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バグ少女

 友達。


 諸君は友達がいるだろうか?

 勿論いる事だろう。

 もしくはいた事だろう。


 大抵どんな人間にでも友達くらいはいるものだ。


 では楠才斗の場合はどうだろう?

 残念ながら彼は信じられない事にその『大抵』にカテゴライズされない。

 つまりは友人いない歴=年齢と言う非常に珍しい経歴を持っている。


 しかしながら彼とて、遊び相手くらいはいた。

 一応人間なのだが、人間を超え最早悪魔の領域の技量を持つゲーマ達。

 一般人から見たら才斗と彼等は友達に見えなくもない。

 賞金を稼ぐ為とは言え、毎日パソコン越しに馬鹿な事を話しながら笑い合い、悩み合い、時には喧嘩をしながらもゲームをする。


 それを友達と言うんじゃ?と思うかもしれないが不思議な事に彼等はお互いに仲間意識の様な物は確かにあれど、友達かどうかと聞かれると必ずNOと答えるのだ。

 別に照れ隠しで口にしない訳ではない。

 単純に本気でそう思っていないのだろう。


 昔エイプリルフールの時に才斗がグラトニーとラースに「なぁ?俺達って友達だよな?」と言った時に、彼等は驚きの余り心臓発作を起こし病院に搬送されるという事件がおこり、幸いな事に一命を取り留めた二人から後日『言っていい嘘と悪い嘘がある』と珍しく本気で怒られた事があったくらいだ。


 まぁ何にしても楠才斗に友達はいない。

 しかしそんな彼に歴史的瞬間が訪れていた。




「あの!私と友達になってくれませんか!?」


 今まで激戦を繰り広げていた夜叉にそんな事を言われたからだ。

 よく見ると夜叉は、その雪の様に白い肌の頬を赤く染め、太陽の様な眩しい笑顔をしており、まるで何処からどう見てもモンスターではなく可憐な美少女に見えてしまう。

 と言うよりも。


「えっ……まさか?」


 まるで可憐な美少女に見える夜叉は、降ったばかりの雪の様な真っ白い髪を腰まで伸ばしており、その髪と同じくらい白い肌には何処までも真っすぐな真紅の瞳を輝かせ、何処かあどけなさを残しながらも美しく整った顔は可愛さと綺麗さを理想的な黄金比で実現し、その美しさを純白な着物に包んでいる。


