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モリスが地球を踊るとき  作者: morriss090
20/36

19 女優ってなんだ?

「女優ってなんだ?」

僕は、そこから、つまずいてしまった。

なんで、モリスは女優なんだろう…

辞書で調べてみた。女優は俳優の女の人。


では、俳優は?

俳優には二つ意味があった。


一つは、まあまあ、誰もが思う女優って言葉のイメージ。

「舞台に立って、また演劇・映画・テレビなどで、演技することを職業としている人。役者。」


もう一つは、昔の言葉で「わざおぎ」と読むらしい。ピンとこないけど、

意味は、

「こっけいな動作をして歌い舞い、神や人を慰め楽しませること。また、それをする人。

」って事みたいだ。


なんとなく、モリスには二つ目の意味が当てはまるのかなって思う。

だから、普通の役者さんが歩む道でいいのかどうか…ちょっと気になる。


ああ、ダメダメ。考えてばかりじゃ何も進まない。

弁護士さんにも頑張ってねって言われたし、とにかく行動しなきゃ。


とりあえず、それっぽい劇団や劇場を回って話を聞いてみた。


そもそも、役者としての下積みもなければ、コネもないモリスが出演できる劇団はなかった。

僕は検討事項を書き留めているノートに、「劇団に入団するか否か」の項目を書いた。 何年かかるかも分からないし、どの劇団に入ったら、モリスが生きるのかもわからない。 僕は、その項目の横に「要情報収集」と書き加えた。 


とりあえず、いくつかのオーディションに応募して、後は取り急ぎ金になる仕事を探さなければならない。

監督は家兼事務所は用意してくれたけど、日々の生活費はゼロだ。

僕はマイナビバイトで、女優とちょっとでも絡みのある仕事を探した。


ワンダーランドの仕事?


“ワンダーランドは、これまでになかった「ペットと一緒に楽しめるアミューズメント施設」です。”


そんな書き出しで始まったワンダーランドの紹介ページ。

“犬好き、猫好きさん、集まれ!こんな楽しい施設で、あなたも働きませんか?スタッフ大量募集”

誘い文句には該当しないが、オープニングスタッフで大量募集は魅力的だし、なにより、ダンスショウの仕事というのが、モリスにはぴったりだ。


九時から五時までダンス教室とダンスショウをセットで2時間、3回公演。間に1時間ずつの休憩。日給18000円。破格の待遇。


「これに、決まりだ。」


僕は早速連絡を取り、面接に出かけた。


すると、ラッキーなことに担当者が「戦争未亡人」の大ファンだったのだ。

履歴書に主演と書いてあったにもかかわらず、最初は信じてもらえなかった。

普段のモリスには全くオーラがないからだ。


それでも、撮影秘話など話すうちに、田中さんは大きくうなずきだし、


「あのシーン良かったよね~」


「えー、茨城だったんだー、全然違うイメージ、分かんない、分かんない」


「ラスト最高」


「地球感じた」

と絶賛しはじめ、結局モリスは「田中さんへ」と書いた色紙と雇用契約書にサインをして、即採用となった。


しかも、僕も一般スタッフとして、雇ってくれて(時給950円)、モリスと一緒にダンスのレッスンやショーを組み立てる仕事をつれたのだ。開催の時間さえ守れば、内容は自由にやってかまわないとのことだ。


僕たちはキッズステーション内にある専用の楽屋に案内された。そこで、小道具の用意をしたり、プログラムの打ち合わせをしたり、なんでも使っていいというのだ。専用の楽屋までもらえると思っていなかったので、とてもうれしかった。

