遠征④
改稿済みです。
修正点2/19(2024)
ギルドの支部のトップの言い方をサブギルドマスターから支部長に変更しました。また、サブギルドマスターは本部の二番目の権力者という扱いになります。
「まもなく、出港いたします。揺れにご注意ください。」
ーボーー
船の汽笛が鳴り響く。
揺れはあまり感じないが、【万象眼】のマップが動いているということは、出発したのだろう。
「先生、何日ぐらいの船旅なんですか?」
「客船ですので、1週間ぐらいでしょうか。」
………。
長くね?
隣国に行くだけだよね?
「隣国への遠征なんですから、普通は一、二日で行くものじゃないんですか?」
「たまには休みが欲しいじゃないですか。」
それはそう。
「それなら仕方ないですね。一週間の休暇を楽しみますか。」
「カイン君と話していると年齢の差を感じませんね。」
俺は前世で37歳で死んだ。
「そういえば、先生は何歳なんですか?」
「35くらいですね。」
「意外と若いんですね。」
「老けて見えますか?」
「失礼ですが45くらいには……。」
「あー、もう傷つきました。立ち直れません。」
「あ、僕は船内を歩いてくるんで。鍵とかよろしくお願いします。」
「逃げる気で……」
ーバタンー
俺は扉を閉めて逃げ出した。
◇
俺は部屋を出て、エレベーターもどきに乗る。
そして、15階を指定して、甲板に上がった。
甲板にはプールやバー、南郷風のレストランなど様々な施設があった。
甲板から港を見ると、もう街は小さくなっていた。
『サータ、この船って時速何キロで進んでるの?』
『時速20キロです。マスターの前世の船と比べますと、比較的遅いです。』
えーっと、20キロ×24時間×7日で……。
『3360キロです。東京からパラオまでの距離よりかも少し遠いくらいです。』
なら、飛行機で十数時間くらいか。
そう考えると早いかも。
いや、そんなはずない。
今までに、ライオンにドラゴンに魔神に襲われたんだ。
今度はクラーケンとかポセイドンとかに襲われるかもしれない。
そもそもの話、ステータスの運が高いのにこんな目に遭っているのはおかしい。
『ステータスの運が関与するのはダンジョンに出現する宝箱や、特定のスキ等に限ります。ですので、くじ引きやじゃんけんなどの運…つまを、遭遇に関する運はステータスとなんら関係ありません。』
『薄々勘付いてたけど、やっぱりそうだったのか。』
仕方ないし、過去は忘れて今を楽しもう。
俺は【ポーチ】の機能で私服から一瞬で水着へと着替えた。
〈衣装交換〉という〈無属性魔法〉や、服を替える魔法道具があるらしいので、俺が一瞬で着替えても問題はない。
いざ、プールに入水!
……ん?
距離感がおかしい。
外から見た感じは前世と遜色のない立派なプールだったが、プールに入った途端プールの大きさが一回りも二回りも大きくなった。
〈空間拡張〉の魔法がかけられているのか。
前世のホテルや遊園地にあるようなプールよりかも遥かに大きい。
もちろん俺以外にも泳いでる人はいるが、〈空間拡張〉のおかげで人口密度は高くない。
つまり、思いっきり泳げる!
そうして、俺はぷかぷかと泳ぎ始めた。
その後はクロールしたり、平泳ぎしたりした。
そうしてると、ふとバーのことを思い出した。
そう、この世界はお酒が子供の頃から飲めるのだ。
何でも前世と違って体に悪影響のある成分が含まれていないのだとか。
酔えるのに、脳の萎縮作用とかがないらしい。
ほんまいい世界だわ。
『あ、マスター。この船に大罪スキルの持ち主がいます。』
『……ん?聞き間違いかな。もう一回言ってもらっていい?』
『解析中……解析完了。対象の持つスキルは、ユニークスキル:【大罪】、【強欲】、【色欲】、【嫉妬】とゴットスキル:【傲慢之神】です。また、一つだけ解析出来なかったスキルがありました。おそらく上位のゴットスキルだったため、私の解析能力が及ばなかったからだと思われます。』
『えーっと……そいつは何かしてきそうなのか?』
『いえ、今のところ怪しい動きはありません。』
『なら、監視だけしといて。それで、何か動きがあったら教えて。』
『畏まりました。』
俺はそう受け答えしつつ、バーに泳いで向かった。
◇
1時間弱泳いだりお酒を飲んだりして、俺は部屋に戻ってきた。
「ただ今戻りましたよー。」
「お帰りなさい。何か異常はありませんでしたか?