「お前まさか人間か?」

「はい!聖女ひじりめ朔羅さくらと申します!」


 自分を聖女ひじりめ朔羅さくらと呼んだ少女は正真正銘の人間らしい。

 確かに冷静になって見れば見るほど幻想的な美貌を持つ美少女にしか見えない。

 歌羽がアイドル、灯をモデルとするなら、目の前の少女は女優と言ったところだ。


 しかしそうすると一つの事実を認める事になる


「くっ……殺せ!」

「えっ!?急にどうされたんですか!?」

「オレは決してそんな辱めに屈しはしない!」

「何故そんな恥辱に満ちた顔をしながら目を潤ませそんな事を言うのですか!?」

「オレの心まで好きに出来ると思うなよ!」」

「しませんよ!私にそんな趣味はありません!」


 それを認めたくない一心で才斗は魔王に囚われた女騎士の様な事を言っていた。


 その認めたくない事実とは敗北。

 自分の事を神PSと言っている才斗はこの少女に負けた事になるのだ。

 それも完膚なきまでに。


 自分の反射神経や読みの全てを上回られ、更に数々のバグ魔法を余裕で避けられ、ギリギリでその全てを逆転させる技を編み出したと思ったらそれすらも一撃で破られた。

 しかもそれでいて実力の底が全く見えない。


「お前は一体何者なんだ?」

「何者と言いますと?」

「とぼけるな。一体さっきのは何だ?人間技じゃないだろうが!あんなの反則だぞ!お前チートとか最低だな!もう一回だ!もう一回俺と戦え!」


 才斗はラース達とゲームをし、幾度となくほぼ同数の勝ち負けを繰り返している。

 そしてそのゲーム内容はいつも紙一重でありどちらが勝っても可笑しくないものばかりだった。

 だから自分が全力を出したゲームでここまで完敗した経験は一度もない。


 故に余程悔しいのか、自分も反則を使っているにも関わらず更にそれを上回る反則を使われて負けると、子供の様に騒ぎ再戦を申し込む才斗。

 そしてそれを見た朔羅は信じられないと言った様子でポカーンとしている。


「え?聖女ひじりめ無双流むそうりゅうと言う我が家に伝わる剣術ですけども……あっ、あの、あなたは私が怖くないのですか?」

「剣術?馬鹿にしてんのか?そして煽ってんのか?怖がるわけないだろ!あんな初見殺しもう通じねぇから!」


 朔羅は才斗を超えるバグ技を聖女ひじりめ無双流むそうりゅうという技だとおずおずと答えると、最初の元気は何処へやら今度は自分の気になっている事を声を若干震わせながら問う。


「でっ、でも私、髪も眼もこんな色してますよ?」

「いきなり何だよ?見た目は強さに関係ないだろ」

「む、無理をなさらなくても結構ですよ?慣れてますので……ははは……」

「だから怖くないって」

「お優しいのですね……ですがやっぱり」


 怖くないと言ってるのにどれだけ自分を怖がって欲しいんだ?と、自分を圧倒したのにも関わらず、そんな事を何処か寂しそうにおっかなびっくり話す目の前の少女に苛立ちを感じる才斗。


「しつこいな!怖くないって言ってんだろ!お前はどれだけ自分が怖がられる存在だと思ってんだ?偶然にも俺から1本取ったからってあんま調子乗ってんじぇねーぞ?あとお前の顔のどこが怖いんだ?怖いくらい私可愛いですか?って意味か?そういう意味ならお前のその綺麗・・だしかなり可愛いと思うぞ。ああでも調子乗るなよ?あそこにいるオレのハーレム要員達と同じくらいだからな!?むしろ普通・・普通・・!バランスと言う意味では完璧だが、愛くるしさと胸のデカさなら小春乃の方が上だし、美人さとスレンダーさなら秋峰の方が……って、え?おい?何で泣いてるんだ?」


 そして才斗が思った事をそのまま不躾に朔羅にぶつけると、朔羅はその言葉を聞くと何故かその美しい顔をくしゃっと歪ませるとその綺麗な真紅の瞳から涙を流した。


「ひっ、ひっく、私、私」

「何泣いてんだお前!?」

「私、こん、こんなの初めてで」

「は?良いから泣くのをやめてくれ!」

「楠君?あんた何女の子泣かしてるの?」


 すると背後には、ドン引きしている灯と気絶から回復した歌羽が最低な男を見るような目で才斗を見ていた。






「つまり何だ?お前のその意味不明な強さとか髪と眼の色は、聖女ひじりめ一族とか言う謎一族の先祖返りの影響の物ので、その力を使って元の世界では悪い神々を相手にラノベみたいな異能力バトルを繰り広げていて、こっちの世界ではモンスターに襲われているプレイヤーを助けまくっていたけどその強さと見た目のせいで皆に夜叉だと思われ逃げられたり襲われたりしていた。とまとめるとそう言う事か?」


 あの後才斗は果てしなく冷たい目で見てくる歌羽達の誤解を必死に解き、軽く自己紹介を済ませると、この世界に来る前からファンタジーの住人だった朔羅の30分に及ぶ話を聞いて頭を痛くしていた。


「そう!そうなんですよ才斗さん!うわ~まさか同年代の方達と3人もお喋り出来るなんて感激です!今日は邪神をはらった日と同じ、いえそれ以上に嬉しい日です!私今まで戦いしかしてこなかったし、見た目もこんななので、こんなに同年代の方々とお喋りをしたの生まれて初めてなんですよ!大丈夫ですか私?喋り方とか変じゃありませんか?友達を作る為に古今東西のありとあらゆる書物を読み漁り鍛錬してきたので問題ないと思うのですが、何か粗相がありましたら言ってくださいね!」


