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【第78話:現場の限界 —— 51歳の隠蔽工作】

(……よし、……腹も温まった。……次は……この『不良在庫』の山を……なんとかせなあかん……)

朝食の「お湯パン」で少しだけ元気を取り戻した田中は、昨日と同じ広大なゴミ山に立っていた。

田中は首の火傷の激痛を堪え、指先に意識を集中させる。だが、回路に触れた瞬間、脳裏に「ジジッ」とショートするような不快な音が響く。

「……はぁ、……はぁ……。……すまん……。……フル稼働は……無理や……。……今は……指先の……『霧吹き』が……精一杯……やな……」

田中は、激痛で霞む視界を無理やり繋ぎ止め、運ばれてくる金属片に、少しずつ水を吹きかける。

その時、ガムが持ってきた「ひしゃげた銀色の塊」に、田中の目が止まった。

(……ん? ……これ……なんや? ……周りの鉄くずは……サビサビやのに……これだけ……表面が……新品みたいに……滑らかや……)

田中は、指先のわずかな水で、その銀色の表面を撫でた。

泥が落ちた瞬間、月明かりを反射するような、不自然なほど美しい輝きが顔を出す。

(……チタン……? いや、プラチナ……? ……よぅ分からんけど……これ、……絶対に……『お高いやつ』や。……周りに……バレたら……アカン……!)

51歳の商社マンの嗅覚が、猛烈にアラートを鳴らす。

もしこれをカイたちに「お宝だ!」と正直に話せば、彼らは大喜びで換金所に走るだろう。そして、その道中で「子供が持っているには不相応な財宝」に目をつけた大人たちに、身ぐるみ剥がされるか、最悪消される。

(……悪いな、……お前ら。……これは……『預かって』……おくわ……。……お前らの……いのちと……ボーナス(退職金)……にするために……な……)

田中は、その「銀色の塊」を、わざと泥の中に落として、汚れたボロ布の中に素早く隠した。

「……おい、兄ちゃん。……今のは? ……なんか光った気がしたけど」

「……あ、……ああ、……ただの……メッキ剥げた……アルミ……みたいなもんや。……これ、……俺の……枕元に……置かせてくれ。……冷たくて……気持ちええんや……」

「……変なアニキだな。……いいよ、そんなゴミ。……さあ、次だ。……磨けよ!」

カイたちは疑いもせず、再びゴミの山へ戻っていく。

田中は、布の中に隠した「名もなき高価そうな金属」の冷たさを感じながら、首の火傷から滲む血を拭った。

(……危な……。……これ……換金ルートを……間違えたら……消される……やつや。……まずは……これを……『担保』に……隠居資金を……作る……算段を……立てなあかん……)

22歳の若々しい指先は、内側からの魔力暴走で赤く腫れ上がり、呼吸も荒い。

だが、手の中にある「隠し財産(仮)」が、51歳の精神を辛うじて現世に繋ぎ止めていた。

「……兄ちゃん、……これ、……今日の分だ」

夕暮れ時。カイが差し出したのは、昨日より明らかに多い「焦げたパンの耳」が二つ。

田中はそれを黙って受け取り、一つをルウに返した。

「……俺は……これでええ……。……その代わり……明日も……『掘り出し物』……頼むで……」

(……すまんな、……嘘ついて。……いつか……ちゃんとした……肉……食わせたるからな……)

自由の代償は重い。だが、田中はスラムの底辺で、密かに「逆転の切り札」を握りしめていた。

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