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ジョブ制度



【ガルバディア帝国軍制中核制度】


「ジョブ制度」詳細設定資料



■ 1. 正式名称


ガルバディア帝国における「ジョブ制度」の正式名称は、『帝国戦技適性分類制度』である。


ただし、軍内・民間ともに略称として「ジョブ制度」、または単に「ジョブ」と呼ばれている。


帝国法上では、以下のように定義される。


帝国戦技適性分類制度とは、臣民の肉体的資質、魔力適性、精神傾向、認知能力、忠誠度、戦術理解、成長可能性を測定し、国家の軍事・行政・産業上もっとも有効な役割へ分類・育成・配置するための総合的人材管理制度である。


つまり、ジョブとは単なる兵種ではない。


それは、

才能の測定であり、

職能の割り当てであり、

身分の証明であり、

国家による人生設計でもある。


ガルバディア帝国において、人は生まれながらに自由な存在ではない。

人は測定され、分類され、鍛えられ、配置される。


そして、その分類名こそが「ジョブ」である。




■ 2. 制度の根本思想


ジョブ制度の根底にある思想は、帝国建国期の軍政哲学者オルヴァン・ディートリヒが残した言葉に集約される。


「人は平等ではない。ゆえに、等しく測定されねばならない」


この言葉は、現代の帝国でも軍学校の壁に刻まれている。


ガルバディア帝国は、個人の自由選択よりも、国家による合理的配置を重視する。

魔力の高い者を農地に置くのは損失であり、反射神経に優れた者を記録官にするのは浪費であり、指揮能力を持つ者を前線で使い潰すのは国家的失策である。


帝国はそう考える。


そのため、ジョブ制度は表向きには「誰もが自分の資質に応じて役割を得られる公平な制度」とされている。

貴族であっても適性がなければ高位戦闘ジョブには就けず、平民であっても優秀なら士官候補や特殊ジョブへ進める。


しかし実際には、制度は完全に公平ではない。


貴族は事前教育を受けられる。

都市出身者は検査対策を学べる。

軍閥に近い家系は優遇される。

辺境民や孤児、属州出身者は低評価を受けやすい。


つまりジョブ制度は、実力主義の顔をした国家管理制度であり、同時に帝国社会の階層構造を維持する装置でもある。




■ 3. 管轄機関


ジョブ制度を統括する機関は、正式には

帝国軍務府 戦技分類総監局

と呼ばれる。


通称は分類局。


分類局は、帝国軍務府の中でも特に強い権限を持つ部門であり、以下の機能を持つ。


1. 臣民の適性検査

2. ジョブ認定証の発行

3. 軍学校への配属決定

4. ジョブ別訓練課程の設計

5. 昇級試験の管理

6. 軍内人事への助言

7. 特殊適性者の監視

8. 不適格者の再分類

9. 隠れアビリティ疑いの調査

10. 戦時徴用対象者の選抜


分類局の権限は非常に大きい。


地方の役人が「この村から十人徴兵せよ」と命じるだけなら、ただの徴兵である。

しかし分類局が来ると、村人一人一人が測定され、誰が兵士に向き、誰が工兵に向き、誰が魔導補助員に向き、誰が労働徴用に回されるかまで決められる。


