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【第5話:月給5万のブラック契約 —— 軍属・田中】

王宮魔導師団の取調室。いや、内装を見る限り、ここは貴族が使う応接室に近い。だが、目の前に座り、足を組んでこちらを射抜くセレスの威圧感は、かつて不祥事の謝罪で行った取引先の鬼専務よりも遥かに恐ろしかった。


「名前は、タナカだったな。お前の異能はすでに鑑定済みだ。魔力経路も魔法陣も介さず、指先一つで純水を生成し、なおかつ摂氏単位で温度を自在に操る。お前を『人間給水拠点』として我が師団に特別配属する」


差し出されたのは、一枚の古びた羊皮紙だった。雇用契約書。田中は51歳の社畜の目つきで、隅々まで条件を確認し――そして絶句した。


「……基本給、月……銀貨5枚。……銀貨1枚がだいたい1万円やから、月給5万か。寮完備、食費込……。おいおい、これ最低賃金完全に割ってへんか? 有給休暇の記載もないし、出張手当の項目も白紙や。そもそも、これ労働基準法的にアウトやろ! コンプライアンスの欠片もないな!」


「この国にそのような法はない。断れば、不法魔法行使の罪で投獄だ。好きな方を選べ」


セレスの冷たい一瞥に、田中の魂が屈した。

「……承知いたしました。精一杯、御社の……いや、師団のために務めさせていただきます。……昇給制度については、後ほど協議させてください」


気づけば、51年間組織に飼い慣らされた悲しき社畜の習性で、完璧な角度の最敬礼をしていた。こうして、田中は若返った22歳の肉体を引き換えに、異世界のブラック軍隊で「人間給湯器」としてのキャリアをスタートさせることになった。彼は心の中で、自分を刺した嫁に向かって呟いた。

「おい、見てるか。俺、転生してまで、またブラック企業に就職してもうたわ……。……しかも、今度は上司が超絶美人や」

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