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モリスが地球を踊るとき  作者: morriss090
33/36

32 シェパードの?

「シェパードの?」


思わず声が出てしまった。

ダメだ、こんな余計な事考えてちゃ。

集中、集中!!


何かを思い出しかけたけど、ここはあえて、試行を遮断して、舞台に集中することにした。

大丈夫、感覚が戻ってきた。


さあ、幕が上がる。


舞台上のモリスは、やっぱり見事だ。

僕はモリスの動きに合わせて、赤いリボンを繰る。根角さんには動かないほうの端を管理してもらっている。モリスと息を合わせるのは、思いのほか簡単だった。


モリスの踊りは唯一無二という点では個性的なのだけど、

好きとか嫌いを超えたところに存在していて、僕にとっても、おそらく、誰にとっても

「合わない」ということのない踊りだ。


すーぅと心にしみこんでくる。

僕の場合で言えば、忍者が音も気配もなく近寄ってきて、突然心をわしづかみにされるような感覚。リボンを繰るのは、その感覚のまま素直に動かせばいい。

モリスが伸ばした手の先に、僕の手が重なる。

思っていたよりも、ずっとずっと高く高く手が届くんだと、思い知る瞬間。

モリスが僕に合わせているのかと思うくらいに、自然に同じ動きができるのだ。

僕の場合が特別に顕著なのかもしれないけど。


だから、モリスの動きは、一人でも舞台いっぱいいっぱいに広がる。

とてもダイナミックだ。


今日のモリスの踊りは、生き物同士の関わりみたいだ。

支配被支配のように見えて、実はそうではない。

それは、ともにいるように見えて、実はまったく別の次元にいるというような…

たとえて言うなら、アニメーション上でともに関わりあうように動くキャラクターが

実は別々のセル画にのっかっているみたいな感じ。



ショーが終わった。

観客席は静まり返っている。

当然だと思う。

この踊りが与える影響は、視聴後に観客が立ち上がってブラボーとさけぶような

種類のものではないからだ。

じわじわと心にしみてくる。

肩にかかる春の雨のように、染みたのか染みていないのか、自分でもわからないくらいに

自然に、心だけが潤いを感じている人もいれば、雷に打たれたような衝撃を受ける人もいるだろう。


ふと、僕は「この踊りをたくさんの人に見てもらいたい」という衝動にかられた。

それは、一つの使命が下りたような感覚だった。



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