このため民間では、分類局の検査官を恐れて

「灰色の測り手」

と呼ぶことがある。


彼らが村へ来ると、誰かの人生が変わる。

ある者は兵士になり、ある者は帝都へ送られ、ある者は家業を継げなくなる。


主人公が軍へ組み込まれる場合も、この分類局の地方検査がきっかけになっている。




■ 4. ジョブ認定の流れ


帝国では、原則として十五歳から十八歳までの臣民に対し、第一次ジョブ適性検査が行われる。


正式名称は、

第一種臣民戦技適性測定。


一般には初期判定と呼ばれる。


初期判定では以下の項目が測られる。


* 筋力値

* 持久値

* 瞬発値

* 反応値

* 魔力量

* 魔力制御値

* 魔力属性傾向

* 視覚認識力

* 空間把握力

* 痛覚耐性

* 恐怖耐性

* 命令遵守率

* 集団適応性

* 攻撃性

* 防衛本能

* 記憶力

* 計算能力

* 成長余地

* 既存スキル

* 先天アビリティ反応


ここで重要なのが、単に「強いか弱いか」ではなく、どのように使えるかを見る点である。


たとえば筋力が高くても命令遵守率が低ければ、ナイトではなくバーサーカー候補になる。

魔力量が低くても魔力制御値が高ければ、メイジではなく魔導具整備士に回される。

反応値が高くても集団適応性が低ければ、正規兵ではなく斥候・密偵系へ回される。


検査後、候補者には仮ジョブが与えられる。


これを

暫定ジョブ指定

という。


暫定ジョブ指定を受けた者は、軍学校、地方訓練所、職能院、または民間軍需工房へ送られ、一定期間の訓練を受ける。


その後、正式試験に合格すると、

正規ジョブ認定証

が発行される。


正規ジョブ認定証は、帝国社会において極めて重要な身分証である。

これがある者は軍人・官吏・技術者として扱われ、給与、配給、居住区、婚姻条件、移動許可にまで影響する。


つまり、ジョブは人生そのものを左右する。




■ 5. ジョブ階級


ジョブには大きく分けて五つの等級がある。



◼︎第五等級:基礎ジョブ


もっとも一般的なジョブ。

兵卒、労働兵、補助員として大量に運用される。


例:

ソルジャー、ガード、ワーカー、ポーター、トレイニー、ミリシア。



◼︎第四等級:正規ジョブ


軍の主力となる標準職。

専門訓練を受け、部隊に正式配属される。


例:

ナイト、ランサー、アーチャー、モンク、メイジ、ヒーラー、スカウト、エンジニア。



◼︎第三等級:上級ジョブ


実戦経験、昇級試験、功績によって認定される。

部隊の中核や小隊長級を担う。


例:

グラディエーター、パラディン、ウォーメイジ、レンジャー、プリースト、バトルモンク、ルーンナイト。



◼︎第二等級:特務ジョブ


特殊任務、機密作戦、国家的重要任務に就く者。

認定人数は少なく、分類局と軍務府が直接管理する。


例:

アサシン、インクィジター、魔導破砕兵、黒衣斥候、聖盾衛士、戦場解析官。



◼︎第一等級:冠位ジョブ


帝国でも数えるほどしか存在しない最高位ジョブ。

単なる職能ではなく、国家戦力そのものと見なされる。


例:

剣聖、拳聖、大賢者、竜騎将、戦略魔導卿、皇帝近衛総帥。


第一等級ジョブを持つ者は、しばしば貴族以上の発言力を持つ。

彼らは一個人でありながら、戦場では一個大隊に匹敵する価値を持つとされる。




■ 6. ジョブ系統分類


帝国では、無数のジョブを管理するために、すべてのジョブを大きく十の系統に分けている。


正式には、

十系統戦技分類

と呼ばれる。



◼︎第一系統:剣盾系


剣、盾、鎧を用いる標準的な前衛戦闘系統。


ソルジャー


基礎歩兵。

剣、槍、盾、短弓などを広く浅く扱う。多くの兵士はここから始まる。


ガード


防衛専門の兵。

門番、護衛、陣地防衛を担当する。攻撃力は低いが命令遵守率が高い。


ナイト


帝国軍の代表的前衛ジョブ。

重装甲、盾、防御陣形に優れる。貴族子弟に人気がある。


ヘヴィナイト


ナイトの上級派生。

超重装備を扱い、敵の突撃を受け止める。機動力は低い。


パラディン


防御魔法と剣技を併用する上級ジョブ。

高い魔力適性と忠誠評価が必要。皇帝直属部隊に多い。


インペリアルガード


帝都・皇宮防衛の精鋭。

政治的信頼がなければ就けない。実力だけではなく家系も重視される。



◼︎第二系統:槍騎系


槍、長柄武器、騎乗戦闘を中心とする系統。


ランサー


長槍による対騎兵・対大型魔獣戦闘を担う。

部隊戦に強く、規律を重んじる。


ハルバーディア


斧槍を扱う重歩兵。

盾持ちや大型敵を崩す役割。


キャバリア


騎兵ジョブ。

馬、軍狼、装甲獣などに騎乗する。平原戦で強い。


ドラグーン


跳躍技と槍術を組み合わせる高機動ジョブ。

山岳戦や対空戦にも用いられる。


竜騎兵


魔獣化された飛竜、または亜竜に騎乗する特務ジョブ。

極めて希少で、青の大陸への強襲作戦用に温存されている。



◼︎第三系統:斧重撃系


圧倒的な筋力と破壊力を重視する系統。


アックスマン


斧を扱う突撃兵。

盾や鎧を破壊する。


ブレイカー


敵の防具、武器、陣地設備を破壊する専門職。

工兵との連携が多い。


バーサーカー


攻撃性と痛覚耐性が極端に高い者が分類される。

制御が難しく、政治的には危険視される。


グラディエーター


闘技場出身者や決闘訓練を受けた戦士。

一対一に非常に強い。


デストロイヤー


大型兵器や城門破壊を担当する上級破壊職。

戦場では短時間で大被害を出すが、消耗も激しい。



◼︎第四系統:弓射系


弓、弩、投擲、遠距離狙撃を扱う系統。


アーチャー


標準弓兵。

視力、集中力、呼吸制御が重視される。


クロスボウマン


弩兵。

訓練期間が短く、大量運用しやすい。


マークスマン


精密射撃を得意とする上級弓兵。

指揮官や魔導師を狙う。


レンジャー


森林・山岳での遠距離戦と偵察を兼ねる。

辺境出身者が多い。


バリスタオペレーター


大型弩砲を扱う兵器職。

艦隊戦や要塞戦で重要。



◼︎第五系統:魔導系


魔力を用いた攻撃、制御、支援を行う系統。


メイジ


基本魔法兵。

火、水、風、土などの属性魔法を扱う。


ファイアメイジ


火属性特化。

攻城戦や焼却任務で使われるが、制御事故が多い。


アイスメイジ


氷属性特化。

足止め、防衛、補給保存に有用。


サンダーメイジ


雷属性特化。

対魔導具、対艦戦で重宝される。


ウォーメイジ


戦場運用に特化した上級魔導兵。

攻撃だけでなく味方部隊との連携が求められる。


ルーンキャスター


刻印魔法を使う特殊職。

装備強化、結界、封印に関わる。


戦略魔導士


広域魔法を扱う高位職。

一人で戦況を変え得るため、政治的監視下に置かれる。



◼︎第六系統:治癒支援系


回復、保護、精神安定、後方支援を担う系統。


ヒーラー


基本治癒職。

傷の応急処置、疲労回復、感染防止を行う。


メディック


魔法と外科処置を併用する軍医職。

魔力が低くても医学知識で補える。


プリースト


精神安定、祝福、保護術に優れる。

神殿系教育を受けた者が多い。


セイント


高位治癒術者。

重傷者を戦線復帰させられるため、戦略価値が高い。


バリアメイカー


防御結界専門。

青の大陸の結界術に対抗するため近年重視されている。


サポーター


補助魔法専門職。

筋力強化、速度強化、感覚共有などを行う。



◼︎第七系統:格闘修練系


武器や魔力への依存を抑え、肉体そのものを鍛える系統。


モンク


拳、蹴り、投げ、呼吸法、肉体鍛錬を主とする。

魔力が低い者の受け皿と見られがちだが、極めれば非常に強い。


アイアンフィスト


拳打特化。

籠手や拳甲を用い、鎧の上から衝撃を通す。


グラップラー


