第9話 群衆掌握! 正しい事が正しいとはかぎらない!?
前回のあらすじ。
秘策とはいったい!?
「疾風殲滅神とは、重い鎧を脱ぐことによって「皆のもの、進軍!」
かなりの名案なはずなのだが、パチスロットは最後まで聞くことなく小隊に号令をかけた。
「いい作戦なんだけどな」
「…………。」
ベルの目にはもはや呆れの感情しかなく、なんだか肩身が狭い。
真っ直ぐに広がる荒野なはずなのに進めど進めどもカヤノ達の姿がまるで見えない。
あれから特に襲撃もなく、落とし穴も見つからない、不気味なほど何もないのだ。
「いやに静かですな」
「アイツならもっと何かしてくるはずなんだがな」
足跡等の痕跡はあるものの、他方にバラけていたり、途中で途切れていて良いように撹乱されてしまっている。
「本当にこっちでいいのか?」
「我々は何処に向かっているのだ?」
僅かな痕跡を頼りに進んでいるものの、これすら実は誘導するための作戦なのかもしれない。
その不安が隊全体につきまといこのままでは思うつぼだ。
「もう日が暮れてきた。休憩にしよう」
荒野をさまよっているうちに夜になってしまった。
暗くなってしまっては視界も悪くなる上、明かりをともせば相手側からは攻め放題になってしまうだろう。
リビングアーマーは体の疲れは知らないだろうが、敵がどこにいるかもわからない状況では精神的な披露は甚大だ、無理に進み続けるよりは休憩をすべきだ。
「指揮官殿、敵は強敵ですな、一体何者なのですか?」
「えーと、かなり性格が悪いやつかな?」
まさかこの世界の女神だとは言えないので適当に誤魔化すと、なるほどと、とても納得した様子を見せた。
「あの女やべーよな! マジサイコだわ!」
「だよな! 誇り高き騎士にはできねーよ!」
休憩中の鎧たちはいくつかのグループになって楽しそうに談笑しているが、騎士と言う割にはチャラい言葉づかいのやつが多い気がする……。
「今まで我々はただ漫然と戦っていただけでした。 ですからこうして隊を組んでの戦争をするのが久方ぶりで楽しいのでしょう」
「ふーん、でもなんで俺を体調にしたんだ?」
「い、いやー、ホントは攫われた彼女を隊長にしたかったんですが、先に取られてしまったので仕方なく……」
どうやらカヤノが落とし穴でリビングアーマーをはめていたのを見てそこに惚れ込み隊長として見込まれたらしい。
余り物だからとは失礼な話だが、今の所何も成果を出せていないのは確かなところ、早く指揮官としての力を見せなければな。
「……」
ベルは疲れて眠ってしまったようだ。
鎧が本体な彼らは眠気と言うものがないので眠ることはない、俺は超夜型の人間なのでこの程度なら起きていられる。
しばらくは会話でもして退屈をしのごうと楽しく談笑していたが。
「コイツ好きなやつがいるんすよ!」
「はい、この戦いが終わったら鎧子ちゃんに告白するんす!」
あ、これフラグだな。
1人が典型的なセリフを吐くと音もなく忍び寄ってきていた武者が刀を構えながら襲い掛かってきた!
「させるか!」
「グヌゥ!」
俺は咄嗟に落ちていた石を敵の手元に投げつけ、手甲ごと叩き落とすことに成功した。
「腕が無ければ何もできまい、諦めて投降しろ!」
そう言い、先ほどのフラグを建てた鎧が取り押さえようとしたとき。
鎧武者が彼を巻き込み激しい音を響かせ爆発した。
「な!?」
「不味い! スキル『結界』!」
まさか自爆特攻を仕掛けるとは思わなかったが咄嗟にこれ以上やられないようにみんなを囲む結界を作った。
それを見て諦めたのかこちらの様子をうかがっていたであろう武者達の気配が消えた。
「わら……らは……カヤノ様の……ご意志に……」
自爆した武者は辛うじて面を残していたがその言葉だけを残してそれ以上何も動かなくなってしまった。
「うおー! メイルがー!」
「畜生! あいつらどうなってんだ!」
経験したことのない非道な行為にリビングアーマー達はパニック寸前にまで陥っていた。
「何故ここまで! 彼等も誇り高き戦士達ではなかったのか!」
「誇り……」
ある者は怒り、ある者は泣き叫ぶこの状況で俺はある事に気がついた。
「慌てるなお前ら! 俺の声を聞け! この状況を打開してやる! この俺に任せろ!」
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「総大将、作戦は結構しましたが奴等は結界を張ったため成功したのは1人のみでございます」
篝火に灯された中、1人の武者が片膝をつき女に報告をしていた。
「結構よ、充分に効果は発揮できたでしょう、作戦は成功よ」
女は非道な行為をしているのにもかかわらず満足そうに微笑んでいた。
「それともう1つ報告がございます。 撤退した自爆部隊の体にこのようなものが」
「手紙かしら?」
手渡された紙の中を見て女は眉をピクリと動かし、やがて顔を歪めると手紙を破り捨てた。
「面白いじゃない、いいわ乗ってあげる」
そう吐き捨てると女は立ち上がり何もない暗闇の中を睨んだ。
「あの〜、これなんなんですか?」