「大罪スキルですか?」
「えぇ。カイン君も気づいていましたか。軽く船内を回ってきたのですが、大罪者を確認出来ませんでした。大罪のスキルを感じるのに、そのスキル保有者がいないのは妙です。」
『サータはどうやって見つけたの?』
『大罪の反応があるのはこの船全体です。例えるなら、霧のようなものが船を覆っている感じですね。その霧に動きがないので、動きはないと考えています。』
「僕の感覚なんですけど、大罪がこの船を覆っている感じでした。霧みたいに。で、その霧には動きがなかったので、とりあえずは問題ないと思います。」
「なるほど。霧ですか。言い得て妙ですね。たしかにそう言われれば、霧のような感じです。カイン君の言う通り霧に動きはないのでとりあえずは安全そうですね。ですが、人のいないところに行くのや、一人で行動するのは出来る限り避けてくださいね。」
「わかってますよ。それで、もうそろそろ夕食の時間ですよね?」
「そうですね。私は皆さんを呼んできますので、カイン君も準備をして部屋から出て待っていてください。」
「了解です。」
先生はそう言って部屋を出ていった。
そういえば、まだ部屋を見てなかったな。
ちょっと物色させてもらいますか。
部屋は2つでリビング的なのと寝室的なのだ。
もちろん水回りも完備されていて、風呂はなんとジャグジー付きだった。
巨大なバルコニーからは海を一望出来た。
前世でこんな豪華な部屋に泊まったことがないからわからないけど、前世のクルーズ船にも劣らないと思う。
まさか異世界でこんな豪華客船に乗ることになるとは……。
「カイン君、皆さん用意出来てますよ。」
先生が部屋の外から呼んでいる。
「今行きまーす!」
俺は机に置いてあった鍵を拾い上げ、部屋を出ていった。
部屋を出て扉に鍵をかけ、みんなの方を見ると、一人足りないことに気付いた。
「あれ?メラスは?」
「昼寝中。」
メラスと同じ部屋のミレアがそう答えた。
メラスの睡眠欲はどこにいようと衰えないらしい。
全員でエレベーターもどきに乗って下に降り、通路を歩いていくと、レストランが見えてきた。
「18時で予約した13階の5、6、7号室の者です。」
先生が代表して受付の人に言った。
予約ってことは、俺が甲板に行ってる間に部屋に備え付けられている電話でしたのかな。
「お待ちしておりました。ご案内します。こちらです。」
受付にいた人についていくと、一際豪華な席に通された。
これがスイートの権力なのか……。
前世で一度くらい味わってみたかった。
「当店ではビュッフェ形式となっておりますので、あちらからご自由にお取りください。また、時間制限などはありませんので、好きなだけお楽しみください。何かございましたら我々スタッフにお声がけください。」
「わかりました。皆さん、一斉に行かず、一、二人ずつ行ってくださ……」
先生がそう言う前に、クロムとリーシヤがダッシュで行ってしまった。
まぁ、俺とミレアは精神年齢大人だからね。
冷静沈着であたりまえ。
「はぁ、クロム君とリーシヤさんったら……。」
「子供はあんなもんですよ。」
「まぁ、子供だからね。私も昔はよくやってました。」
「お二人も十分子供だと思うんですけど。」
そんなこんなで先生とミレアと話していると、クロムたちが戻ってきた。
大皿いっぱいに料理を山盛りにして。
「ちゃんと食べ切ってくださいよ?」
「「もちろんです!」」
「カイン君とミレアさんも行ってきてください。私は待ってますから。」
「お、ありがとうございます。お先に行かせてもらいます。」
「ありがとうございます。貴重品とか持ってきてないですし、先生も来ちゃったらどうですか?」
「いえ、これでもクロム君とリーシヤさんはザーベストの王侯貴族ですから、私が目を離すわけにはいきません。どうぞ、お二人で取ってきちゃってください。」
と、二人には聞こえないくらいの大きさの声でミレアに言っていた。
少し離れた距離にいたが、高ステータスの恩恵で俺にもその話し声が聞こえた。
