29 了解です
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「了解です。」
幸田は、仙田に電話をかけた。
「先輩、休暇中申し訳ないんですが…」
「きゅ、休暇だと?勤務中だ!」
「あ、そうでした。とにかく申し訳ないんですが、任務です。実は今、この付近一帯停電してるんですよ。」
「え?停電…そ、そうなのか…」
「はい、それで、原因個所がここから近いので急行します。場所はメールで送りますんで、現地で。」
「お。お。おう、了解した。」
原因個所はワンダーランドが含まれるサイバーエージェント社の商業地域の一角にある、地下の送電線施設だった。大元になる送電線の断絶がその原因だった。
サイバーエージェント社の業態は多岐にわたるが、もとは日本最大級の人材派遣会社である。パートタイムから、CEOまで、幅広く人材の派遣を行っている。様々な個人情報を有するがゆえに、政界との黒いつながりがあるのではと、警察がマークしている会社だった。
有名な建築家による設計で必要以上に広いロビーが特徴的だった。
特殊班が先行して地下の点検通路に入った。
爆弾の可能性が否定しきれなかったからだ。
特殊班は、通路から細く伸びるパイプの中、中途半端なところでケーブルが切れているのを確認した。
パイプは人間が入ることができない細さだ。
爆発物の痕跡はない。
もっともっと、切断しやすい場所があるのに、あえて、この場所を着るだろうか…直径5センチもある太いケーブルだ、そう簡単に切断できるものでもない…自然の摩擦、摩耗で切れることがあるだろうか…
実に不可解な状況だった。
そして、これが切れたのか切られたのかによって事態は大きく変わる。
この情報がもたらされた捜査員一同に緊張が走った。
ちょうど、そんな時にマック警部と仙田刑事、少し遅れて幸田刑事が現れた。
「ひょっとして、トゥルルルルル(ドラムロールの音)の場面?」
と軽口を叩いた仙田刑事は、周りにいた全員から冷たい視線を送られた。
鑑識が振り向いて、一同を見わたす。
「切られています。事件です。」
あぁ~。
息を止めていた者もいたのだろう、ため息がもれた。
ケーブルが意図的に切断されたものならば、これはサイバーテロの可能性も出てくる。
本格的に捜査本部が設置され、適切な人員配置が行われた。初動捜査にかろうじて間に合ったマック警部、以下二名は、マック警部の鼻の実力をかわれて、現場の詳しい捜査が割り当てられた。
ケーブルの切断された箇所を地下通路から、パイプを除いて確認してみる。
人間は無理、マック警部でも中に入るのは無理な大きさだ。
鑑識がセッティングしたファイバースコープで中の様子を探ってみる。
特に異常があるようには見えない。しいて言えば、通路から延びる他のパイプにくらべて、ほこりが少ないかもしれない。マック警部は、パイプの中のにおいをかいだはずなのに、動く気配がない。
それは、犯人がここから移動していないことを示している。
ますます、謎は深まる。




