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鬼多見奇譚 参 戦慄の人造神  作者: 大河原洋
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牧田診療所 弐

 悠輝が世羽たちを相手にしていた時、明人は隠れていた牧田家の庭から表の通りに出て、天城の作戦を実行しようとした。彼女が考えたのは、アーク信者を捕らえて情報を引き出すのはもちろん、悠輝の濡れ衣も晴らそうという一石二鳥の作戦だ。


 そのためには、明人と犬たちの協力も必要不可欠なのだが、明人は二度と危険に曝させないと悠輝が難色を示した。実際、大槻聖堂で明人は大怪我を負ったし、今日も軽い怪我をしている。悠輝が過敏になるのも当然だ。


 天城は具体的な内容を説明し、何とか説得してくれた。明人はシエンタの運転席を覗き込むと、少し離れた所に移動して、わざとクルマをチラ見しながらスマホで電話を架ける振りをした。運転席から男が出て来て明人のスマホを取り上げようとした。


 次の瞬間、小さな黒い影が庭から飛び出し、男のふくらはぎに噛みつく。続いて大きな白い影も現れ、覆い被さるようにして彼を押し倒した。


「グルルル……」


 牙を剥き出し、政宗が男の鼻先で唸る。


「ヒッ、ぎゃッフ……ッ」


 明人は、悲鳴を上げようとした男の口を塞いだ。今は真夜中で静かだ。安眠妨害をして誰かに見られたら、天城の作戦が台無しになりかねない。


「梵天丸、放せッ、放せってば!」


 明人は珍しく強い口調で命じた。普段は大人しい梵天丸だが、興奮すると野生化する。戌亥神社で大乱闘をしてまだ半日しか経っていない、彼の闘争本能はメラメラと燃え上がっていた。


「梵天丸ッ!」


 明人は空いた腕を伸ばし、口の端に指を突っ込んで無理やり牙を外した。ようやく獲物(・・)を放した梵天丸の口は血で汚れていた。信者はすでに戦意を喪失しており、梵天丸を剥がすより楽に拘束出来た。


 悠輝は犬たちにも危険な事をさせるのを嫌がっていたが、天城は彼らのフラストレーションが溜まっていると伝えて了承させた。この作戦の欠点は、明人のフラストレーション解消に役立たない事だ。


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