第八話 鎧大戦争! 秘策! 疾風殲滅神!
前回のあらすじ。
カヤノが攫われ俺は軍師になりました。
「し、指揮官?」
「そうです! 我等と共に憎き武者軍を打ち倒しましょうぞ!」
「ちょっと状況がわかりませんね」
俺が指揮官と言うのも意味がわからないが、それよりも今迄ゾンビの様に緩慢な動きしかしなかったリビングアーマー達が機敏に動き出し、あまつさえ喋り始めたのだ。
「指揮官殿! 我等に指示を!」
「え、えーと、あの攫われた女を助け出すのだ!」
余りにも強くくるので雰囲気に流されてしまい号令を出す。
すると集まった鎧達がそれに呼応し雄叫びをあげる。
「わっ! よくわからないですけどカヤノさんを助けましょう!」
「整列! 俺の後に続け!」
「いや、指揮官殿は後ろにお願いします」
「あ、はい」
騎馬隊が連れ去って行った方角に進軍していくと、荒野のど真ん中にカヤノが横たわっていた。
「無事だったんですね! 良かったです!」
どうやら気を失っているようで、それに気づいた何体かの鎧達とユリヤが駆け寄っていく。
「……。」
「ん? どうした?」
またもやベルが俺の服を引っ張りカヤノに向かって指を指している。
特におかしい所は見当たらないのだが、さらった相手を簡単に逃したりするだろうか? 特に服にも乱れがないし、まるで……
「待て! これは罠だ!」
「え? キャー!」
やられた! カヤノの前には幾つもの落とし穴が仕掛けられていてユリヤと鎧たちはまんまと引っかかってしまった!
「オホホホホ! かかったわね! 今よ! こいつらを拐って退却よ!」
「「御意!!」」
カヤノが立ち上がり号令をかけると地面の中から鎧武者達が現れた。
あらかじめ穴を掘り、俺達をハメるため落とし穴を仕掛け、伏兵用に塹壕を作っていやがったのか!
「それでは皆様ご機嫌よう、オホホホホ!」
「マサルさーん!」
落とし穴の存在により迂闊に近づく事ができず、あっという間にユリヤと穴にハマった鎧の頭だけを取って走り去っていった。
「あのクソ女神!」
「…………。」
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「お見事でございます総大将!」
「私に任せればこんなものよ、もっと団扇を扇ぎなさい!」
「どうなってるんですか!」
鎧武者達に攫われた筈のカヤノはどこからか用意された椅子に座りふんぞり返っている。
ただ拉致されたと思っているユリヤには状況がわからずうろたえるしかなかった。
「私がさらわれたあと、この子達に憎き西洋鎧共と戦うために大将になってくれって言われたの」
「ええ!? どういう事ですか!?」
「あんた達も言われたんでしょ? つまりは戦争なのよ、リビングアーマーは戦いを求めているの、マサル軍を倒すためにユリヤにも協力してもらうわよ!」
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「指揮官殿、被害は3体、いずれも頭を持って行かれ戦闘不能であります」
「わかった、仕方がないが置いていく、先ずは作戦を練ろう」
アイツの動きから察するに、俺達と同じように相手側の鎧の指揮官になったのだろう。
自らを餌にして罠を仕掛けたということは本気で打ち取りに来ているはずだ。
さっきから話しかけてくるこの鎧は、高名な騎士の鎧の……パチもんらしい、俺は彼に有名な騎士の名前からとってパチスロットと名づけた。
「戦力はどうなっている」
「我軍は総勢100体、奴等も100体程の軍勢でございます。」
数は同じか、ならば指揮官の力で勝敗が決まると言っても過言ではない。
奴はどんな事でもやるはずだ、それに対抗するならばこの作戦しかない。
「作戦はこうだ、俺が突込み奴ら全員をボコボコにし、カヤノをしばき倒す。どうだ?」
「あの、これは我等リビングアーマー達の戦争なので……」
「…………。」
パチスロットは言葉を濁しているが明らかにやめてほしそうだ。
空気を読めよと言いたそうなベルの視線が突き刺さって痛い。
「うーん、じゃあスキル『転移』で一気に本陣に奇襲を仕掛けてボコボコにする。これは完璧じゃないか?」
「駄目ですよ! 誇り高き闘争をなんだと思っているのです! 貴方は指揮官なんですから戦術とかをですね!」
「…………。」
どうもコイツラは戦争ごっこがしたいらしい、もしかしてリビングアーマーが古戦場に集まるのは戦いが好きな奴等が引き寄せられているからなのか?
「じゃあー、隊列を組んで進軍?」
「指揮官殿の命令だ! 皆のもの行くぞ!」
パチスロットが号令をかけるとその他の鎧たちは直ぐに隊列を組み進み出す。
俺いる?
「………!」
「そこに落とし穴があるぞ! 気をつけて進め!」
ベルには落とし穴の存在がわかるらしく、荒野を安全に渡ることができる。
俺のたちばがないなぁ……。
そんなことを考えていると遠方に見える鎧武者達がコチラを待ち構えているのに気がついた。
「気をつけろ! 何か来るぞ!」
20体程の武者たちの中には弓矢を構えているのだがこちらに打ってくる様子がない、しかし弓矢を構えていない武者は何かを手に持ち、こちらに投げつけてきた。
「盾をかまえよ! 何か来るぞ!」
パチスロットがそう支持を出すと前衛の鎧達が一斉に大きな盾を構える。
武者たちが小さく見える距離にもかかわらず謎の投擲物は寸分の狂いもなく隊列に投げ込まれた
前衛の盾にぶつかり砕けちったものは何かの液体が入った瓶で、その中身を撒き散らした。
「なんだこれ……まさか! 全員バラけるんだ!」
「……!」
遠方に見える武者たちが構えていた矢には火が着いているということは!
この液体は油だ!
「「グワー!」」
通常ではあり得ない程遠くから放たれた火矢は真っ直ぐに油のかかったリビングアーマー達に当たり、瞬時に燃え盛る。
リビングアーマーは鎧が本体のモンスターなので火などものともしないと思うだろうがそんな事はない、もしかしたら一番効果的な無力化方法かもしれないのだ。
「ケビーン! 大丈夫か!」
「駄目だ……バラバラになって動けねぇまった俺のことは置いて先に行ってくれ……」
「マルク! この戦いが終わったら結婚するんじゃなかったのかよ!」
「へへっ、あいつに伝えてくれ、俺は最後まで勇敢だったってな……」
油と火にやられたリビングアーマー達は鎧を繋ぎ止めるベルトを燃やされバラバラにになってしまったのだ。
とんでもないことを考える。それにあり得ない程真っ直ぐ飛ぶ弓矢はユリヤがバフ魔法をかけたせいだろう。
「指揮官殿! 被害は20体、いずれも身動きができなくなってしまい、戦闘は続行不可能です!」
「俺スキル『万物創造』でベルトとか欠損部分作れるけど……」
「戦死したのに蘇るのはマナー違反ですぞ!!」
「感動的な別れをしたのですからそんなことできません!」
「えぇ……」
「…………………。」
バラバラになにり苦しんでたはずのリビングアーマー達から猛抗議されてしまった。
ベルのお前、雰囲気考えろよという視線が心に突き刺さる。
「残り80体、これは不味いな、こうなったらやるしかない」
「何か秘策があるのですな!」
これは最後の切り札のつもりだったがそうは言ってられない、これをやるしかない。
「お前たち! 疾風殲滅神だ!」




