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【第67話:不純な中途採用 —— 22歳の奴隷、帝国の「兵站」に組み込まれる】

「……はぁ、……ひぃ。……あかん、……これ……前の職場(領主館)が……まだ……アットホームに見えてきたわ……。……ガウルさん……、……せめて……休憩1時間だけでも……」

帝国の最前線基地。田中を待っていたのは、領主館のような「放置」ではなく、分刻みのスケジュールで管理される**「超高効率・強制労働」**だった。

51歳の精神こころを持つ田中にとって、この環境はかつてのブラック商社時代を彷彿とさせる、いや、それ以上に過酷な「24時間営業」そのものだ。

帝国軍兵站部長ガウルは、田中の首にある「ミリタリースペック」に書き換えた首輪を使い、無慈悲に魔力を吸い上げ続ける。

(……商売の基本……『納期遵守』……。……でもな、……これ……人間を……ただの……発電機か……水道局……やと思っとるやろ……。……コンプライアンス……砂漠に……埋めてきたんか……)

田中は、巨大な鉄製の水槽へと繋がれ、ひたすら水を出し続ける。

22歳の若々しい肉体は、どれだけ魔力を絞り取られても、翌朝には新品のバッテリーのように回復してしまう。その「若さ」こそが、今の田中にとっては終わりのない残業を強いる呪いとなっていた。

だが、そんな「地獄の新生活」が始まって数日。基地内に、かつてのトラウマを呼び起こす地鳴りのような軍靴の音が響いた。

「おい、田中。……準備しろ。全軍、北進を開始する。目的地は……**『アイアン・ゲート(鉄門砦)』**だ」

ガウルが、鉄のような無表情で告げた。

そこは、田中がセレスやアリス、そしてポチと引き裂かれたあの因縁の場所。あれから、放浪し、奴隷に堕ち、売買を繰り返され……ようやく辿り着いた「帝国軍」の所属として、皮肉にも最前線へ送り戻されることになったのだ。

「……アイアン・ゲート……。……あそこに……戻るんですか……? ……俺……あの夜の本陣が……燃えるトラウマ……まだ夢に見るんやけど……」

「黙れ。貴様の水がなければ、この険しい山脈を越えての進軍は成立せん。軍の移動速度は水の補給に直結する。……これは命令ではない。帝国の『意志』だ」

(……あかん、……逃げられへん。……いきなり……激務の……出張……やんか……。……でも……待てよ。……あの砦に……戻るってことは……)

田中は、泥だらけの顔を上げ、西の空を見つめた。

かつての仲間たちが今、どうしているかは分からない。だが、帝国の「兵站の要」として最前線に立つということは、混乱に乗じて「不純な離職(脱走)」を仕掛ける最大のチャンスでもある。

「……よし、……分かったわ。……帝国軍。……あんたらの……大進軍……。……俺の出す……『不純な……調整水』……で……盛大に……足止め……したるからな……」

22歳の奴隷の瞳に、51歳の商社マンの執念が、再びギラリと宿った。

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