33 そ、そうだったのか…
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「そ、そうだったのか…。」
舞台のそでで、根角さんがうずくまって、低い声でうめくようにつぶやいていた。
ど、どうしたというのだろう…声をかけづらいほどの悲壮感が…
「ネズミと人間の関係は…敵じゃなかった…」
震えながら、嗚咽交じりに
「支配されてなかった…俺は…」
僕は根角さんの横にしゃがんだ。
何ができるわけじゃないけど、根角さんの心になかに何か大変なことが起きていると思ったから。根角さんは、僕に気が付くと、目に涙を浮かべながら、それでも
しっかりとしゃべりだす。
多分、しゃべることで整理をしようとしてるんじゃないかと思った。
「ネ、ネズミは…地球を支配することは…できない…」
「ネズミ…?支配…?」
「人間も…地球を支配することは…できない…」
「人間…?支配?」
僕は、根角さんの言ってることのほとんどを理解できない。
とりあえず、聞いていよう…根角さんの心の叫びを…
「地球は誰にも支配されないし、誰かが誰かを支配しない。僕が間違っていた。世の中のネズミに対する反応は確かに不当だけど。」
下を向いた根角さんの目から涙が落ちた。
「だからと言って、ネズミが世の中を支配するべきだなんて考えは、傲慢だった…
僕はただ単に大変なことを…しでかした…」
根角さんは、幽霊のように立ち上がり、僕に向かって己の罪を告白し始めた。
どうやら、根角さんは、先だっての大規模停電の犯人らしい。
え?
そ、そ、それは、ニュースでやっていたほどの犯罪じゃないか。
テロの疑いもあるとのことで、近隣の外国人の取り締まりも強化されていて、モリスも
何回か職質を受けたくらいなのだ。
あの、大事件が、この大人しそうな、無害そうな、優しい根角さんの仕業だと…?
「一体、どうやって…」
根角さんはうつむいている。
「とりあえずは、楽屋に帰りましょう、そこで、ゆっくり。ね?」
モリスが袖にはけて、次の演者がスタンバイできたら、僕たちは楽屋に戻っていいことになっている。僕は憔悴している根角さんを伴い、お先に失礼しますと、外に出た。
根角さんが移動すると、ラットたちも、ぞろぞろとついてきた。
心なしか、彼らもしょんぼりしているように見える。
泣いている根角さんと僕の後ろにネズミの行列ができ、一番後ろに派手な衣装を着て、たくさんの荷物を持ったモリスがついてくるので、僕たちの一行はさぞかし、奇妙に見えただろう。




