キジンとデス・イーターの章18
ケミストリーーーー
操縦室の中は雲で埋め尽くされ、デス・イーターが息を止め、空中を泳いで逃げようとして、ジャンプして転んだ。昔のアニメか!?こいつ、一応未来から来たんだよな?未来はそんなに進歩していないのか?って、今はそんなことどうでもいいだろ。新しい気神の力も、そう長くは続かない。早くしないと雲を発生させただけで終わってしまう。だが、いい感じだ。あとは、きっかけだ。そもそも、どうやればいいんだ?雷を起こすには。
「キッピー。聞こえてるんだろ?」
もう互いの姿は見えていない。それほどまでに部屋は雲に紛れた。俺は、とにかく部屋の中を歩き回ってみた。キッピーの位置は分かる。雲も気神の一部。雲を伝い、ソナーみたいに俺の体にキッピーの息遣いやいろいろが伝わってくる。もはや、この部屋にいるものは逃げも隠れもできない。俺以外は。キッピーの鼻も、この雲の中では意味をなさないようだ。俺は、試しにやってみた。キッピーの肩に手を伸ばす。びくっとキッピーの体が動いた。キッピーが俺を探そうと慌てて動き回る。俺はまたも、ニヤッと笑った。
かくして、俺とキッピーのイタチゴッコが始まった。俺はこの見えない空間でひたすらに死角から(と言っても見えてないんだが)触り、キッピーが探す。そろそろいいかな?霧の中に電気は十分溜まったっぽい。でも、どうやってそれを放出すればいいんだ?悩んでいると、突然それは訪れた。突然、部屋の扉が開かれた。誰?と思う間もなく、そこからしんごの声が聞こえた。
「あかき、キック!!大丈夫か!!!???」
と言ったのがみんなの耳に届く前に、ぴかっと光、ごぉぉぉぉぉぉぉーーーーんと大きな雷音が鳴り響く。稲妻は、無差別に放電し、その場にいた全員が、その稲妻の手のひらに包まれるように感電し、全員その場に倒れた。全員が「そんなのありかよ」って思っただろうが、今は誰も口を開くことはできない。しんごに至っては、本当にとばっちりだ。でも、きっかけになったんだから仕方ないだろ。
俺は、ゆっくりと起き上がり、キッピーに近づいて行った。気神が身代わりになり、俺は割かし無傷で済んだが、手足が機械であるキッピーは一番の被害を受けていた。死にはしていなかった。キッピーが死んでいたら、俺は間抜けを通り過ぎてただの間抜けだった。痙攣してぴくぴくしてはいるが。さすがキッピーだと改めて感心するよ。俺は、しんごに駆け寄った。しんごはなぜか笑っていた。気絶はしていないらしい。試しに声をかけてみた。
「なんでここにいるのさ?地上で待ってたんじゃないの?」
しんごの口がぱくぱく動いた。声は全く出ていないが、口の動きがオ・マ・エ・ノ・コ・エ・ガ・キ・コ・エ・タと形作った。
「うっそー。聞こえるわけないよね?」
しんごはマジらしい。さらに、アッシュというものから薬をもらっていることも教えてくれた。本当に奇跡的に、その薬は無傷だった。アッシュとかいうのがその薬を特殊な箱に入れていて、それがアースになっていたのだ。
「随分、そのアッシュて人は用意周到だなー」
思わず感動していたら、しんごに早く飲ませろと急かされた。分かってるけど、どうやって飲ませるんだよ。
「まったく。やれやれだぜ」
そのあと、俺はキッピーに薬を(口を無理やりこじ開け、喉奥にねじ込み)飲ませ、目が覚めたキッピーは一応正気を取り戻していた。デスたちも感電し、痺れていたが、そのうち目が覚めた。しんごも、一番軽い感電だったはずなのになぜか一番遅くに目覚めた。もっとも、しんごは気絶していなかったけど。
「目が覚めたか、キッピー?」
「うーん、いつの間に寝ていたんだ?」
「覚えてないのかよ?」
「えー、と、あまり」
「まじかよ」
話を聞くと、キッピーはデス・イーターになってからの記憶はないようで、さんざん暴れ回ったと知ったらショックを受けていた。キッピーは、もう治せないと言っていた。デス・ジャンキーらしい。
「でも、誰にも言うなよ。しんごとかも、薄々は知っていても実際にどうなるのかは知らない。俺も、実際にそんなに狂っちまうとは思ってもいなかった」
「まあ、まあまあだったぜ」
キッピーは照れ臭そうに頬を掻いた。照れてる場合じゃないが。キッピーはすぐにまじめな顔に戻り、デスたちを見た。もう、狂わないらしい。アッシュの(作った)薬は、少量だが、アッシュの血が入っていて、キッピーの禁断症状を和らげてくれるらしい。一時的だけだが。そこで初めて、俺はアッシュがデスだと知った。
「あかきが命がけで、文字通り命がけで守ったこのデスどもに。あかきがわざわざ俺と戦ってまで、あのデスどもをなんで守ったんだ?俺に食わせれば、余計なことにはならなかった。どちらかが下手したら死んでたんだぞ」
あかきもデスたちを見た。困惑した感じだが、表情は相変わらずの無表情なのでよくわからない。
「でも、あいつらは初めの奴らとは違っていた。ように思えた。今は、殺しちゃいけないと思った。話し合おうと思った矢先にキッピーが殺そうとしちゃうんだもんな。止めたくはなかったけど、戦わざるを得なかっただろ」
「たしかにな」
2人、顔を見合わせて大笑いしたが、笑っている場合じゃないだろ。いつのまにかそこにしんごも加わり、3人で大笑い。しんごに至っては理由も分からず、ノリで笑っていた。
「あのー」
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