31 モリス、準備はいい?
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「モリス、準備はいい?」
今日、モリスの初めてのショーが開催される。
僕が特別にこだわったのは、意外なことに衣装だった。
衣装の色は、深紅。
深い深い赤で、色見本を見たときは本当に血で染めたのかと思うほどどす黒い赤だったが、
モリスのサイズにあつらえた衣装になってしまうと、平面的などす黒さは消え、滑らかな動物の毛皮のような輝きというか、生命力にあふれたつやが見られた。
生地屋さんで一枚一枚確認した。
モダンバレーの衣装や、薄いほうのカーテンに使われたりする生地だ。
だから、衣装にあつらえると体の線がくっきりと見える。
光が三次元に反射して、凹凸自体が生き物みたいに動く。
さらに、今回は映画ではなく、舞台なの絵見栄えが派手になるように、同じ布で作ったリボンを演出に使うことにした。何度もリハーサルをして、どの回でも成功するように仕上げてある。
モリスが踊り始めてしまえば、もう僕の声は届かない。
完全にトランス状態になるからだ。
ってことは、タイミングはすべて僕次第。
少し、不安なところは、仲良くなった根角さんにフォローしてもらうことになっている。
もうすぐ、モリスの出番が来る。
僕は根角さんと最後の打ち合わせをして、舞台のそでで待機している。
成功させることができるだろうか。
ドキドキがとまらない。
ふと、客席をみたら、座席に犬がいた。
ここは、待合ゾーンなので、ワンとニャンは逆に立ち入り禁止のはずだが…
盲導犬かな?
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