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【第53話:不純な成分調整 —— 22歳の奴隷、水に「付加価値」を仕込む】

「……おい、手が止まってるぞ『水瓶』。さっさと出せ。行列が途切れたら、今日の飯は砂利混ぜの粥だぞ」


ガラムの鞭のような罵声が飛ぶ。

広場の灼熱は、22歳の田中の体力を容赦なく削り取っていた。首の魔封じの首輪が、絶え間ない魔力抽出によって熱を持ち、喉元をじりじりと焼き続ける。


「……はぁ、……ひぃ、……ガラムさん。……これ、……オーバーワーク……やわ……。……法定労働時間……完全に無視……しとる……。……コンプライアンス……どこ行ったんや……」


田中は震える指先を、住人の空のツボに向けた。

ガラムは一杯につき銀貨3枚という、王国のスラムですらあり得ないボッタクリ価格で、乾いた民衆から金を毟り取っている。その強欲な集金を見ながら、田中は「組織の腐敗」を感じ取っていた。


(……このガラムって男、……目先の現金キャッシュに……目が眩みすぎや。……こんな売り方……長く続くわけ……ない……)


田中は、指先から滴る水に、極限の集中力を注いだ。

首輪のせいで「酒精アルコール」は封じられている。過剰な出力をすれば首が撥ね飛ぶ。だが、今の田中には、5年間の「不純な酒精」の研究で培った、分子レベルでの魔力操作がある。


(……首輪の検知に……引っかからん程度の……微量な『ミネラル』……いや……『微細な魔力成分』を……混ぜたろか……)


田中は、生成する真水の中に、ごくわずかな**「疲労回復効果」と、飲んだ後に鼻に抜ける「清涼感」**を付加した。かつて日本で、売れない栄養ドリンクにそれっぽいキャッチコピーを付けてヒットさせた時の経験だ。


「……あ、……あれ? ……この水、なんだか……飲むと身体が軽いぞ?」

「……本当だ。喉を通り抜ける時の爽快感が……これまでの泥水とは比べ物にならない!」


行列の住人たちの顔に、驚きの色が広がる。

ガラムは「ハハハ! 聖母の涙と言っただろうが!」と高笑いしているが、彼は気づいていない。


田中の狙いは「美味しい水を提供すること」ではない。

**「このガラムからではなく、この水(田中)からしか満足を得られない体」**に、街の住人たちを仕込むことだ。


(……ええ感じや。……依存症……一歩手前の……顧客ロイヤルティ……。……これぞ……不純なブランディング……)


田中は、汗を拭いながら、ガラムの背中に冷ややかな視線を送った。

自分が「高価な道具」として扱われるなら、その価値を独占し、やがて主人の手に負えないレベルまで高めてやる。


「……ポチ……、……今頃……暴れとるかな……。……待っとけよ。……俺はな、……この首輪……外して……あんたの商売ごと……乗っ取ったるからな……」


51歳の商社マンの魂が、22歳の奴隷の体の中で、静かに、しかし最高に不純な「毒」を練り始めていた。

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