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モリスが地球を踊るとき  作者: morriss090
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5 寝る前にモカシェイク飲んでね

「寝る前にモカシェイク飲んでね。」


翌朝、六本木スタジオ、人通りもまばらは中、安川とモリスがやってきた。


「うりゃー、朝早いのは辛いけど、ちゃんと寝た後だから、すがすがしいよ。」


安川の横をヨレヨレになった監督が通りかかる。その横顔を見た瞬間、僕は…


「あ、うわあ…あ、あ、あ…カントク…ですよね?お、はようございます。」


「そんな、お化け見たようなリアクションはやめてよ。ところで、モリスは?」


「あれ?一緒に来たんですけど。トイレじゃないかな?昨日の晩と今日の朝、モカシェイク飲ませましたから。ところで、今日は何をするんですか?」


「打ち合わせよ。戦争未亡人の。」


「え?」


監督は、フフフンと鼻歌を歌いながら、人数分の資料をセッティングしている。


「昨日、徹夜で絵コンテ書いたの。電話した時は、まだ、始めたばかりで、どの程度まで完成させられるか分かんなかったから、詳しく説明しなかったの。ヤスカワチャン、予想つかなかった?ほんとに?ホントに、鈍い子ね。で、ま、そこそこ、アウトラインは書けたから、イメージ撮りしようと思って。モリス、遅いわね。」


「やっぱり、あいつで撮る、んですよね。」


「そうよお~。そのために、インドの件は伸ばしてもらったんだから。」


「えー、インド延期!そんなに、ですか?どう見ても、あれじゃぁ~って思うのは、その、俺の見る目がないってことなんですよね~」


僕は、首をひねりつつ、うなった。


「フフフフゥ、今の段階だと、見えてこないのは仕方ないかもね。でも、そのうち分かるわ。フフフフフ、ゴールデンエッグの力がね。フフフフフフ。」


「つーか、気色悪いです。その笑い。」


「ん、まぁ、失礼ね。」


「うーん、だけど、少なくとも二人の人がモリスを女優として見初めてるんですよね。監督とドミニカでモリスを誘った男、ドミニカの男は、教養なさそう、だって茶川だもん。かなりのバカでしょ?とにかく、そいつが、モリスを口説いた。映画なんて一般化してないようなドミニカで。どういうわけか、その気にしてしまった。単にだました訳じゃない。何か意図があって、来日を8年後って約束してる。モリスが子役じゃなくて、女優でデビューできる年ってことですよ。バカなのにバカじゃない…。」


監督はあきれ顔だが、安川はお構いなしで続ける。


「いや、聞いてくださいよ。監督。もう一つ、考察があるんです。奴のバカな部分を説明する方法が。実は外国人なんです。だから、芥川が書けなかった。作品も間違ってしまった、なぜ?自国の有名作家じゃなかったからです!」


「ちょっと、唾とんでるよ。落ち着きなさい。アタシはあんたが何をしたいのか、が、わからないわよ。何なの?」


「えー、何って。監督のライバル像を僕なりに推理してあげてるんじゃないですか。具体的なイメージがあった方が、闘志わきますよね?」


「いいえ。ライバルだなんて、思ってないわ。あえて言うなら、同志かしら。それに、あんたの推理は独断と偏見に満ちているわ。芥川と茶川と書いてしまう日本人だって、ざらにいるわよ。普通よ、普通。」


「ええーっ、じゃあ、かの有名な夏目漱石、千円札の顔にもなった、あの、夏目漱石ですが、その代表作こそが坊ちゃんであるってことも、知らないってことですか?ってか、監督知らなかったんですか?」


「あんた、アタシなめてんの?知ってるわよ。一般論でしょ。それより、早くカメラ用意して頂戴。」


「ラジャー。」


安川は、なんだか、珍しく監督に言い勝った気がして、上機嫌で準備をはじめる。モリスが来てから、こういう感じ、多いような、いや、気のせいか。安川が準備に身を入れ始めると、同時に、ふらりとモリスがスタジオに入ってきた。


「モリス!何やってんの。早く準備して頂戴。ほら、その衣装着て、それから、台詞、ま、台詞はまだいいわ。」


監督は全くリアクションのないモリスの顔を覗き込んだ。


「それに、何?寝てないの?寝てきてって言ったでしょ?どうしたの、便秘?」


モリスは別人みたいに、小さな声でボソボソ


「んー、モリスは、んー、モカシェのみま巣。だも、きもtiよくなるない。モリスノコーシーのむなる。」


「つまり、両方のめばいいんじゃない?のんでいいわよ、モリスのコーシー。元気になるっていうなら、いくらでも飲んだらいいわよ。」


「肺。」


というや否や、いつの間にか持ってきていたずた袋に頭からダイブし、モリスのコーシーをわしづかみにして、一気に一本、飲み干した。2本目は、ややゆっくりと味わうように、3本目の時は、まるで酔っ払いのように、目がとろーんとしていた。安川はちょっとコイツ危ないんじゃないかと、思いながら準備を続けた。一方監督は、モリスがあんまり、トロンととろけているものだから、どれだけおいしいものなんだろうと興味を惹かれたのだろう。


「見た目、モカシェイクに似てるわね。アタシも飲んでみるわ。一本頂戴。」


モリスは監督にモリスのコーシーを渡した。その姿はなぜか得意げで、アイドルなんかがよくCMでやる「オススメ‼」のポーズに酷似している。監督はその姿に少し驚いていた。でも、ひるまず、モリスのコーシーを受け取ると、モカシェイクの時と同様、腰に手をあて、一気に飲み干した。監督はプファーと息を吐き、まるでサラリーマンの会社帰りの一杯を思わせた。そして、それを、これ以上ないというくらいの笑顔で見守るモリス。


「こ、これは・・・・。確かに気持ちいい、わ。でも、ヤスカワチャン、あんたはモカシェイクで十分よ。」


「あっ、ハイ?僕は頼まれたって飲まないっす。」


「あ、そう。それならいいわ。それじゃ、元気になったところで、撮影始めましょうか。用意、できてるわね。」


「もちろん、OKです。」


「アタシが頼んでた外注スタッフは来たかしら?そろそろ、着くはずよ。さっき、そこに名簿を置いたの、見といてくれる?」


「はい、名簿ですね。ありました。ええっと、照明の秋田さん、照明アシスタントの春山さん、それから、大道具・堂本さん、小道具・戸高さん、この4名ですか?」


「そう。この人たちはね、アタシがいつか“本物を作る”って時に駆けつけるって約束した昔の仲間なの。ヤスカワチャン、まだ、面識ないわよねぇ。皆、その道では有名な人よ、超一流。ぼやぼやしてると、食われるからね、気合入れてよ。」


安川は、背筋を伸ばして直立し、


「は、っはい。頑張ります。」


「期待してるわ。」


「あ、ああー‼‼‼」


「ちょ、ちょっとどうしたの?」


僕は、すっかり青ざめた。


「この人たちって。」


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