ウキウキした気分でなんでもできそうな気がした。


……5分前までは。

プログラム作りを初めて、ものの5分で、モリスが全く役に立たないことが判明した。

さっきのうきうきした気分は冷や汗に取って代わった。


そもそも、プログラムよりなにより、ワンダーランドがわかっていない。まずは、その説明が必要だった。

僕は園内マップを指さしながら、


「ここが入口のゲートね。手前に大きなペットショップがあったろう?」


「はい。」


「ゲートを抜けてすぐのこの建物が、チケットセンター。チケットの販売とか入場管理とかやるところ。僕たちがさっき面接を受けたのは、この建物の二階ね。」


「はい。」


「で、その後、今いるこの楽屋に案内されたの。ここがキッズステーションっていうのね。

 キッズステーションの先が二つに分かれていて、右側がワンダーゾーン、左側がニャンダーゾーンになってるの。」


「はい。」


「じゃあ、マップをかえるよ。次はこのキッズステーション内のマップね。ここが僕たちの楽屋。目の前の廊下はここで働く人たちの楽屋になってるの。」


「はい。」


「廊下の向かい側に大きな部屋があるよね。ここがレッスン部屋。廊下のはじからぐるっとまわって入るのがステージの袖。」


「はい。」


この時点で確信した。モリスは全く聞いてない。

モリスに「袖」がわかるはずがない。ここは、袖ってなんですかって聞くところだ。

聞いていないのに、聞いているふりをするなんて高度な技、どこで身に着けたんだ。


あ、監督か…。うん、教えそうだ。


モリスが監督を質問攻めにして、監督を辟易させる風景が目に浮かぶ。

そう、そして、その後

「分かってなくても、はい、って言いなさい。」

監督なら、絶対そう言うだろう。


僕は説明をそこで説明を中断し、一人でプログラムに集中することにした。

モリスの協力がないとわかって一旦は、冷や汗が出たけど、よく考えたら、いてもいなくても変わらない、モリスは踊ることしかできないから。この手のことは僕は考えたほうがいいに決まっている。


ワンダーランドのプログラムのほうをモリスにあわせればいいんだ。


昨今のペットブームをこれでもかと取り込んだこの施設。

完璧にターゲットをペット愛好家の富裕層に絞っている。

ほとんどが年間パスポート会員で、一般のチケットは半年待ちだ。

遊戯エリアは14歳未満入場禁止、14歳未満は全員キッズステーションにお預かりなのだ。


0歳から2歳までは専門の保育士さんが預かってくれる。

3歳から14歳までは、ダンス教室、手品教室、学習塾、体操教室。スペシャルラインナップ、なんでも好きな体験ができる。僕たちが担当するのもこのゾーンの子どもたち。

子供は子供で0歳から三歳までは専門の保育士さんが楽しませてくれるし、それ以上の年の子供は、ダンス教室、ダンスショウ、あるいは手品教室、手品ショウ、または学習教室、自分が興味をもったプログラムに参加して楽しんでいる。


だ、か、ら。


待ってる間に、愛犬、愛猫を楽しませてあげましょう!


それが、ワンダーランドのコンセプトだ。


この施設について、僕はモリスにそう説明してあげた。


僕たちが担当するダンスは年齢によって時間と曜日を区切っていく。

から、子供は全員、総合託児センターでお留守番。モリスのダンスの仕事とは、艇のいい子守りの仕事だ。子供置いて犬猫と遊ぶ、そんな大人は、体裁を気にする。そのための。子供を置き去りしてるんじゃないんです。子供は子供で0歳から三歳までは専門の保育士さんが楽しませてくれるし、それ以上の年の子供は、ダンス教室、ダンスショウ、あるいは手品教室、手品ショウ、または学習教室、自分が興味をもったプログラムに参加して楽しんでいるのです。だから。

待ってる間に、愛犬、愛猫と楽しみましょう!


この施設について、僕はモリスにそう説明してあげた。


少しは、プログラムの趣旨を理解してくれるかな…なんて


「ヤスカワさん、聞いていい?」


「も、も、もちろん!」


「日本人、犬と話せる?」


「え?なに?プログラムじゃなくて?」


「そうね、、犬と話せて凄いと思って」


「いや、話せないよ」

「話せないのに、楽しいってなんでわかる。」


「いや、だから、そうじゃないけど。犬が喜んでるんじゃないかって、想像はできるだろ?」


「ドミニカでは、犬といると楽しい。でも、犬がどう思うかわからないよ。」


「そうだね、僕もわからないよ。ここへ来るのは、そうじゃない人たちなんだ。」


モリスは、空を眺めだした。でも僕は続ける。長い日本語にも慣れてもらわないと。


「最近の日本では犬や猫と気持ちを通わせたいと本気で思う人が増えているんだ。天下のNHKだって「こころの犬塾」って犬の教養番組やっているんだよ。」


モリスは、爪の間のゴミを取り出した。それでも、僕は続ける。


「犬の服のブランドだってあるし、人間と同じように生きていくために、そのうち犬権尊重なんて言葉も発生したりして、ま、そりゃ、ないか。さすがにしゃべれないもんね。」


僕もいい加減、聞いてない人相手に話すのは嫌になった。


「もういい?僕は、このプログラムで大丈夫か担当者に確認とってくるから。モリスはトイレ以外は、外にでないでね。迷子になると困るから。」



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