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【第1話:51歳の終焉と、風俗の代償】

鼻を突く下水の臭いと、湿った石畳の感触。泥水の中に顔を突っ込んでいた田中が慌てて起き上がると、そこには驚くべき光景が広がっていた。自分の手を見れば、長年の喫煙で黄ばんでいた指先は白く、シミやシワは消え失せ、22歳の瑞々しい肌が戻っている。だが、中身はあくまで「カミさんに刺された51歳のおっさん」だ。


混乱する田中の頭に、無機質なシステム音が響く。

『個体名:田中。固有スキル:【無限給水】を獲得』。

試しに右手の指先を、かつて部下を呼びつける時のように**(クイクイッ)**と動かしてみると、そこから透明な水が、水道管が破裂したかのような勢いで溢れ出した。


「……なんやこれ。水道代浮くわ、とか言うてる場合ちゃうぞ。ここ、どこやねん。……というか、俺、全裸に近い格好やないか」


周囲を見渡せば、崩れかけた石造りの建物と、虚ろな目をした住人たちがうろつくスラム街。若返った喜びよりも先に、周囲の治安の悪さと、これからの『営業方針』を考え始めてしまう。51歳の社畜根性と、農家の倅としての泥臭い知恵。

(……あかん、これ、倒産寸前の会社にいきなり放り出されたようなもんや。……でも、水が出るなら、やりようはあるはずやな。商売の基本は、需要と供給やからな)


田中は、泥だらけの22歳の顔を拭い、立ち上がった。かつて商社で培った「どんな商品でも売ってみせる」という意地が、絶望を上書きし始める。

「……よし、営業再開や。まずは、この街の『水事情』をリサーチしたるわ」

51歳の悲哀を抱えた若き田中の、異世界サバイバルが、いま最悪の場所から幕を開けた。

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