思えた。だから笑った。瞳を閉じると、ここがまるで草原になったようなさわやかな気分になる。キジンの名は気神。このキジンは風の力を使うのか?
デス・イーターが起き上がった。異変に気が付いたようで、ゴキブリのように素早く後ずさり、後退する。正気は失っていても、生き残るための勘はやはり鋭いようだ。あかきから5歩離れたところで様子をうかがっている。5歩・・・この5歩はデス・イーターの致命の間だ。ここからなら、一瞬であかきに届く。ぎりぎりの距離だ。あかきはそんなこと、もう気にしない。あかきの周りに雲のような霧のような靄が発生し始めていた。
「これが気神の力か?」
デス・イーターが慌てている。毒霧だとでも思っているのか?本当にただの霧なんですけどね。でなきゃ俺も死んでしまう。この気神は、空気を操る。なので、毒なんか出すことはできない。そんなことは知らない(俺もまだよくわからないが)デス・イーターが、距離を置いて様子を見ているのは好都合。どんどん霧を生み出し、雲を作っていく。デス・イーターが雲に触れまいとどんどんどんどん部屋の端っこに追い遣られている。意外と臆病だな。なんだか可笑しくなってきた。その様子を見て、デス・イーターは実に悔しそうだ。
しんごは走っていた。しかし、場所が分からない。前に来た(誘拐されただけだが)が、その時は特定の部屋に連れてこられただけで、その場所もどこか分からない。そもそも、その場所でいいのかもわからない。
宇宙船は長い廊下のような通路が一本、操縦室まで続いていて、その通路のところどころに部屋があり、その一つにあかきとキッピーがチュカカブラと戦った部屋がある。通路も50メートルほどあり、とにかく宇宙船は広かった。闇雲という意味を説明しているように、しんごはひたすらいろいろな扉を開けて、あかきとキックを探していた。しかも、しんごも過去に来るのに力を犠牲にしているので、かなり足が遅い。一つの扉を開けると、デスたちがいた。「やば」と声を出すとデスたちは声を揃えて「しー」と言ってきた。「あ、すまん」と謝り、部屋を出た。「ん?今のデスだよな?」ま、いいか。とにかく今は、あかきとキックを探すのが先決だ。
しんごは、走り出さんとする自分の足を、思いっきり止めたのでずっこけた。おもむろに今開けた扉をまた開けた。デスたちがまた慌てて「静かにしてくれ」と小声で言ってきた。しんごは、ゆっくりと、聞こえるか聞こえないかの声で聞いてみた。
「今しがた」
デスたちが小さくざわつく。なんなんだ?と。改めてしんごは言い直す。
「今しがた、侵入してきた人間がどこにいるか知ってるか?」
と聞くと、一人のデスが恐る恐る近づいてきて、ゆっくりとしんごを指差してきた。
「俺?」
デスがゆっくりと、静かにうなずく。
「ベ・・・ベタかっ!?俺のことじゃねーつーの!!!」
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