12/136
【第11話:王都への凱旋 —— ひと時の休息?】
激しい攻防の末、戦況は一時的な膠着状態に陥り、魔導師団は補給と再編のために一度王都へと帰還することになった。沿道を埋め尽くす市民たちの歓声。花吹雪。英雄として迎えられるセレスと、華やかな魔導衣を纏い笑顔で手を振るアリス。パレードの熱気は最高潮だった。
「……あかん、これ凱旋っていうより、ただのドナドナやな。俺、ずっと馬車の隅っこで水瓶補充させられてるだけやんか」
田中は、華やかなパレードの列の最後尾で、見物客の女性たちから「あの若い兵士さん、素敵!」と黄色い声をかけられていた。22歳の顔立ちは、確かに人目を引く。だが、本人の心境は「腰に湿布貼りたい」「早く居酒屋で一杯やりたい」という、くたびれたおっさんそのものだった。
王都の喧騒は、戦場の死臭を一時的に忘れさせてくれる。だが、田中は知っていた。この華やかさの裏で、次の戦いの準備が着々と進んでいることを。
「田中さまー! 見てください、このお花! 街の人たちがくれたんです!」
アリスが大量の花束を抱えて馬車に飛び乗ってくる。その香りに包まれながら、田中はふと思った。
(……もし、俺が刺されんと、そのまま日本で働いてたら……。今頃、部下の愚痴聞きながら、安い焼酎飲んでたんかなぁ……)
若返った体で浴びる歓声は、51歳の孤独を、より一層際立たせるだけだった。