 朔羅は顔いっぱいに笑顔を浮かべ、高いテンションで感動を伝えてくる。


 聞くところによると、朔羅は来たるべき神々との戦いの為に剣の修行しかしてこずに殆ど学校にも行ってなかったらしく、戦いが終わって高校に行ける様になってもその人間離れした容姿のせいで人を寄せ付けず、かと言って緊張の余り自分から話しかけに行くことも出来なくて友達がいなかったらしい。

 その時に思いついたのがゲームで友達を作ろうと言う事だったらしく、一番人気のMBOに目をつけたのだがこんなことになってしまい、よく分からないまま女神の塔の中でモンスターに襲われている人を取り合えず片っ端から助けながら彷徨っていた。と言うのが朔羅の経緯いきさつだった。


「……めんどくさ」

「めん!?」

「ちょっと楠君!朔羅が可愛そうでしょ!謝りなさい!」

「そうだよ楠君!朔羅ちゃんはとってもいい子だよ!」

「み、みなさん……」

「みなさんなんて呼ぼないの、あたし達もう友達なんだから灯でいいわよ」

「あっずるいよ灯ちゃん!朔羅ちゃん私の事も歌羽でいいからね」

「才斗さん、灯さん、歌羽さん……ひっく、ひっく、わだじなんがをとぼだちなんて」

「いや、オレは違うからな?」

「!?」

「「楠君!」」


 只でさえお荷物なハーレム要員が2人もいるのに、この上よく分からないバグむすめなんて相手にしていられないと思い距離を取ろうとする才斗だったが、ハーレム要員達が予想外にも朔羅を気に入ってしまったらしく、なんならこのまま仲間になりそうな勢いにげんなりしている。


(くそ……何で女はこんなすぐ仲良くなれるんだ?そういう能力なのか?確かにハーレムは好きだし、こいつらの見た目は相当な美少女だからテンション上がるが、そんな中にオレ1人男なんてアウエー過ぎて主人公能力の低いオレにはキャパオーバーだぞ……ん?というか何でこいつはその何たら流とか言う出鱈目な技をこの世界で使えるんだ?あんなのオレが可愛く見えるくらいのバグ……って。まさか!?)


「おいアホ娘」

「才斗さん、私の事は是非とも朔羅と呼んでください」

「さく……アホ娘、そんな事はどうでもいいからステータスを見せてみろ」

「あれ?楠君今照れた?」

「照れたわね確実に、ふふっ、セクハラはするくせ案外可愛いとこあるのね」

「は?照れてねーし?1ミリも照れてねーし?」

「才斗さん!私なんかで照れていただけたんですか!?」

「照れてねぇって言ってんだろ!?いいからささっと見せろ!」


 女の子からのこういう方向性でのイジリに慣れてない才斗は顔を真っ赤にし、ステータスの開き方も分かってなかった朔羅にやり方を教え、そしてそれを見て確信した。


【名前】聖女朔羅

【LV】30

【職業】ウォーリアー

【称号】大罪人

【状態】不幸、ボッチ、アホ

【能力】

・HP 900 

・MP 300 

・STR 90 

・VIT 90

・DEX 60

・AGI 60

・INT 30

・LUK -100

【特性スキル】

なし(習得不可)


 それは数値こそ違うものの、才斗と類似する点があったからだ。


「ちょっとこい!」

「え?才斗さん何処へ連れて行くんですか?そんなダメですよ!私達出会ったばかりじゃないですか!」


 才斗は歌羽達が疑問を浮かべる中、何かおかしい事を言っている朔羅を引っ張り少し離れた。


「お前もマリアの使徒なのか?」

「も?と言う事も才斗さんもですか!?いや~通りでお強いわけですね」

「ちっ、嫌味にしか聞こえない筈なのにお前が言うと不思議とそう聞こえないな」

「嫌味なんてとんでもない!人の身でありながら私に剣を抜かせた人などいませんよ?」


 やはりと言うべきか出鱈目な力をもつ朔羅も女神の使徒だった。

 しかしチートは記載されておらず、自分と同じくマリアに嫌われている証がいくつか見られる。


「お前もあいつから何も貰えなかったのか?」


「マリア様からですか?あ~皆さんがもらっている奴ですね。はい貰えませんでした。どうやら私が以前にはらった邪神がマリア様の通われていた学校の少し不良だけど人気のあった先輩だった事が原因らしいです」


