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20 ね、ネズミさま
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「ね、ネズミさま」
モリスはそう言って、ひざまずいた。
モリスの背中があったところからネズミが見えた。
ものすごく大きい。
ネズミは後ろ足で立ち、小さな回覧板のようなものを持っていた。
そして、続ける。
「お目にかかれて光栄です」
ネズミは、それを受けたように、首を傾げた。
そして、何もなかったかのように、いそいそと立ち去った。
まるで、それはネズミではなく、買い物途中のおばさんのような立ち去り方だった。
この場面の10m先に、僕はいた。
なぜ?
僕はしばらくその場に立ち尽くし、帰ってくるモリスに、詰め寄った。
「何?何してたの?」
「ご挨拶だよ。」
「え?なんで?」
「だって、日本の王様でしょうね。ネズミさまは。」
「え?なんで?王様なの?」
「アクタカワさん、そう教えてくれたよ。日本ではネズミは太陽より偉いって、太陽は人間より偉いから、、日本の王様はネズミと思ったけど」
「えーと、それは、昔々で始まる話だったかな?」
「それは、覚えてない。」
「ネズミのお父さんが、娘の結婚相手を選ぶ話だよね?」
「そうそう、やっぱり有名ね。」
モリスは、日本の王様に会えて嬉しそうだった。
僕は、なんていうか、もういいやって思う。
ネズミが王様だったら、日本はどんな国になっただろう?




