蜜芽が消えた理由(3)
「そういえば、オレたちの他にカノンがいたよな」
思い出したように健太が言うと、重吾が小さく『あっ』と叫んだ。
ネットの知り合いというのは結構遠方だったりするが、その逆にかなり近所だったりもするのだ。
カノンがご近所さんでないとは言い切れない。
「カノンに会いに行ったという可能性もあるか……」
重吾が腕を組んで眉を寄せている。
この格好をしているときは、本気で考え事をしているときなのだ。
健太は考えの邪魔をしないように、ポテトチップをポリポリ、バリバリ、ムシャムシャと食べあさっていた。
「ということは、昨日の履歴を見ればオレたちが落ちてからの事が分かるんじゃないか?」
「……」
急に話し掛けられて目を白黒させながら、ジュースで流し込む。
「そうか、履歴か!」
そう言うと、チャット履歴の確認を始めた。
今や重吾の頭脳回路は機械のように音を立てて動いているようだ。
「独り言なのか聞いてるのか、どっちなんだよ」
急いで飲み下したポテトチップを惜しみながら、健太が独り言をいうが、そんなことは全く意に介さずという勢いで、パソコンに向かい履歴の確認に集中している。
マウスを使い、スクロールさせていく。
重吾の目が左から右へと猛スピードで動いている。
「どうだ? 何か分かったか?」
「あぁ……。お前は知らないほうが良いと思うけど」
「何でだよ。知らないと探せないんじゃないのか?」
「そうだけど……。じゃぁ言うぞ。これは、オレの言葉じゃなくて、カノンと蜜芽の会話だからな」
そう前置きをすると、多少の優越感を匂わせながら、カノンと蜜芽の会話を要約して聞かせた。
「つまり、カノンはオレのことが好きで、蜜芽に相談してたんだ」
「はあ?」
健太が『そんなバカな』と言うように、目をむいて口を大きく開いた。
それもそのはずで、今の今まで『カノンちゃんは、オレのことが好きなんだ!』と思い込んでいたのだ。
「それで蜜芽に、オレと蜜芽が彼カノの関係なのかと聞いている」
「バカバカしいな」
「確かに。蜜芽とオレでは、男同士のようで嫌だ」
「お前と蜜芽だけじゃなくて、この世の男と蜜芽の関係が成立するとは思えない。で? 蜜芽はなんと答えてる?」
「大笑いしてくれてる。そして、ありえないと言っている」
「だろうな」
「それで安心したカノンちゃんは、蜜芽に恋の相談をしたいから、今から会って欲しいと頼んだというわけだ」
「へぇ……。カノンちゃんがねぇ。重吾をねぇ。物好きだなぁ」
「健太を選ばなかっただけ、まともだと思うけどね」
「じゃぁ、昨日夕方会いに行った相手はカノンちゃんということか」
重吾の言葉は聞こえなかったとして、健太が華麗なスルーを決める。
「スルーは重罪だぞ」
「スルーは平和の源だ」
「それにしても、そんな時間に会ったところで、大した話はできないだろうになぁ」
「そこは女子同士だからなぁ。男には分からないところだろう」
カノンが自分を好いているという事実を知った重吾としては、かなりの余裕発言である。




