9-11
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電球の灯る一晩を過ごし、翌朝にはすでに
獣人の里が見えてきた。
目指すは今回の依頼の窓口であるイスイさん。
そしてそのイスイさんがやっている
『喫茶 明朗会計』
である。
正直一週間ほどの旅立ったにも関わらず、
濃厚な内容となってしまった今回の任務。
脱走したゴウゴが合流。
セリに騙され妖精の森で世界を賭けたドンパチ。
裏切ったゴウゴを簀巻きにして放置。
そして本来の調査任務である聖域の遺跡が轟沈。
すごいな・・・。
私の知る調査任務の範疇から逸脱しすぎじゃないかな?
これを報告しなきゃいけないとはお嬢もさぞかし・・・。
若干同情したのだが、理路整然と起こったことを報告する
お嬢の姿しか思い浮かばない。
実際お嬢が何かやったわけではないしな。
むしろ原因を別とするなら、
私たちはトラブルに巻き込まれただけの被害者なのだ。
そう、原因を別とするならばだが。
今も部屋でアニメとマイナスイオンに興じている
あの二体の顔がよぎる。
いや、とにかくお嬢が単純に報告すれば終わる。
終わるのだ。
ちょっと談笑交じりで報告を済ませて。
あのプチマーマン入りのお鍋をみんなで食べたら、
急いでこの里から離脱しよう。
獣人たちとグラインバルム王国の小競り合いの件もあるが、
私たちにどうこう出来るものではないだろう。
余計な厄介ごとに巻き込まれる前に、
魔法学校に戻って残りの夏休みを消化する。
お嬢にはそんな血なまぐさくない生活を送ってほしい。
そんな思いに浸っていると、
飛行状態が解除され地面に足が付く。
どうやらついたようだ。
スラ子、フーシェお疲れ様。
「な!」
「どういたしましてだよ!」
お嬢の報告が終わったらみんなでお鍋食べような。
私が二人をねぎらっていると。
「「くえぇーーー!」」
宿殻空間からピリカラ達がメモをくわえてやってくる。
『おみあげよこすです。』
そう書かれたメモ。
まぁ、この感じはセリだな。
一晩寝て落ち着いてくれたらしく。
一先ず前の様に接してはくれるらしい。
苦笑しつつもメモをしまい。
みんなで建物に入ろうとしたするが
妙な違和感に襲われる。
あれ?
スラ子とフーシェが運んでくれたのだから
目的地が違う事はないだろう。
周りの景色も見覚えのあるものだし。
ただこんな気色の悪いピンクまみれの建物だったか?
もっと落ち着いた雰囲気の外見だったはずだが、
今ではファンシーショップのような風体に
『かふぇていや めろーかいけい』
という看板が掲げられている。
???
んー名前はあっているのか???
この数日でイメージチェンジしたの?
様々な疑問。
そして何より扉の向こうから発してくる嫌な気配に
私が二の足を踏んでいるとお嬢が後ろからやってくる。
「ついたの?ついたらそう言いな・・・。」
私へのお小言を言いながらも、
お嬢も一変した外装に言葉が止まる。
店の前で立ち止まるお嬢と私。
出来れば誰かに事情を聞いてからの方が?
私があたりを見回すも周囲に人の気配がない。
おかしい。
こんな雰囲気だっただろうか?
だんだんと強まる違和感に不安をぬぐえない。
だがそんな程度でひるまない我らがお嬢。
若干警戒を強めつつも扉を開けるお嬢だが。
中を確認したお嬢の様子がおかしい。
「・・・っひぃ!!!」
聞いたことのないお嬢の声。
そして何よりお嬢が後ろ手にしりもちをついた。
!!!
お嬢が悲鳴を!?
しかもあんな無防備な姿をさらすなんて!?
まさかの事態に動揺する私たち一同。
見たことのない紫色に変色して威嚇体制を取るスラ子。
その後ろに隠れるフーシェ。
そして何より既に遥か上空へと退避したピリカラ達。
まぁ彼らの反応はわからないでもない。
それほどまでにお嬢とは力と畏怖の象徴なのだから。
ふふ、でもみんな大袈裟に驚きすぎだよ。
お嬢にだってあんな反応の一つや二つぐらい。
苦笑しつつも起こしてあげようとお嬢に近づこうとするが。
あれ?
おかしい?あ、足が動かない。
はは、おかしいな?
どうやら驚いているのは私も同じようだ。
頭は冷静でも体は完全にビビって制御がきかない。
それぞれが動けない中、
店の中から何かの気配を近づいてくるのを感じる。
一体、一体あの扉の先に何が?




