闇
紫織は闇に包まれ、心の動きを止めていた。
何かを考えると孤独を感じ、淋しさに押し潰されそうになる。
ならば何も考えず、何も感じないようにすればいい。
人ではなく物になってしまえば何も感じないですむ。
物ならば心がないから孤独もない、真藤紫織の存在も無くなるからだ。
そのまま彼女は闇と同化し、永遠にここに存在するはずだった。
紫織……
誰かの声が聞こえたような気がした。
紫織……
また、聞こえたような気がする、名前を呼ばれたのだろうか。
紫織……
やっぱり、誰かが呼んでる。
止まっていた心が動き出す。
紫織……
ダレ? アタシをよぶのは?
紫織……
タツヤ? タツヤなの?
紫織……
タツヤッ、たすけて! アタシをここから出してッ!
紫織……
アタシはここだよッ、タツヤ!
紫織……
タツヤ! お願いッ、気づいて! アタシはここッ。
紫織……
タツヤッ!
見つけた。
タツヤ、どこ? 見えないよ?
お前は僕の物だ。
え?
僕に従え。
* * *
ベッドに横たえた真藤紫織の額に手を当てる御子神を、耶蘇未麓は部屋の隅で見つめていた。御子神は右脚の太ももに深い傷を負わされたため、車椅子に座っている。
鬼多見の小倅にこれほど手こずるとは……
娘は殺せないまでも重傷を負わせ、当の鬼多見法眼も部下から、高野山の仲間が始末したと連絡が入った。にもかかわらず、鬼多見悠輝は鬼神の如く信者を傷付け殺し、そして大切な御子神まで深手を負わせた。完全に不覚だった、己の甘さを未麓は認めざる得なかった。
でも、次はありません。
絶対に鬼多見悠輝を赦しはしない、法眼と同じ処へ送ってやる。