さっき目を離してただろとツッコミたくなったけど、よくよく考えれば先生はずっとクロムたちの方を向いてたっけ。
「あ、そうですか。わかりました。」
俺は先生のことなんて気にも留めてなかったのに、ミレアは気にすることが出来て偉いと思う。
同じ義務教育を受けてきたはずなのに、俺の感性はどこでひん曲がっちゃったんだか。
俺はそんなことを考えつつ、ローストビーフやステーキを取っていく。
ついでに白ワインも貰った。
ミレアは先生との話が終わった後に、スパゲッティーとロブスターなどの魚介類、他にはデザートなども貰ってきていた。
そうして俺たちは席に戻ると、交代で先生が取りに行った。
「カインったらこんな昼間のうちからお酒飲むの?」
俺が白ワインに口をつけようとしていると、ミレアにそう言われた。
「へーきへーき。酔っても魔法で何とかなるし。」
俺はワインを飲みながらそう言う。
魔法とは便利なもので、〈回復魔法〉には酔いを醒ますものがある。
ラノベで酔いは毒扱いで、解毒魔法や異常状態を治す魔法の対象になることが多いが、この世界ではそういった扱いにならず、酔い醒まし専用の魔法がある。
「へー、カインはお酒飲める口なんだ。」
「いや、そこまでじゃない。多少嗜む程度で、大酒飲みとかじゃないし。そう言うリーシヤは家でアルコール出たりするんじゃないの?公爵家だし。結構飲めたりするの?」
俺は何で7歳相手にこんな質問をしているんだろう。
前世で7歳飲酒とかアウトもアウトだよ。
「うーん、やっぱり子供だし、体質的にもそこまでお酒に強いわけじゃないからあんまり飲めないわね。社交界の時とかは飲まなくちゃいけないから、一口だけ飲んでるって感じ。クロムも同じ感じと思うわ。」
「うん、そうだね。自ら率先して飲んだりはしないかな。他の貴族の子たちも基本的には一口飲む程度。子供だからみんな飲めないから、大人たちが無理に勧めてくるってことはないんだけど、気分を高揚させるために一口くらいは飲まなくちゃダメだけどね。」
「うわー、めんどくさい社会だなぁ。」
子供のうちからお酒を飲ませられるなんて、前世じゃ違法オブ違法だ。
「そう?そんなもんじゃない?お酒は社交の手助けになるから、どこの国だって大事にされるんだよ。」
ミレアの言うどこの国って前世も含まれてるんだろうな。
無理矢理連れて行かれる飲み会、めんどくさい同窓会、目上の人を持ち上げなくちゃいけない接待。
色々と嫌な記憶が蘇るけど、そういうのはどれもこれもお酒を飲まなくちゃいけなかったよなぁ。
そう考えると、お酒ってどこの世界でも重宝されてるんだなってわかる。
「皆さん、何でそんな闇深い話をしてるんですか。お酒なんて判断を鈍くさせて相手を陥れるのに使ってるだけですよ。そういう意味では社交界のお酒も、子供に耐性をつけさせたり、酔った人たちとの関わり方を覚えさせるのが目的ですし。」
「「「うわぁ……。」」」
先生がぶっちゃけちゃったよ。
そう言う当の本人は赤ワイン持ってるし。
しかもローストビーフと生ハムとか言う最高のツマミも携えて。
「先生、それっぽっちで足りるんですか?」
クロムが問う。
「いえ、後でメラスさんと来る時に本格的に食べようかと。メラスさんを一人で行かせるわけには行きませんので、付いがなければなりませんから。あ、ミレアさん。メラスさんに、ビュッフェに行く前に私に連絡するように伝えてもらってもいいですか?」
「りょーかいです。」
「そうでした。皆さん、明日の朝や夜に食べたいお店を考えておいてください。お店が混んでる時に別々に入るとうるさかったりして迷惑になりますので、全員で同じ店に行きますからね。あ、個別で朝食、昼食、夕食というのは出来ませんが、それ以外の時間帯ならレストランやバーで食事してもらっても構いませんからね。」
俺たちはそんなこんなで夕食を楽しんだ。
報告?2/25(2024)
最後が雑な終わり方なのは許してください。




