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Numbers-ブレイズ・フィスト-  作者: 川合 佑樹


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第9話

 一方ツバサは、散歩でもするように路地を抜けていく。

 背後からまだ3人が必死に追いかけてくる。

 ナイフを振り回しながらゼェゼェ息を切らしている。

 ツバサは振り返りもせず片手を軽く振った。

「ねえ、もう疲れた? まだ走れる?」

 追っ手の一人が怒鳴る。

「ふざけんな! 止まれ!」

 ツバサがくすくす笑いながら端末を操作した。


「はい、ロック完了ー」

 ガクン! ガクン! ガクン!

 背後の3人の義肢が一斉に硬直。

 膝から崩れ落ち、コンクリートに顔面を打ちつける。

 ツバサが振り返ってピースサイン。

「バイバーイ」

 倒れた男の一人が地面を叩きながら叫ぶ。

「くそっ……クラッカーかよ……!」

 ツバサが振り返ってにこっと笑った。

「当たりー。次はもっと頑張ってねー」



 屋根伝いに逃げるレン。

 後ろからガンドが跳躍しながら追いすがる。

「止まれ! 止まらねえと撃つぞ!」

 レンの義手センサーが赤く点滅した。

「屋上とはいえ街中でぶっ放す気か……」


 ガンドの巨腕が青白く発光する。

 プラズマが渦を巻き、砲口が開いた。

「死ねぇ!!」

 ズドオオオオオン!!!

 太い光線がレンを呑み込もうと迫る。

 熱波が空気を歪め、アスファルトが溶け始めた。


 レンは左手を背後に掲げた。

 光盾を45度に展開。

 青い魔力膜がビリビリ震えながら出現した。

 光線は盾に激突し、上空へ逸れていく。

 だが盾表面に無数のひびが入った。

 レンはちらりと盾を見た。

「……いい火力だな」


 ガンドが再びチャージ音を立てる。

「次は外さねえ!」

 レンが歯を剥き出しにして笑った。

「次があるかな?」

 そのまま屋上から飛び降り、路地へ着地した。

 膝が衝撃で軋むが義手のクッションが吸収する。

 目の前にツバサが立っていた。

「遅いよレン。おまたせー」

「ちょっと、野暮用があってな」

 背後からガンドの一団が到着した。


 レンは片手を前に出し、静かに告げた。

「ガンド。ここはもう『燐光区』だぜ?」

 ガンドの顔が引き攣る。

 額に汗が浮かんだ。

 周囲の建物から次々とアクセラの構成員が姿を現す。

 窓から、屋上から、路地から――全員が無言で銃口を向けていた。

 殺意が空気を凍らせる。

「……ちっ」

 ガンドが仲間に命じた。

「撤収だ……覚えてろよ」

 ガンドが最後にレンを睨みつける。

「次は絶対に逃がさねえ」

 レンが肩をすくめた。

「楽しみにしてるよ」

 敵は一瞬で霧散した。


 ツバサが肩をすくめてみせる。

「こっちには全然来なかったよー。寂しかったなあ」

「お前は足速いからな……。ほら、渡せ」

 ツバサは服の内側から小さな防魔パックを取り出した。

 中には本物のソウルストーンが青白く輝いている。

 レンはそれを木箱に戻した。

「あいつ、強かった?」

「……そこそこそこな」

「へー。次会うとき楽しみだね」

「二度と会いたくねえよ」



 二人は燐光区の中心にあるアクセラ直轄の大病院へ向かった。

 白亜の建物は要塞のように威圧的だった。

 建物が見えた瞬間、ツバサが端末を無言で操作し始めた。

 レンが横目で見て、小声で。

「……予防か?」

「うん! 内外の監視カメラだけねー」

 レンが眉をひそめる。

「……よし、いくか」


 二人が病院へ入る。

 受付嬢は完璧な笑顔で迎える。

「ご用件を?」

「ソウルストーンを持ってきた」

 箱を受け取り、すぐ横の検査機にかける。

 青い光が走り、機械が「認証完了」の音を立てる。

「……確認できました。では報酬を」

 小袋を差し出される。

 レンは中を覗き、金貨10枚を確認して頷いた。

「いくぞ」

 病院を出て路地に戻る。

「意外とあっけなかったね」

「……そうだな」


 ツバサが小声で尋ねた。

「ねえレン……なんか隠してる?」

 レンがポケットから折りたたんだ紙を取り出した。

「箱の底に挟まってた」

「えっ! 持ってきちゃったの!?」

「運ぶのは『ソウルストーン』って話だろ? これは違う」

 レンは紙を広げ、二人で読んだ。

 細かい数字の羅列だけがぎっしり書かれている。

 17-F-A

 09-M-B

 14-F-A

 12-M-C

 ……

 計42行。


 レンは眉をしかめたまま首を傾げる。

「……なんだこれ?」

 ツバサが紙を覗き込み、指先で一行ずつなぞった。

 そして静かに言った。

「……レン。これ、結構マズいやつだ」


 レンが顔を上げる。

 ツバサの声は低く、震えていた。

「年齢、性別、等級……人身売買の“商品目録”だよ」

 レンの義手がギリッと軋んだ。

「……は?」

「俺たち……知らないうちに、子どもたちの名簿を運んでたんだ」

 レンの顔から血の気が引いた。

 視界が真っ赤に染まる。

「……あのじいさん、知ってたんだな」

 ツバサが紙を指でなぞりながら呟く。

「……だから、あんなこと言ったんだ」


 レンは紙を握りしめ、歯を食いしばった。

 指が紙を粉々に引き裂きそうになる。

「……クソが」

 レンの声が喉の奥から絞り出された。

 ツバサが先に踵を返した。

「戻ろう」

 レンは一言。

「……ああ」

 二人は同時に走り出す。

 今度は怒りではない。

 絶対的な覚悟だけを胸に。


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