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【第12話:王都の軟禁 —— セレス専用サーバー】
王都に戻ったからといって、田中に自由時間が与えられるはずもなかった。
「田中、今日から私の屋敷に住め。他所に漏れては困る技術も持っているからな」
セレスの鶴の一声で、田中は彼女の豪華な私邸の「客間兼、給湯室」に軟禁されることになった。
仕事内容は多岐にわたる。朝、セレスが目覚める前の「白湯」の用意。彼女が帰宅した後の「42度の適温風呂」。そして深夜、彼女が書類仕事をする傍らで供する、指先から生み出す「極上の酒」。
「……これ、嫁に家事全般押し付けられて、『飯、風呂、寝る』の三段活用に付き合わされてた時と同じ空気やな。……というか、実質的に俺、セレスさんの『人間サーバー』になってへんか?」
セレスは、軍服を脱ぎ捨てた薄着の私服姿で、無造作にソファーに腰掛ける。その防備のなさに、22歳の肉体を持つ田中は目のやり場に困るが、中身は「はいはい、お疲れさん」と、ベテラン秘書のような手際で酒を注ぐ。
「田中、この酒……。少し味が変わったか?」
「季節の変わり目ですからね。少しだけキレを強くしておきました。……あ、残業代の交渉、今してもええですか?」
「却下だ。飲め」
冷たい師団長と、枯れたおっさんの奇妙な夜が更けていく。外ではアリスが「ズルい! 私も田中さまと一緒に住む!」と門を叩く音が、毎晩のように響いていた。




