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殺奪  作者: 夏野
学生編

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51/328

遠征⑤

改稿済みです。


解説3/25(2024)

「』と『「」』について。

「ーーー。』だと、初めは口に出していて、後半は脳内で話してるということです。

『ーーー。」だと、初めは脳内で会話していて、後半は肉声で話しているということです。

「ーー『ー』ー。」だと、肉声で話してる最中に、固有名詞ではない具体例(文章や人名など)を挙げる際にわかりやすくするために『』でくくっています。

『ーー「ー」ー。』だと、脳内で話している最中に固有名詞ではない具体例を挙げる際に、わかりやすくその名詞を「」でくくっています。

(※たまに例外があります。)

今後もたまに出てくるので気にかけておいてください。

俺たちは夕食を食べ終えると、13階まで全員で移動し、そこからは各自、自分の部屋へと戻っていった。


時計を見るとまだ20時前だ。


前世で成人してからは、夕飯なんて8時とか9時とかザラだったし、子供の生活をしてるんだなぁって実感が湧いた。


いや、子供で8時って遅いか。


勝手な印象かもしれんが、小学生低学年だと5時とか6時には食べ終えてるイメージ。


ーピンポーンー


考え事をしていると、突如チャイムが鳴った。


「メラスさんでしょうか。私が出てきますね。」


先生はそう言ってドアまで歩いて行った。


「はい。」


もちろんインターホンなんてないので、先生はドア越しに話しかけている。


「あ、先生。私、メラスです。ミレアから話聞いたので、眠いけど頑張って起きてきました!」


「あ、メラスさんですか。今開けますね。」


ーガチャー


「あ、カインだ。やっほー!」


メラスが部屋にいる俺を見つけ、声をかけてきた。


「やっほーやっほー。」


悪いが、適当にあしらわせてもらう。


「カイン君、私はメラスさんについて行くので1、2時間空けますね。何かあったら〈念話〉の魔法を使ってください。」


「了解です。」


「じゃあ行ってくるねー。ばいばーい。」


メラスはそう言って俺に手を振ってきた。


「食べ過ぎてお腹壊すなよー。」


しぶしぶ、俺も手を振りかえした。


ーガチャンー


ドアが閉められ、俺一人の空間ができあがった。


うーん、やることがない。


運動?魔法の練習?勉強?


そんなもんやってられっか。


酒だ、酒を飲まねば!


せっかくクルーズ船に乗っているんだから、高級なお酒を飲むべきだ!


先生には置き手紙でもすればいいか。


『先生へ

 バーに行ってきます。2時間くらいで戻ります。

 byカイン』


これでよし。


そういや、メラスがいないってことはミレアは部屋でボッチでいるのか。


せっかくだし、誘って一緒に飲もうかな。


前世で就活中の大学生ってことは二十歳(はたち)超えてるはずだし、飲める口でしょ。


無理強(じ)いするつもりはないけど、同居してるのに一回も飲んだことない、友好関係を深めるためにも一度くらい酒の席で話をしてみたい。


……って思ったけど、俺が部屋を出たら鍵開けっぱになるじゃん。


閉めて出て行ったら先生が閉め出されるし…。


……よし。


「〈念話〉。先生、カインです。』


『ん?どうかしました?』


『バーに行ってくるので部屋を空けます。施錠魔法で戸締りしとくので、入る時は開錠魔法で入ってください!』


『は、え、何言ってるんですか?』


『じゃ、行ってくるので!』


『ちょ、待ってください!』


『サータ、着信拒否ってどうやればいい?』


『子供が保護者の目がないところでお酒なんて飲まないでください!』


『〈魔法結界(マジックバリア)〉を張っとけばいけます。』


『聞いてますか!?』


「〈魔法結界(マジックバリア)〉。」


おー!


本当に聞こえなくなった!


