【第一章】第二十七部分
『魔法人格使用説明書。魔法人格とはタイムマシンを使う魔法じゃ。
タイムマシンで過去に戻り、元の自分のDNAを採取して現在の自分に抗原注入すれば抗体ができて、元のサイズの自分が生成されるもので、れっきとした科学じゃ。魔法人格は、自分自身なので基本的には問題ない。トンネルを通る間に有効成分が活性化して、人間界では小型化できるようになっておる。
ただし、大きく感情が動くと魔法が解けることがあるので注意するんじゃ。それに外泊禁止。必ず、トンネルを通って寮に戻ること。魔法には賞味期限があって、メンテナンスが必要じゃから。なお、魔法代金とメンテナンス費用は給料天引きじゃ。
それと魔法の副作用で自分の幻覚を見ることになるからな。幻覚といっても人格があるから魔法人格という。自分の脳内では、物理的な接触をしているという感覚も得られる。。じゃから、あまりこの魔法はオススメではないのじゃ。
なお、魔法効能がある状態、つまり人間界に行ってる間は、魔法人格が主人格になっているので、予め教えておく。」
「これって、あたしを改造したんじゃない!それに告白ができなかったのは、この取説通りのことが起こっただけじゃない!さらに智流美はあたしの幻覚で、人間界では智流美の思う通りに行動してしまうってこと?」
「幻覚とか、物以下の観念的な存在みたいなヒドい言い方しないでよ。これでも美散から生まれたんだから、責任取りなさいよ。」
「なんなんだよ、その言い草は。智流美はあたしの魔法の小道具なんだよ。道具には言葉はいらないんだよ。ほらほら、あたしが軽く踏んだだけで、智流美は床のカーペットと一体化するんだよ。」
美散はホログラムのような智流美を、16メートル上から見下ろしている。
「アタシにもちゃんと感情や意思があるんだからね。魔法人格っていうぐらいなんだから、人格を尊重しないのは、憲法違反よ。このままでは、美散が告白する機会をトイレに流したままになるだけなんだからね。美散は自力で小さくなることなんてできないんだからっ。」
「そ、それはそうだけど。」
言葉に詰まってしまった美散。二番目の鉄砲隊がいなければ戦いには敗れてしまう。こうして、人格主導権は智流美に掌握された。
「わかったよ。念のための確認だけど、賞味期限って、どういう意味なんだよ?」
「暗くなると、魔法が切れるということなのよ。この魔法は細胞の活性化を促すために太陽光が必要なのよ。」
「魔法が切れたらどうなるんだよ。」
「巨人軍になるだけよ。だから安心して泥船に乗ればいいわ。」
「乗れるか!巨人女子症になったって、レイちゃんにバレたらどうしよう?ぜったいに、驚かれて嫌われるよね。それにどうせ結婚できなくなっちゃったし。」
「何弱気になってるのよ。せっかく小さくなることができたんだから、このまま、アタシを使って、玲駆を出し抜けばいいのよ。とにかく、放課後になったらすぐに寮に戻らないといけないのよ。」
「で、でもそうしたら、じ、人類進化のための、チョメチョメとか、できないじゃないか。」
「それナニ?ア、アタシはそんなこと、し、知らないわよ。」
「その動揺指数はクロと判定したけど。それはずっと先の話だから、置いておくよ。じゃあ、これからどうするのか、わかってるんだよね?」
「学校に行って、玲駆を追跡・逮捕して、愛を自白するのよね。」
「違う!って大して違わないけど、追跡は手段、目的はあくまで告白することなんだから、ちゃんとやるんだよ。それにしてもホント、あたしにそっくりだね。感心するよ。とにかく、智流美のミッションはただひとつ、あたしの玲駆に対する思いを全力で伝えること、わかった?」
「なにそれ。単に言葉を吐くだけ?そんなことのために、わざわざ魔法人格を作ったって言うの?バッカじゃないの?」
「それがカンタンにできれば苦労しないよ。実際、さっき、智流美は何もできなかったんだから。とにかく、あたしの命令に従うんだよ。」
話が終わると、小さく透明な影、智流美は消えた




