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この部屋から出て行ってしまったセリ。
いつもなら部屋の隅っこでうずくまるはずだが
今となってはそこで落ち込むことは難しい。
何故ならいつも落ち込むたびに座っていた隅っこには
次郎の依代となったコンセントがあるのだから。
でもおそらくこの空間からは出ていていないだろう。
だってこの空間から出たら間違いなくお嬢の
索敵範囲に飛び込むことになってしまう。
ダンジョン仕込みのその索敵範囲は隙が無く
いついかなる時でも魔力行使を検知する。
そう、ここから飛んで逃げようものなら即検知され。
飛ばずとも気配に敏感なお嬢に気取られる可能性が高い。
なので既にお嬢にデカい喧嘩を売ってしまったセリは、
お嬢と私が離れるまでここから出ることは出来ない。
と、言うことで。
探しに出てみるとどうということはなく
小屋のすぐ近くに座っていた。
「セリ?大丈夫か?」
体育座りでうずくまるセリは
私の声を聞くとさらに顔を深くうずくませる。
「次郎も悪気があったわけじゃないんだぞ?
レガ君もタイミングが悪かっただけだし、
マッキーもそんなに気にしないから。」
「そうやってお前は優しいことを言って、
私が油断したら馬鹿にするです。」
完全な疑心暗鬼なセリさん。
とりつく島もない。
どうしたものかと頭を掻きつつ後ろを振り返ると
小屋の入り口からレガ君と次郎がこちらを見ている。
めっちゃ見てる。
確かに次郎にあんな偉そうなことを言った手前、
ここで簡単に折れてしまうのも私の沽券にかかわる。
まずは建設的な話し合いをするためにも信用を勝ち取る。
「どうしたら私の事信用してくれる?」
「・・・私の下僕になるです。
そしたらちょっとぐらい信用してやるです。」
またぶっ飛んだ提案だ。
恐らく妖精の契約的な強制力の強いものだろう。
だが、これは承諾できない。
こんなんじゃみんな仲良くじゃないもんな?
だが、色々考えをめぐらしてもいい案は出てこない。
こうなったら理屈じゃないな。
素直に気持ちをぶつけてみるか。
「私な・・・セリのこと好きだぞ。」
「な・・・!!!」
私が考え込んでいるのをニヤニヤのぞき込んでいたセリが
私の突然のセリフに飛び上がる。
「と、突然何を言い出すですか!?」
慌てふためくセリ。
私のこんな返しをまったく予想していなかったのだろう。
「だからどっちが上とかそういう上下関係とか
邪魔なものを通してセリと接したくないんだ。」
「んー。」
どんどん顔が赤くなっていくセリ。
いつもギャーギャー威張り散らしているが
こういう可愛いところもあるじゃないか。
若干ツンデレ属性に目覚めつつも言葉を続ける。
「まだ、私の事信用できないかもしれないけど、
やっぱり私は一人の人として扱ってほしい。ダメかな?」
私の顔の位置で手のひらを広げるとそこに降り立って
もじもじし始めるセリ。
「・・・えっとです。・・・えっとです。」
どや?
見とるか次郎?
これがカニ太郎さんの実力やで。
そうやって再び小屋の入り口を見ると
若干怪訝な顔をしている次郎。
・・・あれ?
何か間違ったかな?
何がおかしいか考えようとすると
次郎の背後にいたレガ君が口の動いで。
『・・・キ・・・ス。』
と、メッセージを送ってくる。
ちょ!
もーやだー。
カニ太郎さん恥ずかしいんだけど!!!
だが、もうすでに手の上で陥落寸前のセリ。
そうか!
あと一押しだ!!!
何か良くわからない閃きに導かれた私。
「セリ・・・。」
セリに向けてそっと唇を寄せる。
「ちょ!・・・待つです!ちょ!!!いやぁ!!!!」
私の突然の行動に驚いたセリ。
私を制しようと勢いよく突き出されたセリ両手が
近づいていた私の顔に相まって一つの奇跡を起こす。
「ふが!?!?」
セリの両手が私の鼻に入り。
「いやですーーーーー!!!」
その叫びと共に私の鼻毛をありったけむしり取ってゆく。
そういって振り向きもせずに私の鼻毛と共に逃げてゆくセリ。
急いで誤解を解こうにもあまりの激痛で動けない私。
「大丈夫!?」
そういって近づいてくる次郎。
「ごめんな?仲直り出来んかった。」
そう、口に出して初めて目的を思い出す。
そうだ。
別に私はセリを口説き落としていたわけではない。
対等に、仲よくしようね?
そういいたかっただけなのに。
「・・・惜しかったね。」
そういって次郎の後からゆっくりとこっちに近づくレガ君。
「ねぇ?レガ君?なんで『キス』言ったん?」
「・・・いけるかな?って。」
くそ!!!
レガ君の言葉に乗ってしまった私の浅はかさが愚かしい。
とめどなく流れる鼻血を押さえつつ。
もうどうしていいのかわからず立ち尽くす私であった。
次回獣人の里




