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第2話 家計切迫! エンゲル係数限界突破!

 前回のあらすじ。

 媚薬欲しい。



「お久しぶりですね、僕ですよ」

「……………。」



 

 扉を開けると2メートルは超えるであろう大男と、対象的に140センチ位の薄汚れた身なりの黒髪の少女が立っていた。



「人違いじゃないか? あんたみたいな人は忘れるはずないから会ったことなんてないはずだ」

「いえいえ、マサルさん、僕はあなたに用事があってきたのですよ」



 どうやら俺の名前を知っているようだがこの街で俺の名を知らぬ者はいないので会ったことがあるとは限らない。

 こんなに大きな男など一度見たら忘れることなどないはずだ。

 しかし彼はニコニコと俺に親しげな表情をしていて、どうも意図が掴めない。



「僕ですよ、ヒュミルです、覚えてもらえてないのは悲しいですが今日はお礼をしに参ったのです」

「はぁ……」



 やはり聞いたことのない名だ、ただ別に礼をしに来たということなら邪険に扱う必要もないだろう、どうぞ上がってください、というとすぐ済むとのこと。



「便利屋などという仕事をしていれば人手がたりないでしょう、この子を良ければ貰ってくれませんかねと」

「は?」



 この子とは勿論さっきから一言も喋らない少女のことだろう。



「僕はとある商売をしてきましてね、ですがこの子はどうも……それで良ければお世話になったあなたにお譲りしようかと」



 つまりこいつは奴隷商人なわけだ、それで売れ残りの少女を押し付けに来たのだろうか。

 正直厄介事はゴメンだ。


 全く知らない男が急に現れて奴隷を1人貰ってくださいなんて言われて素直に受け取るバカなどいない。



「悪いけどお断りするよ、別のやつを当たってくれ」

「…………。」



 この女の子は可愛そうだが受け入れる理由もない、俺は丁重にお断りをした。



「そうですか、僕は用事があって直ぐに戻らなければならないのです。そうなるとこの子はこの街に置いてかなければならないな……」

「は? 何言ってんだお前!」



 やはり売れ残りの不用品あつかいだったのだろう、いくら商売とはいえ人間をこんなふうに扱うやつがいるのか!



「わかった、そういう事なら俺が貰います」

「おお! それは良かった! では急いでいるので僕はこれで」



 嬉しそうに押し付けそのままどこかに去っていく男を少女はただ黙って見つめていた。

 胸糞の悪い話だがこのまま街に取り残されるよりはよっぽどマシだったろう。



「まぁ、そういうことだ、取り敢えず入れよ」

「…………。」






 不気味なほど感情の見えない少女だが、きっと奴隷にされる迄に色々なことがあったのだろう。

 年のほどはよくわからないが10代だろうか、それにしては身長が低く痩せているように見えるが仕方ないだろう。





「ほら、昼飯まだだろ? 一緒に食べようぜ」

「…………。」



 俺もまだ食べてなかったから丁度いいだろうと昼飯にすることにした。


 普段料理などしないがスキルを使えばいくらでも上手いものが作れる、適当にパスタを作りテーブルに出す。



「…………。」



 彼女はずっと無言で湯気の立つパスタを見つめるだけで何もしようとしない。



「頂きます。」

「…………。」



 俺が手を合わせると、興味深そうにこちらを見つめてくる。

 なんともやりづらい。

 少女は俺の真似をし手を合わせ、同じようにフォークを持った。



「もしかしてわからないのか?」



 俺が食べずにいるとコチラを伺うばかりで何も動こうとしない、パスタをフォークで巻くと同じ様な動きをぎこちなくも真似している。



「はは、なかなか上手いじゃないか」




 俺は適度に巻取り食べやすいようにするが彼女はフォークの先をボールのようになるまで巻き続けている、その様子を見てなんだか笑ってしまう。


 このまま俺が食べたらどうなるんだろう、少し意地悪な考えが思い浮かびわかりやすいように大口を開けて巻きとったパスタを口に含む。



「…………。」

「もうちょっと少なめにしたほうが……」



 小さな口を開けて必死に大きな塊を入れようとしてる彼女に、意地悪しすぎたかな? とアドバイスを入れようとしたとき。



「うぉっ!」



 その可愛らしい口が人間ではあり得ないほど大きく開き自分の手ごと中に入れた!



「お、え! 大丈夫か?」

「…………。」



 突然のことに何を言っていいかわからない。

 少女はそのまま俺がしていたようにモグモグとほっぺを大きく膨らましながら咀嚼し飲み込んだ。



「…………。」



 手を唾液まみれにしながらも2、3度同じことを繰り返すと、多めに持ったはずのパスタを平らげて唖然とした俺を物欲しそうに見つめている気がした。



「ま、まだほしいか?」

「……………。」



 俺の皿をそのまま彼女の前に出すと、またパスタを大きく巻取り口をあり得ないほどデカく開け手ごと口に含む、そして頬を膨らませながらムシャムシャと平らげる。


 哀れな奴隷にされた少女かと思ったがどうもそうではないかもしれない。

 もしかしたら魔族か何かで手に負えなくなって俺に押し付けてきたのかもしれない。



「…………。」



 思案に耽っているといつの間にか大量のパスタを食べ尽くし口の周りがベチャベチャの状態でこちらをじっと見ていた。



「もっと食べるか?」

「…………。」


 

 そういうとコクリと小さく頷いた気がした。

 きっと苦しい思いをしてきたのだろう、ありったけ用意してうまい料理を振る舞ってやろうじゃないか!






 面白がってあげていたら食料を全部食われた。




 最強の男、マサル

 

 残り寿命、9年6ヶ月

 命の負債、《1万年》





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