↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼多見奇譚 参 戦慄の人造神  作者: 大河原洋
PR
41/46

廃校 弐

 耶蘇未麓は圧倒的な異能力《ちから》の差に戦《おのの》いていた。


 彼は芦屋満留や他の呪術師から得た情報や呪物を使い、己の霊力を高めてきた。そして遂に、魔物を己の精神に取り込む事で、この弥勒菩薩の能力《ちから》を手に入れた。限界を超えた力を手に入れたのだ。自分と御子神、そして真藤紫織の異能力《ちから》があればどんな異能者も組織も怖れるに足りない、国家さえも従わせられる。そう信じて疑わなかった。


 高野山に潜り込んでいる信者から鬼多見法眼を暗殺したとの連絡を受け、最大の脅威を排除し、夢が現実に近付いていることを実感した。だが、それは自分を油断させるための法眼の罠だった、あの時すでに彼らは法眼に操られていたのだ。


 鬼多見悠輝に弥勒菩薩の能力《ちから》を遮断され、今再び法眼に無力にされている。一度ならず二度までも、やっとの思いで手に入れた能力を奪われたのだ、本来なら計り知れない屈辱を感じていただろう。しかし、いま未麓が感じているのは恐怖だ。


  鬼多見法眼を敵に回すのはバカだけよ。


 芦屋満留が言った意味がようやく理解できた、甘かったのは自分だ。絶望的な状況だったが、神は彼を見放さなかった。


 愚かにも法眼と悠輝は親子ゲンカを始めた。


 未麓は辺りを見回した、彼の探している物は直ぐに見つかった。親衛隊が装備していたサブマシンガンだ。幸運にも数歩先に転がっている。


 ケンカ中の鬼多見親子に気付かれぬよう少しずつ動き、ようやくサブマシンガンが拾える位置まで移動した。


 二人はまだ殴り合っている。


 未麓は今度はゆっくりと屈んだ。異能力は遮断されたが、未だに身体は変化したままだ。そのせいで床まで大分距離がある。しかも脚に対して腕は細くなっている、かなり屈まないと拾えない。


 鬼多見の動きを横目で確認しつつ、慎重に身体を動かす。チャンスは一度きりだ、失敗すれば後がない。真藤遙香の狙撃で、強い異能力者でも物理的な攻撃で殺せる事は判っている。巨大な身体がもどかしい、こんな事なら弥勒菩薩真言を唱えなければ良かった。


 それでも、何とかサブマシンガン、MP5に指が触れた。もう一度、鬼多見親子に視線を向ける。


 未麓には全く注意を払わず、母親がどうした、娘がどうしたと騒いで殴り合っている。あれだけの異能を持ちながら、本当に愚かな親子だ。


 未麓はMP5を拾い上げると、銃口を鬼多見親子に向け引き金を引いた。反動が大きい。それでも無視して乱射を続ける。


 法眼のこめかみを銃弾が撃ちに抜き、驚愕して振り向いた悠輝の腹部も何発もの弾丸が命中した。


「フハハハハハッ、こんな時に親子ゲンカとは愚かすぎる!」


 横たわる二人の遺体からは何の返事もない。


「鬼多見法眼、恐るるに足らず!」


 未麓は勝ち誇った。そのため、大切な事を見落としていた。


「確かにそうだな、罠にはまって一日帰ってこれない爺《じじい》だからな。でも、鬼多見悠輝は怖れた方がいいぞ」


「何ッ?」


 背後に鬼多見悠輝が立っている。慌てて蜂の巣にした悠輝の下に視線を向けるが、そこに彼の遺体はない。いや、悠輝だけではなく、法眼もいない。そこでようやく未麓は気付いた、未だに己の異能力が回復していない事に。


 視線を戻すと、悠輝の隣に法眼も立っている。


「ったく、乱射なんかしやがって、万が一紫織に当たったらどうする?」


 未麓は全身の血が引くのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。