【第64話:不純な不良債権 —— 22歳の奴隷、競売(オークション)へ叩き売られる】
「……えぇい、もういい! 触るな! この役立たずめ!」
翌日。領主館の地下に、ゼノス管理官の怒号が響いた。
一晩かけて首輪の再設定を試みたようだが、田中は「抽出中にわざとらしく白目を剥いて卒倒する」「生成する水の温度を、不純なまでにぬるい36.5度に固定する」などの陰湿なサボタージュを徹底。
「……管理官様、……すんません。……俺……やっぱり……この……ハイスペックな……環境……合わんみたいで……。……マニュアル……読んでも……頭に……入ってこん……22歳……ですから……」
「黙れ! 貴様のような『維持費ばかりかかって魔力効率の極めて悪い欠陥品』を、これ以上館で養っておくわけにはいかん! 領主様もお怒りだ、即刻……競売に叩き出せ!」
ゼノスは、忌々しげに田中の鎖を壁のリングから外した。
それは「自由」への扉ではなく、ただの「所有権の移転」だ。
領主にとって、使い物にならない奴隷は、一刻も早く金に換えるべき「不良在庫」に過ぎない。
数時間後。
田中は再び、鉄の檻がついた馬車に乗せられていた。
行き先は、砂の街『カササ』の奴隷市場。だが、前回とは状況が違う。
「……フフッ、……『領主館から……払い下げられた……曰く付きの……欠陥品』……か。……これぞ……不純な……格安……物件……やな……」
一度「公権力」が匙を投げたという事実は、市場において強烈な「マイナス査定」となる。
だが、それは51歳の商社マン田中にとって、次の買い手を「選別」するための、格好のフィルタリングでもあった。
馬車が奴隷市場の裏口に止まる。
鉄格子越しに見える夕暮れの街並み。そこには、田中の「不良品」としての噂を聞きつけ、安く買い叩こうと集まった、海千山千の悪党たちの影があった。
「……さぁ、……誰が……俺を……『掘り出し物』……やと……勘違いして……手を……挙げるんやろなぁ……」
22歳の瑞々しい肌に、わざとらしい「疲れ」と「絶望」を滲ませながら、田中は再び、競売の壇上へと引きずり出されていった。