部屋の鍵と書き置きは机の上に置いといてっと。


俺は部屋を出て、鍵穴に〈無属性魔法〉の〈施錠(ロック)〉を使う。


『サータ、そういえば、何で〈施錠(ロック)〉のことを施錠魔法って言うのに、ステータスに施錠魔法は載らないの?』


『施錠魔法とは通称です。人などの生命が勝手に呼び出しただけなので、非公式の呼び方です。』


『ポッケモンスターの努力値や夢特性みたいなものってこと?』


『その例えは癪に触りますが、あってはいます。生命たちが、いちいち〈無属性魔法〉の〈施錠(ロック)〉と言うのがめんどくさいと、勝手に呼び始めました。言ってしまえば、略語みたいなものですね。他のメジャー所だと、〈重力魔法〉の〈飛行(フライ)〉を飛行魔法、〈神聖魔法〉の〈解呪(ディスペル)〉を解呪魔法、〈神聖魔法〉の〈蘇生(リザレクション)〉を蘇生魔法、〈空間魔法〉の〈転移(ワープ)〉を転移魔法と呼びます。』


『なるほどなるほど。「とりあえず、まぁ、」をとりまって言うけど、正式な日本語ではないから辞書には載ってない、と同じってことか。』


『その通りです。』


俺はサータと話しつつ廊下を歩き、ミレアの部屋に向かった。


ーコンコンー


「ミレアー、今からバーに行くんだけど、たまには一緒に飲まない?」


「行く行く!40秒で支度するから待ってて。」


この迷言を日常生活で言う人いるのか……。


一応、ミレアって若者の部類だよね?


20とか21だよね?


中身おっさん説が浮上してしまった。


「お待たせー。」


『サータ、何秒だった?』


『73.864秒です。』


「33秒過ぎてるぞ。」


「ケチだなー。冗談じゃん。」


「わかってるって。冗談には冗談で返せって昔の偉い人が言ってた。」


「冗談はよしおさん、みたいな?」


「嘘。今適当に考えて言った。」


「もー。」


「それで、ミレアって前世で飲酒したことあるんだっけ?」


「あるよー。たくさん飲んでたってわけではないけど、たまに宅飲みしてた。」


「いいなぁ。今は忘年会とか簡単に断れるんでしょ?俺の時代なんて任意という名の強制参加だったからねぇ。めんどくさいこと極まりなかったよ。そんなことする時間があったらゲームの周回してたかった。」


「まぁ、断りやすくはなったんだろうけど、人付き合いもあるから毎回断るわけにもいかないし、言うほど変わってないと思うよ。」


「あーねー。」


で、話しながら適当に歩いたわけだけど、ここどこ?


