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【第45話:不純な物流ルート —— 51歳、魔の森に「定期便」を確立する】

「……おい、ポチ。……またドーンさんの鎧、ベコベコや。……あの人、ここに来るたびに『死地を越えてきました』みたいな顔しとるけど、……それじゃあリピーター率は下がる一方や。……隠居生活の基本は、……顧客の『アクセスの良さ』やろ?」


岩塩パレスのカウンター。田中は、満身創痍で辿り着いたドーンに酒精を注ぎながら、51歳の商社マンとしての「物流ロジスティクス」の血を騒がせていた。


「……田中殿、……何を言う……。……この森を抜けるのは、……命を懸けるのが道理……。……それこそが、……この酒に辿り着いた時の『至福』を高めている……」


「……ドーンさん、……それは昭和の根性論や。……古い。……ええか、……『無駄な死線』は、……ビジネス……いや、人生のコストの無駄遣いや」


田中は、ドワーフのガラムが削り残した岩塩の塊を指差した。


「……ガラムさん、……あんたの技術で、……この谷底から森の外縁まで、……最短距離の『地下道』……いや、『不純な高速道路』を通せへんか?」


「……田中殿、……正気か!? ……数キロに及ぶ岩盤、……さらには地脈の乱れ……。……ワシら工匠団を総動員しても、……年単位の仕事になるぞ!!」


ガラムが髭を震わせて反論するが、田中は不敵な笑みを浮かべた。


「……だから、……『仕組み』を使うんや。……カイル君、……あんたの『空間固定魔法』で、……ポチの『覇気(威圧感)』をそのトンネルに定着させられへんか? ……魔物避けの『不純な芳香剤』としてな」


「……ポチ殿の覇気を……石壁に刻む……!? ……そんな、……神話級の魔力を定着させるなんて……。……でも、……もしそれができれば、……掘削くっさく中の魔物の襲撃を防ぎつつ、……強固な構造を維持できるかもしれません……」


そこから、パレスの裏側で「不純な大プロジェクト」が動き出した。

数ヶ月に及ぶ、地道で過酷な土木作業。

ドーンたちは任務の合間を縫って、怪力で岩盤を砕き、ガラムは設計図を引き、カイルは一歩進むごとに、ポチの「フンッ!」という一喝を壁面に魔法で定着させていく。


「……あかん、……カイル君。……そこ、……少しポチの覇気が薄いぞ。……魔物のモグラが顔出しとるやんけ。……もう一度、……ポチに『気合』入れさせて!」


「――グル、……フンッ!!」


ポチは、数日おきにトンネルの奥まで呼び出され、壁に向かって凄むという「不純な労働」に、心底面倒そうな顔をしていた。だが、田中が報酬として出す「酒精漬けの特大肉」のために、渋々付き合っていた。


そして、季節が一つ巡った頃。

連邦の外縁部から、岩塩パレスの入り口まで直通する、全長数キロの**『魔の森・不純ハイウェイ』**が、ついにその全貌を現した。


「……信じられないわ……。……あんなに苦労した大毒蜘蛛の森を、……鼻歌交じりで、……しかも鎧を着ないで通り抜けられるなんて……」


レナが、新品のドレスのような軽装(ポチの覇気が満ちたトンネル内では、魔物すら近寄れない)で、息一つ切らさずにパレスに現れた。

その背負い袋には、今朝、連邦の王都で焼き上がったばかりの「高級パン」と、最新の「不純な娯楽品(新しいオセロ盤)」が詰まっている。


「……ほらな。……物流が整えば、……QOLクオリティ・オブ・ライフが爆上がりするんや。……ポチ、……見てみ。……アイツら、……もう『冒険の厳しさ』なんて、……一ミリも思い出せへん顔しとるぞ」


「――グル、ワン」


ポチは「俺の威厳が、通路の防臭剤代わりにされた」と言いたげに欠伸をしたが、届けられた最高級パンを一口もらうと、満足げに尻尾を振った。

51歳の商社マン田中。彼の不純な知恵と、S級たちの数ヶ月にわたる「大人の土木工事」は、ついに魔境の概念を書き換え、この谷底を、連邦から「散歩圏内」の最高に不純なリゾート地へと変貌させてしまったのだった。

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