キジンとデス・イーターの章16
また夢を見る
「くそキッピーめ。完全に我を忘れてやがる」
あかきは虚ろになりながら、夢を見ていた。キジンの力を得た日の夜。そう、あの戦国時代に行った時の夢だ。あかきはすぐに、ここが夢の中だということに気が付いた。なぜなら、肉体がなかったから。魂だけの世界だった。
「夢・・・なんて見ている場合じゃないんだけどなー。・・・・まあいいか」
深くは考えなかった。なぜなら、これは夢だから。起きても、ピンチさは変わらない。ならば、今はゆっくりと眠ろう。
「て、おぬし、そんなのんきにしてる場合じゃないだろうが」
「誰だ?起こしてくれるのか?」
「・・・う~ん。そうは言っても起こさないが。少しだけ話をさせろ。わしが誰だか覚えているか?」
あかきは、覚えていた。そりゃそうだ。あかきにとってもキッピーにとっても今、目の前にいるのは命の恩人だから。でも、あかきはとぼけた。意味はない。なんとなく面白そうだから。
「え~と、誰?」
と冗談で言うと、その者は本気で怒り出した。悪いかな?と思い、取り敢えず平謝り。
「ウソです。覚えてますよ。英雄さんですよね。俺にキジンの力を譲ってくれた恩人ですから、忘れるわけないじゃないですか」
そう、目の前にいるのは、(キジンの力だが)齢105歳で死んだあの英雄だ。死に際で容姿も105歳に戻ってから死んでいったが、今は初めて会った時の、70~80歳ぐらいの容姿で現れている。少し表情がこわばっているが。
「うむ。初めからそう言ってなさい。何度も言うようじゃが、おぬしにはあまり時間がないじゃろうが。ふざけている場合じゃないじゃろ」
まあその通りなのだが、この英雄さんは、なぜ今になって再び現れたのだろうか?聞きたいことはあるが、特に今、聞きたいことはなかった。それでも考えてみたら、あった。一つだけあった。
「英雄さん。もしかして、俺も死が近いから英雄さんが迎えに来たってこと?それならそうと言ってください。俺は、あなたに迎えに来てもらえるなら悔いはない。さあ、行きましょう」
「よし、それなら行こうか。・・・ってそうじゃないわい。おぬしが死ぬか死なないかはわしにだってわからん。そうじゃない。今来たのはそうじゃない」
あかきはまたも考えてみた。死…じゃないのか?じゃあなんだろう?
「しんごのことですか?元気ですよ」
しんごがこの英雄の子孫だと聞いていたので、心配になって俺に聞きに来たのか?
「でも、それなら直接しんごに会いに行けばいいじゃないですか?あ、もしかして恥ずかしい?」
「そうそう。なんせ出会ったこと自体はないからの~。って、だから違うっての!!!いちいちそんなことでおぬしに会いに来るか!!!しかもこんな緊急事態の時に」
そうだ。忘れていた。俺は今、キッピーと戦い、死にかけているんだ。
「じゃあ何しに来たんですか?」
「それを早く聞きなさいよ」
英雄は呆れた顔になった。まあいい。「こほん」と英雄が咳払いをして説明を始める。もはやお亡くなりになっているのだから、咳払いとか必要ないだろと思いつつも、黙って聞くことにした。ややこしくなるし、話が進まない。
「キジンというのは、何も3神だけではないのじゃ。まだまだ何神もいるのじゃよ。それに、おぬしが過去に行ってもキジンの力が不変なのはなぜか、考えたことはないか?」
思い返してみたが、特にはなかった。そんな様子の(魂だけだが見えるようで)あかきにため息をつく英雄。
「キジンたちは、別におぬしについているわけではない。いつの時代にもいて、いつでも力を貸してくれているのじゃ。だから、この時代のこの場所のキジンを探すのじゃ。さすれば、困難な状況も、あるいは、打破できるかもしれん」
「なるほど、わかりましたが。わざわざそれを言いに来てくださったのですか?英雄は!?」
「うむ」
英雄はわざとらしく、大袈裟にうなずいた。なら早く言ってくれよと言おうか迷ったが、やはり言うのはやめた。こじれる。
「じゃあ、俺は行きます。ありがとうございました英雄」
「おぬしなら、しっかり生きて、しっかり戦えるじゃろう。期待してるぞ。死んであの世に来た時は、このわしを超えていることを」
「はい!!」
もう超えてるとは、冗談でも言わないことにした。話がこじれるから。そういえば、英雄の名前を聞き忘れた。
「はっ」
夢を見ていたらしい。ほとんど覚えているが。見ていた時間はほんのまばたきほどの一瞬だったようだ。俺はまだ、地面に転がったばかりだ。英雄の言うことが確かなら、ここにも、そして、どこにでもキジンたちはいるようだ。キジンって、そんなにいるんだ!?そこには驚いた。
俺は、キッピーに気が付かれないように左手だけ、一部祈神化をし、祈神の最後の力を使って若干の体に受けた傷を治した。さっき、キッピーを治したから、ほとんど祈神の力は残ってなく(そんなこと忘れていたけど、今体を治そうと思ったら思い出し、少しだけ頭に来た)、傷の癒えは若干だけだった。
「何にもかわらねーし」
浮かんだのは苦笑いだけ。さっきよりはマシか。そんなことよりも、今はもう、英雄の言うことを信じるほかない。それしか助かる道がない。俺もキッピーも、デスも、俺がここでくたばれば、誰にも助かる道がない。しかし、あの英雄の夢は、都合のいいただの夢じゃないのか?とも思えてきた。藁をもすがるとはこのことだ。
「どこをどう探せばいいんだよ?」
目を凝らしてみたが、もうそんな悠長にやってられないようだ。もう目の前までキッピーが来ていた。逃げるんじゃなく、逆に俺はキッピーの足を取り、自分が起き上がる反動でキッピーをぶん投げてみた。キッピーは完全に油断していたようで、思った以上にきれいに投げが決まり、キッピーは無様に一回転した。頭から落ちろ!とも思ったが、うまく回りすぎて腹から落ちて大の字で倒れた。笑っている場合ではない。このキッピーを笑っている場合ではない。
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