会津喜多方
牧田診療所を訪れてから二時間後、天城たちは喜多方市にいた。
ここは福島県の会津地方にあり、彼女たちは磐梯山と猪苗代湖の間を通り抜けて来た。今回はキャンピングカーだけではなく、FKTのワンボックスも一緒だ。協力と引き換えに、智里にスクープを約束したのだから仕方がない。
とは言え、見られてはマズイ物も色々とある。そこで、お目付役を斉藤恭治に頼んだ。彼は探偵仲間で、父の代からの付き合いだ。探偵の主な仕事は浮気調査だが、独りでは何かと手が足りない。そこでアシスタントを雇うか、他の探偵の助けを借りる。アシスタントを使うと、必然的に雇用主になるので何かと面倒だ。そのため天城は父から引き続き恭治に手伝ってもらっている。もちろん、彼が天城を助っ人に呼ぶ事も多い。恭治はこちらの事情も把握しているし、信用できるので今回も協力を頼んだ。
それにしても大所帯になってしまった。単独行動を悠輝は望んでいたが、思い通りにはさせない。今回は天城と恭治の他に、智里を含めたテレビクルーが三名、明人、梵天丸、政宗、そして遙香が同行している。
「この先にある建物、学校かしら? とにかくそこに紫織はいるわ」
頭上から遙香の声がした。彼女は運転席の上にあるベッドに横になりながら、タブレットを使い行き先を確認している。
「名前は表示されないのか?」
「航空写真だと建物があるのに、地図だと消えているのよ」
悠輝の問いに遙香が答えた。
「十年ぐらい前に、廃校になった小学校がある。そこじゃありませんか?」
明人がキャンピングカーに搭載してある、パソコンのキーボードを叩きながら言った。
「いかにもアークが好みそうな物件だな。偽名で購入したのかも知れない、それなら警察の目も誤魔化せるし」
「でも、あたしの眼は誤魔化せない」
凄いとは聞いていたが、本当に真藤遙香の異能力には驚かされる。六〇キロも離れた娘の位置が判るのもそうだが、牧田診療所から出る時も凄かった。入る時は変装したり小細工を弄したが、出る時は悠輝が遙香を抱きかかえ、明人と梵天丸も特に変装もせず堂々と出てきた。
野次馬も含め、三十人近くいたが、誰も天城たちに気が付かなかった。見えていないのではない。何人かと確実に眼が合ったが、写真も撮られなかったし、全く気にされなかった。まるで道端の電柱か側溝の蓋にでもなったようだ。この人数の意識を、遙香は重傷を負ったままコントロールした。恭治が眼を光らせずとも、彼女なら智里たちを支配して撮影を制限できる。
「そこまで、あとどれぐらい?」
「二キロもないわね」
「よし、どこかで停車して作戦会議だ」
天城はカーナビで、キャンビングカーとワンボックスを止められる場所を探した。