『そこのT字路を左に、次のT字路を右に、そのまま直進すると、海が見えるバーに着きます。』


『ナイス、アンドサンクス!』


なんか今日、サータに頼りっきりな気がする。


サータに言われた通りの道を行くと、いかにもな感じのバーが見えてきた。


「ここでいいかな?」


「任せるよ。」


「じゃあ入店しますか。」


店内には、ザ、バーテンダーな白髪混じりの髪ででちょび髭を生やした老人がいた。


「いらっしゃいませ。」


バーテンダーさんはアニメや漫画みたいにワイングラスを拭いている。


「今の時間帯は閑散としていますので、空いているお好きな席におかけください。」


俺たち以外の客は一組しかいない。


「どこにする?」


「うーん、窓際かな。せっかく船に乗ってるんだし。」


「じゃあ、あそこのテーブル席とか?」


「いいんじゃない?」


俺たちが座ることにした席は、海を横にして向かい合う形だった。


メニュー表は席に置いてあったので、パラパラとめくっていく。


ジンフィズとかブルームーンもあるのか。


こういうレモン系好きなんだよね。


今は度数が高いのを飲みたい気分だし、ブルームーンにするか。


……お、オーダーメイドのオリジナルカクテルもあるのか。


「俺はこのオリジナルカクテルにしようかな。」


オリジナルは飲んだことがないし、たまには飲んでみたい。


「じゃあ私も同じのを貰おうかな。」


「俺は適当に作ってもらおうと思ってるんだけど、ミレアはどうする?何か描いてほしいものでもあるの?」


「いや、ないよ。私もおまかせにするつもりだった。」


「りょーかい。すみませーん、オーダーお願いしまーす。」


「ただいま伺います。」


バーテンダーさんはそう言って、グラスを拭く手を止めた。


そして、厨房から出てきて俺たちの方まで小走りで向かってきてくれた。


「ご注文承ります。」


「俺はこのオリジナルカクテルが一点。」


「オリジナルカクテルがお一つ。」


「私も同じのを一つ。」


「オリジナルカクテルをもう一点ですね。このオリジナルカクテルはお客様のご要望を元に作成させていただいているのですが、なにかございますか?」


「「ないです。」」


「それでは、私(わたくし)に一任していただいてもよろしいでしょうか?」


「「お願いします。」」


「ありがとうございます。今からお作りしますので、少々お待ちください。」


バーテンダーさんはそう言って厨房に戻り、カクテルの用意を始めた。


「「………。」」


俺とミレアは急に無言になった。


雰囲気に飲まれたからか、お互いいつものテンションでいられなくなって、会話が続かなくなった。


そうして、お互い無言で見つめ合う。


こうしてみると、ミレアって典型的な異世界美少女だよな。


ロングの金髪に綺麗な碧眼で。


まぁ、俺も銀髪碧眼で異世界美少年だけど。


「「………。」」


お互い見つめあってたら小っ恥ずかしくなってきた。


恥ずかしさに耐えきれなくなった俺は、ミレアから目を逸らす。


ミレアも気恥ずかしくなったのか、俺が目線を外したと同時に、俯き始めた。


めっちゃ気まずい。


話せることもないし、酒もこないし。


何より、辺りが無音で、バーテンダーさんがシェーカーをシャカシャカと振る音しか聞こえない。


それが気まずさを引き立てている。


「そうそう、部活は最近どうよ?前世と比べて忙しい?」


俺はなんとか話題を振り絞った。


「うん。前世で言う、体育会系並みには忙しいよ。そう言うそっちはどう?」


「俺の方はミレアとは正反対で、文化部並みに緩い。だから自由時間が沢山あって楽でいいよ。」


「ほー、私も楽な部活に入ればよかった。」


「「………。」」


もう話のネタがなくなった。


「お待たせしました。」


お!


ついに来たのか!


やっとこの気まずい空気から解放される!


バーテンダーさんが持ってきたカクテルは、ブルーハワイをより鮮やかにして透明度を上げたようなカクテルだった。


中には金箔と銀箔が舞っている。


「ブルーハワイをベースに、柑橘系の果汁と炭酸を加え、爽やかな味わいにしました。また、お二方のイメージを金箔と銀箔、そして、この透き通る空色で再現させていただきました。それでは、ごゆっくりお召し上がりください。」


それでは一口。


ふむふむ、ブルーハワイをより爽やかにした感じだ。


ちょっと酸味も増してるかな?


「おー、美味しいね。こういう本格的なバーで飲んだの初めてだけど、いいもんだね。また今度バーで飲んでみたいな。」


「やっぱ酒はいいものに限るよ。俺はこういうサッパリしたのが好きだから、これ気に入ったわ。後で先生誘ってもう一回来ようかな。」


「飲み過ぎはよくないよ。夕飯のときだってお酒飲んでたんだから。」


「大丈夫大丈夫。酩酊しても魔法でなんとかなるし。」


「そういう問題じゃないような……。」


「ともかく問題ないって。」


「死んでも知らないからね?」


「甘かったな。この世界には蘇生魔法もある。蘇生魔法は〈神聖魔法〉の一種だから、ミレアも使えるのさ。」


「急性アルコール中毒で死んだら蘇生しないからね?」


「ちゃんと蘇生してね?」


「しないからね?」


「……まぁ、死なないし大丈夫か。」


「それにしても、蘇生もできる異世界に転生するなんて思わなかったよね。」


「そーだなー。」


「もう転生してから七年も経ってるのに、まだ自分は日本人だって考えちゃうんだもん。向こうの世界にいた両親や友達とももう会えないんだなぁって。」


「それな。二年しか経ってないけど、日本に依存したくなるのは分かるなぁ。毎日仕事仕事仕事仕事の生活から解放されたのに、日本のことを思い出したり、仲の良かった奴らとも挨拶を言えなかったからなぁ。」


