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鬼多見奇譚 参 戦慄の人造神  作者: 大河原洋
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闇

 紫織は闇に包まれ、心の動きを止めていた。


 何かを考えると孤独を感じ、淋しさに押し潰されそうになる。


 ならば何も考えず、何も感じないようにすればいい。


 人ではなく物になってしまえば何も感じないですむ。


 物ならば心がないから孤独もない、真藤紫織の存在も無くなるからだ。


 そのまま彼女は闇と同化し、永遠にここに存在するはずだった。


 紫織……


 誰かの声が聞こえたような気がした。


 紫織……


 また、聞こえたような気がする、名前を呼ばれたのだろうか。


 紫織……


 やっぱり、誰かが呼んでる。


 止まっていた心が動き出す。


 紫織……


  ダレ? アタシをよぶのは?


 紫織……


  タツヤ? タツヤなの?


 紫織……


  タツヤッ、たすけて! アタシをここから出してッ!


 紫織……


  アタシはここだよッ、タツヤ!


 紫織……


  タツヤ! お願いッ、気づいて! アタシはここッ。


 紫織……


  タツヤッ!


 見つけた。


  タツヤ、どこ? 見えないよ?


 お前は僕の物だ。


  え?


 僕に従え。




     *     *     *

   



 ベッドに横たえた真藤紫織の額に手を当てる御子神を、耶蘇未麓は部屋の隅で見つめていた。御子神は右脚の太ももに深い傷を負わされたため、車椅子に座っている。


  鬼多見の小倅《こせがれ》にこれほど手こずるとは……


 娘は殺せないまでも重傷を負わせ、当の鬼多見法眼も部下から、高野山の仲間が始末したと連絡が入った。にもかかわらず、鬼多見悠輝は鬼神の如く信者を傷付け殺し、そして大切な御子神まで深手を負わせた。完全に不覚だった、己の甘さを未麓は認めざる得なかった。


  でも、次はありません。

 

 絶対に鬼多見悠輝を赦《ゆる》しはしない、法眼と同じ処へ送ってやる。


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