「お前それキレていいよ」


「めっ、滅相もないですよ!マリア様はゲームなど初めてで右も左も分からなくてただ草原でオオカミ達を斬っていた私に、『このままだとあんたを天国に連れて行かなきゃならないといけなくなるのよね、そうだわ!どうせ暴れるなら上の階層で暴れて頂戴!あそこ今とんでもない事になってるから天国に行く前に人助けしていらっしゃいな』と言ってここまで導いてくれて、私のこんな斬る事しかできない剣に人々を守る喜びを与えていただいた方です!それに最後には念願のお友達までできたんです……出来ればもっとみなさんと一緒にいたいですけどそんな事は私にとっては過ぎたるもの。私は満足です!」


「………………」


 おそらくマリアは朔羅の強すぎる戦闘力バグを才斗の様に見逃す気は無く、どうせなら今塔で起きてる事を解決させてから天国に送る気だろう。


 当たり前だ。

 もしこんな女神のシステムの力を完全に無視した出鱈目な戦闘力バグを持つ者が夜叉ではなくプレイヤーだと知られれば大騒ぎになり、マリアはゼウスにこの世界を消させない為に、目の前の少女を消さざるを得ない。


「ゲームってこんな楽しい物だったんですね!」


「!?」


「もっと早くからやっておけば良かったですね。あ、でもそれじゃあ才斗さん達とお喋り出来なかったかもしれませんね。ははは……」

「………………」


自分が消えるというのに、そんな事をまったく気にせず人を助け続けた少女。

自分が消えるというのに、それで満足だと言う少女。

そしてそれが楽しかったと言う少女。


「…………てない」

「はい?どうしました才斗さん?」


「分かってないって言ったんだ。お前はゲームの楽しさをこれっぽっちも分かってない。人を守れたから楽しかった?友達が出来たから楽しかった?だから私は満足だだと?まだ全然遊び足りてないだろうが!そんな事言って勝ち逃げされたら胸糞悪くて死にたくなるわ!」


「え?えっと、あの」


「オレがお前に教えてやるよ本当の楽しさを」


 才斗はそんな少女をこのまま天国に行かせるかちにげなんて事を許さない。

 ゲーマーの彼にはそれが我慢できない。


「取引だ!オレがお前を消させない。お前が勘弁してくださいって言うまでオレが遊んでやる。その代わりお前はオレの剣になれ。あんなボケ女神にお前は勿体ないからな。オレがお前を有効活用してやる!」


 故に彼はヒーローではなくゲーマーのやり方をする。

 少女を友達としてではなく戦力として。

 少女を人ではなく剣として扱う。


「さぁゲームを始めようぜ!」


 そして彼の更なるゲームが始まる。




「私が才斗さんの剣に……」


「ああ!まぁちょっとかっこつけた言い方になったがつまりは戦力として、ってあれ?お前なんで泣きそうな顔してんの?あ~オレに言われた事がそんな嬉しかったのか?ん?どうしてそんな顔赤くしてるんだ?オレは別にこれと言ったフラグは・・・」


聖女ひじりめの女はその、オレの剣になれと言われたらその方の伴侶になる決まりでして」


「……え?いや、まて、そんなつもりじゃ」

「二人共お話まだかかる~?」

「どうしたの朔羅!?顔真っ赤よ?」

「そっ、それが、才斗さんに求婚をされまして!」

「「え!?」」


 ゲームが始ま……


「誤解だ!オレはこのアホ娘を戦力としてだな!」

「それでも構いません!私は才斗さんの剣なので!」


 始ま……


「ちょっ、待て!別にオレはお前の事が好きじゃ」

「最低だよ楠君!好きじゃない女の子にそんな事言ったの?」

「ありえない!やっていいセクハラと駄目なセクハラも分からないわけ?」

「セクハラ!?私への求婚はセクハラだったのですか!?」

「くっそおおおお!何でこの世界はオレに厳しいんだああああああ!」


 そして彼等・・のゲームが始まる



さぁハーレムをはじめようぜ(キリッ)

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