「あの時私が転んじゃったから、カインまで死ぬ羽目に…………。」


「別に気にしてないって。おかげで異世界転生できて嬉しいくらい。」


「うん……。」


「本当に大丈夫だあら。」


「うん、わかった。…それで、訊(き)きたいんだけど、いいかな?」


「んー?なに?」


「さっき、転生してから2年って言ったよね?」


「うん。」


「私、7年なんだよね。」


「うん、知ってるけど。」


「おかしくない?カインと私で転生した歳が違うんだよ?私の方が後から死んだのに、私の方が先に転生してるんだよ?」


「たしかに……。なら、時間軸がおかしくなってるとか?」


『いえ、時間軸はどの世界に対しても同じ交わり方をしています。つまり、前後関係が逆転することはあり得ません。』


「余計謎が深まったな……。」


「それと、もう一つおかしな点があるんだよね。」


「え?まだあるの…?」


「私には【異世界転生者】の称号があるけど、カインにはそれがない。」


「あ………」


「サータ、この場合どっちの転生が普通なの?』


『マスターの転生の仕方が異常です。本来は、ミレアのように【異世界転生者】の称号を得た状態で0歳に転生します。称号なしで5歳に転生したマスターがおかしいです。』


「え……」


「ほら、やっぱり。」


「なんかショックなんだけど。」


『イレギュラーな転生ではありますが、現状問題はないですし、心配することはありません。』


「ま、まぁ、イレギュラーでもチートスキルは貰ってるからね。問題ない。」


「むしろいいことしかないでしょ。0歳から5歳っていう最悪の時期を過ごさなくてよかったんだから。」


「転生する歳をガチャで選べたんだけどさ、5歳からでよかったって今になって感謝してるよ。」


「そういえば昔言ってたね。転生ガチャで大外れしたって。」


「今となっては身分以外は大当たりだって思ってるけどね。」


「それはそうだね。」


そんなこんなで、俺たちは11時くらいまで飲んだ。


帰ってから二人して先生に怒られたのは言うまでもない。


◇


翌朝


はい。


二日酔いしました。


とても頭が痛いです。


「カイン君、二日酔いですか?」


「はい……。飲み過ぎました。」


「あれだけ飲めばそうなりますよ。自業自得ですから、私は〈回復魔法〉をかけてあげませんよ。」


「わかってますよ。それで、こんな状態で食欲なんてないので、僕は朝ごはんなしでいいです。」


「わかりました。もしお腹が空いたら、適当にルームサービスでも頼んで食べてください。」


「そうさせてもらいます。」


「あ。そういえば、海の見える露天風呂があるらしいですよ?入ってきたらどうですか?」


「マジですか。今から入ってきます!」


日本人の血が今すぐ入れと訴えてくる。


「脱水症状には気をつけてくださいね。」


そんなこんなで、俺は七日間の船旅の大半を酒と入浴に費やした。

雑談兼解説3/25(2024)

やっと魔法の〈〉の有無の説明を入れられました。少し無理矢理になってしまいましたが、許してください。


雑談兼解説3/26(2024)

「冗談はよしおさん」について。(前半解説、後半雑談)

お察しの通り、「冗談はよしこさん」の文字を変えたものです。元ネタが漫画ということもあり、一応よしこさんの部分を変えさせてもらいました。

余談ですが、固有名詞を使うだけなら法律的に問題ないんですよね。それこそ、著作権で厳しい夢の国のネズミをフルネームで書いても問題ないです。もちろん、その固有名詞を自作発言したりするのはアウトですが。稀にですが、重大な問題に発展してしまうこともあり、他の著名な作家の方々は避けてやっていますし、私も一応変えて執筆しています。


お願い3/31(2024)

私は未成年なのでお酒に関しては詳しくないです。もちろん飲んだこともないです。なので、「ここはこういう表現のほうがいいよ」とか、「ここのシーンは間違いで、本当はこうだよ」とかあったらご指摘いただけると助かります。今回だと、バーでオリジナルカクテルを頼むとどんな感じなのかわからず、想像で書いているので、助言があると助かります。


4/1(2024)

前回の改稿、コピペ範囲ミスってました。見ちゃった人は見なかったことにしてください。お願いします。

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