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「本当に大丈夫なのでしょうか指揮官殿」
「安心しろ、奴は必ず挑発にのる。」
手紙にはこう書いた。
せこい真似をこのまま続けるなら俺が直接戦ってやる。
それをされたら困るだろ? 正々堂々決着をつけるなら手は出さないでおいてやる。
その代わり敗者は勝者の言う事をなんでも聞くことにしよう。
PS.女神様が人間にビビるわけないよね(笑)
わざと簡潔に小馬鹿にした文章にしてやった。
これなら絶対に引っかかるだろう、アイツの事はよくわかる。
日が昇り、辺りが明るくなると1キロ先に人影が見える。
カヤノに達の軍だ。
「なんと、本当に姿を表しましたな」
「来ると信じてたさ、手はず道理に行くぞ」
予め隊列を組んでいた俺達は敵軍に向かってゆっくりと行進していった。
「あら、こちらに比べてそっちは随分すくなくなったんじゃない?」
接敵まですぐのところに来たとき、カヤノが馬上で笑みを浮かべながら言った。
「アイツ! あんなことをやっておいて!」
「絶対に許せません!」
「狼狽えるな! 軍師殿の作戦は必ず上手くいく! 堪えるんだ!」
「何をしても無駄よ! ユリヤの魔法で強化された上に数の差があるのよ、勝ちは決まったようなもの、全軍突撃!」
カヤノが全体に突撃の号令をかける。
しかし武者達は誰一人動こうとしなかった。
「あ、あれ? 突撃! え? とつげきー!」
余裕の顔を崩し狼狽えるなカヤノに反応する武者達は誰一人としていない。
なぜなら彼等は心を揺さぶられ葛藤しているのだ。
俺達は敵のリビングアーマー達に語りかけていた。
〈誇り高きお前らはこのような闘争をのぞんでいたのか!?〉
〈直接ぶつかることもなく卑怯な真似をし、仲間に爆弾をつけ犠牲にする、それが戦士としてあるべき姿なのか!〉
〈今一度思い出せ! 俺達マブダチだろ!〉
スキル『テレパシー』で皆の声を直接ぶつけられた武者達は明らかに動揺している。
彼等は本当の人間ではなくアンデッドだが、誇り高き戦士としての心がある。
正々堂々熱い戦いがしたい、その想いがあるのか、コチラ側のリビングアーマー達は卑怯な真似を良しとせず俺が何かするのも嫌がっていた。
ならばあちら側もそうなのかもしれないと心に語りかけてみたが正解のようだ。
「ちょっと! 突撃よ! なにしてんの!」
「作戦上手く行ったみたいですね」
コッソリこちらに来ていたユリヤは微妙な表情でそう言った。
この揺さぶり作戦がうまく行くように昨夜のうちにユリヤには『テレパシー』を送りスパイになってもらっていたのだ。
「あの人たち本当はこんな戦い望んでいないって言ってましたからねぇ」
「俺が終わらせてやる。もう頃合いだ」
今まで列を崩さなかった武者達は次第にざわざわとし始め、どうすればいいかわからなくなっていた。
「聞いてほしい皆!」
俺は前に出て語りかけると一斉に注目し声聞いた。
「誇り高き戦いを汚すものがいる! 熱き血のたぎる闘争を卑劣なものに作り替え、己の私利私欲を満たそうとするものがいる! 悪魔だ! 悪魔がお前らを惑わしているのだ!」
「悪魔、悪魔のせいだ!」
「そうだ、こんな戦いは望んでいない!」
「え、ちょっと! 何いってんの!? 落ち着きなさい!」
武者達はそのとおりだと口々に言い始めもはやカヤノの言葉など聞こえもしていないだろう。
「俺は悪魔を捕えに来た! お前たちを惑わす悪魔を! その女を捕まえろ! そいつが悪魔だ!」
その言葉を聞いた武者達が一斉にカヤノの方に振り向いた。
「え、ちょ、え? 私は女神で……」
武者達の顔はわからないがきっと怒りの感情が宿っているだろう。
口々に悪魔め、悪魔を捉えろ! と言っているのが聞こえる。
「あはは、私なんのことかわかんなーい☆ まって! ねぇ誤解よ! 私女神だし! そもそも私の事さらったのアンタたちじゃない! 私求められたから勝てる方法を教えてあげただけじゃないの! ねぇユリヤ……いない!? ちょっと! 裏切ったの! マサル、たすけ」
「「悪魔をとらえろ!!」」
「イヤーーーー!!」
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「うぐっ、なんでよ……私頑張ったのにぃ……こんなのあんまりよ……」
「泣きやんでくださいカヤノさん、あの人達にはあわなかっただけですって、カヤノさんは頑張りましたよ?」
あの直後カヤノは武者たちにボコボコにされ簀巻にされた。
たしかに戦争となればあらゆる手段を用いて勝ちに行くのは大事な事だろう、だが彼等にはあわなかったのだ。
あれからリビングアーマー達は和解し、これからはそれぞれ指揮官を作り正々堂々戦い続けるという。
「ま、何はともあれ俺の価値だからな、約束は守れよ?」
カヤノは悔しそうに床を叩きながら泣きわめいていた。
さて、何をしてもらおうかな?
最強の男、マサル
残り寿命、9年2ヶ月
手に入れたもの カヤノに対する命令権