組み技、関節技、捕縛に優れる。

敵兵の生け捕りや尋問前確保に使われる。


バトルモンク


実戦経験を積んだ上級モンク。

対武装兵、対魔獣戦でも戦える。


気功士


体内生命力を扱う特殊格闘職。

魔力とは異なる「気」を用いるとされるが、分類局内でも研究途上。


拳聖


格闘修練系の冠位ジョブ。

歴史上数名しか確認されていない。武器も魔法も使わず、要塞級魔獣を討った記録がある。


主人公の「魔力ゼロのモンク」は、この第七系統の最下層から始まる。

しかし隠れアビリティ「レベルアップ」によって、通常の訓練限界を超える可能性がある。



◼︎第八系統:斥候隠密系


偵察、潜入、暗殺、情報収集を担う系統。


スカウト


基本斥候。

地形把握、敵数確認、先行偵察を担当する。


シーフ


鍵開け、罠解除、物資奪取を行う。

軍内では便利だが信用されにくい。


アサシン


暗殺専門の特務職。

存在自体が機密扱いされる。


シャドウ


潜入破壊工作員。

敵国都市、港、魔導施設に潜り込む。


黒衣斥候


軍務府直轄の偵察精鋭。

任務失敗時には帝国が存在を否認する。


インクィジター


裏切り者、異端魔導士、敵性思想家を摘発する政治的特務職。

軍内でも恐れられる。



◼︎第九系統:工兵技術系


兵器、建築、補給、魔導具、機械装置を扱う系統。


エンジニア


基本技術職。

橋、陣地、兵器整備を担当する。


サッパー


塹壕、地雷、爆破、坑道戦を扱う工兵。


アルケミスト


薬品、爆薬、触媒を作る技術職。

魔力より化学知識を重視する。


ガンスミス


火器・弩砲・機械弓の整備職。

灰の大陸の工業化を象徴するジョブ。


マギテック技師


魔導具と機械を融合させる技術者。

青の大陸技術への対抗上、近年急速に価値が上がっている。


要塞建築士


軍事建築専門。

城壁、砲台、地下倉庫、魔導防壁の設計を行う。



◼︎第十系統:指揮行政系


部隊指揮、戦術分析、兵站、記録、統治を担う系統。


オフィサー候補


士官候補生。

指揮適性と教育水準が求められる。


タクティシャン


戦術官。

戦場配置、兵種連携、敵行動予測を担う。


ロジスティシャン


兵站官。

食料、武器、医薬品、馬、船舶輸送を管理する。戦争の勝敗を陰で決める。


レコードキーパー


軍記録官。

戦果、損耗、命令履歴、捕虜情報を記録する。


コミッサール


政治将校。

忠誠心、士気、思想統制を管理する。兵からは嫌われるが軍務府には重宝される。


戦場解析官


敵の魔法、兵器、地形、損害推移を分析する高位職。

知力と冷徹さが必要。




■ 7. 無数に存在する派生ジョブ


帝国のジョブは、十系統だけで完結しない。


実際には、地域、装備、戦場、血統、魔力属性、軍団ごとの伝統によって、無数の派生ジョブが存在する。


例を挙げると、


* 砂塵騎兵

* 氷原斥候

* 火山工兵

* 鉱山槌兵

* 港湾守備兵

* 船上槍兵

* 対魔獣猟兵

* 対魔導師猟兵

* 鎖鎌兵

* 双剣士

* 盾砕き

* 霊薬師

* 魔導通信士

* 結界測量士

* 軍用獣調教師

* 砲術士

* 焼夷術士

* 捕虜管理官

* 戦場葬送官

* 軍楽鼓舞士

* 式典衛士

* 皇旗護衛兵

* 軍用料理長

* 疫病監察医

* 遺物鑑定官

* 古代遺跡探索兵

* 竜骸研究員

* 補給路監視官


などがある。


帝国では、これらをすべて正式なジョブとして細かく管理しているわけではない。

多くは「副ジョブ」「専門職能」「地域称号」として扱われる。


正式用語では、主たる認定職を主ジョブ、補助的に取得した技能分類を副ジョブという。


たとえば、

主ジョブ:モンク

副ジョブ:捕縛術、山岳行軍、対魔獣格闘

という形で記録される。


軍都育ちのモンク。

鉱山出身のモンク。

神殿で修行したモンク。

戦場で叩き上げられたモンク。

魔力ゼロだが異常な成長を見せるモンク。


同じ分類名でも、実態はまったく違う。




■ 8. アビリティ制度


ジョブと密接に関わるのが、アビリティである。


アビリティとは、ジョブ訓練や実戦経験によって発現・習得する特殊技能を指す。


帝国ではアビリティを三種類に分類している。



◼︎習得アビリティ


訓練によって誰でも一定確率で習得できる技能。


例:

盾防御、集中射撃、魔力制御、応急治療、気配察知、連撃。



◼︎固有アビリティ


特定のジョブ、血統、体質、魔力属性によって発現する技能。


例:

聖光防壁、炎熱耐性、影歩き、魔力増幅、狂戦化。



◼︎隠れアビリティ


通常検査では確認できず、特定条件下でのみ発現する技能。


例:

極限再生、経験吸収、限界突破、魔力反転、死地適応。


主人公の「レベルアップ」は、この隠れアビリティに該当する。


分類局にとって隠れアビリティは非常に厄介である。

なぜなら、ジョブ制度の根本は「測定できる才能」にあるからだ。


測定不能の才能は、制度の外側にある。

制度の外側にある力は、国家にとって脅威にも資産にもなる。


もし主人公のレベルアップが発覚すれば、分類局は彼を保護するか、監視するか、実験対象にするか、あるいは軍務府直轄の特務兵として囲い込もうとする可能性がある。




■ 9. ジョブ変更と再分類


帝国では、一度決められたジョブが絶対に変わらないわけではない。


正式には、

戦技再分類審査

という制度が存在する。


これにより、実戦経験や成長、負傷、精神変化によってジョブ変更が認められることがある。


ただし、再分類は簡単ではない。


再分類には以下が必要となる。


* 所属上官の推薦

* 分類局検査官の再測定

* 軍医の身体診断

* 心理官の精神評価

* 訓練記録

* 戦果証明

* 忠誠審査

* 必要に応じた魔力測定


特に低位ジョブから上位ジョブへの変更は、強い抵抗を受ける。


なぜなら、ジョブ制度は軍事制度であると同時に、社会秩序でもあるからだ。

下層出身者が次々に高位ジョブへ上がれば、既存の権威が揺らぐ。


そのため、主人公がモンクとして成果を上げても、すぐに認められるわけではない。


「偶然だ」

「相手が弱かった」

「記録に誤りがある」

「魔導具の補助を受けたのではないか」

「モンクがそこまで強いはずがない」


こうした疑念や妨害が発生する。


主人公の成長物語において、敵は青の大陸の兵だけではない。

帝国内部の制度そのものも、彼の壁になる。




■ 10. ジョブと身分制度


ガルバディア帝国では、ジョブが身分に直結する。


貴族、平民、属州民、辺境民という従来の身分に加え、ジョブ等級が社会的価値を決める。


たとえば、同じ平民でも、正規ジョブのナイト認定を受けた者は尊敬される。

一方、魔力ゼロで低位モンクに分類された者は、軍内でも軽んじられる。


婚姻にも影響する。

高位ジョブ認定者は、良家との縁談が来る。

治癒職や魔導職は安定した生活が期待されるため人気が高い。

逆にバーサーカーやアサシン系は恐れられ、家庭を持ちにくい。


また、帝国では特定ジョブに就いた者へ、

職能爵位

が与えられることがある。


これは血統貴族とは異なり、軍功や職能によって与えられる準貴族身分である。


例:

剣聖位

鉄盾位

魔導卿位

軍医伯

工兵爵

皇旗騎士位


職能爵位は一代限りの場合が多いが、子孫が軍学校で優遇されるため、実質的な新興貴族化が起きている。


このため古い血統貴族は、ジョブ制度を利用しながらも恐れている。

制度が優秀な平民を引き上げすぎれば、自分たちの特権が脅かされるからである。




■ 11. 政治的枠組み


ジョブ制度は、帝国内政治の中心的な争点である。


主な派閥は四つある。



◼︎軍務府実戦派


「戦争に勝つためには有能な者をどんどん引き上げるべき」と考える派閥。

主人公のような異常成長者を見つけた場合、積極的に前線投入しようとする。



◼︎皇統府保守派


「ジョブ制度は皇帝の秩序を守るためのものであり、身分秩序を乱してはならない」と考える派閥。

平民や属州民の急激な昇進を嫌う。



◼︎鉄筆院管理派


「制度は記録と統計によって運用されるべき」と考える官僚派。

例外的才能を嫌い、すべてを数値化しようとする。



◼︎分類局秘匿派


「隠れアビリティや異常ジョブは国家機密として管理すべき」と考える派閥。

主人公を研究対象として囲い込む可能性が高い。


この四派は、表面上は帝国のために動いている。

しかし実際には、戦争方針、人事権、予算、皇帝への影響力を巡って激しく争っている。


つまりジョブ制度とは、兵士を分類する仕組みであると同時に、帝国権力者たちが人材を奪い合う政治装置でもある。




■ 12. ジョブ制度の光と影


ジョブ制度には確かな長所がある。


無能な貴族が指揮官になることをある程度防げる。

貧しい平民でも才能があれば軍で出世できる。

兵士の役割が明確なため、部隊運用が効率的になる。

戦争時には短期間で大規模な軍を編成できる。

技術者や医療職も体系的に育成できる。


しかし、同時に深い闇もある。


人間が数値で評価される。

初期判定で人生が固定される。

低位ジョブは使い捨てられやすい。

不適性者は社会から脱落しやすい。

隠れた才能は制度に潰されることがある。

分類不能者は危険人物として監視される。


特に問題なのは、初期ステータス偏重である。


帝国は初期値を重んじる。

魔力量が高い者は期待される。

筋力が高い者は前衛へ送られる。

知力が高い者は士官候補になる。


だが、初期値が低くても、努力や経験で伸びる者がいる。

逆に、初期値が高くても成長しない者もいる。


ジョブ制度は、測定時点の才能には強い。

しかし、長期的な成長や例外的進化には弱い。


この弱点こそ、主人公の物語と直結する。


主人公は初期ステータスが低い。

魔力はゼロ。

ジョブは軽視されがちなモンク。

制度上の評価は低い。


しかし、彼には「レベルアップ」がある。


つまり主人公は、帝国のジョブ制度が見落とした最大の例外である。




■ 13. 青の大陸から見たジョブ制度


青の大陸、特にアウレリア聖導連邦は、ガルバディア帝国のジョブ制度を強く批判している。


連邦側では、ジョブ制度を

「人間分類制」

または

「帝国式才能拘束制度」

と呼ぶことがある。


彼らから見れば、帝国は人間を兵器の部品として扱っている。

生まれた環境や一度の検査で人生を決め、国家に必要な場所へ配置し、従わない者を不適格者として排除する。これは人間の尊厳を損なう制度だとされる。


一方で、連邦もジョブ制度を完全に侮っているわけではない。


帝国軍が強い理由は、まさにジョブ制度にある。

兵種の役割が明確で、訓練が標準化され、部隊連携が速い。

個人の才能に頼る青の大陸の魔導士部隊とは違い、帝国軍は平均的な兵士でも一定の戦力になる。




■ 14. モンクの制度的立場


本作において特に重要なのが、モンクというジョブの扱いである。


モンクは第七系統・格闘修練系の基礎正規ジョブであり、正式には

身体戦技兵

と呼ばれる。


主な任務は以下である。


* 近接格闘

* 武装解除

* 捕縛

* 護衛

* 市街戦

* 狭所戦闘

* 対魔力切れ戦闘

* 武器喪失時の継戦

* 兵士の基礎体力指導

* 囚人制圧

* 魔導具が使えない環境での戦闘


本来、モンクは決して弱いジョブではない。

むしろ過酷な環境では非常に頼りになる。


しかし帝国軍の主流は、重装兵、魔導兵、砲兵、工兵へ移っている。

そのため、モンクは「古い」「地味」「伸びしろが少ない」と見なされやすい。


さらに魔力ゼロのモンクは、最低評価に近い。




■ 15. 結論


ジョブ制度とは、ガルバディア帝国の軍事力を支える中核である。


それは兵士教育であり、才能分類であり、身分制度であり、政治装置であり、国家思想そのものでもある。


帝国は人間を測定する。

分類する。

役割を与える。

鍛え上げる。

戦場へ送り出す。


その合理性によって、帝国は灰の大陸を統一し、青の大陸と戦えるほどの大軍事国家となった。


しかし、制度には限界がある。


測定できない才能。

記録に残らない努力。

初期値では見えない成長。

分類不能のアビリティ。

そして、どれほど低く評価されても諦めない者。


それらは、ジョブ制度の外側から現れる。


主人公はまさにその象徴である。


彼は魔力ゼロ。

ジョブはモンク。

初期評価は最低。

帝国の分類表では、目立たない下級兵にすぎない。


だが彼には、隠れアビリティがある。


レベルアップ。


それは、帝国が測れなかった成長の力。

ジョブ制度が見落とした例外。

そして、灰の大陸と青の大陸の戦争そのものを変える可能性を秘めた、最も危険で、最も地道な才能である。


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