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【第0話:神様と51歳の再雇用面談】

デビュー作です。

温かい目で見てもらえると嬉しいです。


真っ白な空間。音もなければ、重力すら感じない。田中(51歳)が最後に覚えているのは、リビングの床に広がる自分の血の海と、キッチンナイフを握りしめた嫁の、鬼のような形相だけだった。


「……あかん、これ死んだわ。……あんな、風俗の領収書くらいで刺さんでもええやんか……。誕生日やったのに……」


ぼやきながら立ち尽くす田中の前に、突如として巨大な「光の塊」が現れた。それは形を持たず、ただ圧倒的な威圧感を持って語りかけてくる。


『個体名:田中。貴殿の現世における徳は、風俗通いと虚偽の申告により著しく欠損している。本来ならば、そのまま消滅させるべきだが……』


「……ちょっと待ってください、光の旦那! 俺、商社で30年、サービス残業もパワハラも耐えて、日本経済のために尽くしてきたんですよ! 一回や二回の風俗、福利厚生みたいなもんでしょうが!」


51歳の社畜は、死んでなお「交渉クレーム」を始めた。光の塊は、僅かに明滅を強めた。


『……面白い。ならば、再雇用のチャンスを与えよう。異世界という名の新規プロジェクトだ。ただし、不純な動機で命を落とした罰として、初期装備は最小限。肉体は、貴殿が最も傲慢だった22歳の頃に戻し、異世界のスラムに放り出す』


「……22歳!? 若返るんですか!? よっしゃ、それなら合コンもやりたい放題……」


浮き足立つ田中に、光の塊が冷たく告げた。


『与えるスキルは一つ。【無限給水】。指先から水が出るだけだ。これを使って、その不純な魂を浄化し、生き抜いてみせよ。……あ、残業代は出ないぞ』


「……え、水だけ? 火は? 剣は? 魔法は!? ……おい、これ、完全にブラックな出向案件やないか! 契約書見せろ! コンプライアンス的に……!!」


田中の叫びも虚しく、視界が急激に歪み、激しい落下感が彼を襲う。


『頑張れ、元・課長。……次は刺されないようにな』


神様の意地悪な笑い声を最後に、田中は異世界の泥の中に真っ逆さまに突き落とされた。


――そして。


顔面から突っ込んだ先は、腐った水とゴミが混ざるスラムの地面。


「……くっさ……最悪や……」

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