蜜芽が消えた理由(4)
「まぁ……カノンが重吾を好きだったという点については、彼女はかなりの物好きだと言うことでいいとしよう」
失恋の痛手を何とか隠そうと、健太が格好をつけてに笑って見せた。
「格好つけたような笑いを浮かべてるなぁ」
「ニヒルと言って欲しいね」
「アヒル?」
「ニヒルだよ!」
「ニヒルってなんだ?」
「オレも分からないけど、父ちゃんが良く使ってる言葉だ」
「分からないのに使うって……さすが、健太だ」
と言いながら、キーを叩く。どうやら検索しているようだ。
「『冷たくさめている、無感情で冷たい、暗い表情』だとさ。どれも当てはまらないような気がするけど?」
「え? そういう意味だったのか?」
「どういう意味だと思ってたんだ?」
「父ちゃんが使ってる感じから、格好がいい男みたいな……」
二人とも蜜芽のことを心配していたはずが、いつの間にかパソコンの世界へと飛んでしまっている。
パソコンの良いところのひとつとして、いつでもどこでも知りたいことを『あっ!』という間に調べることができるというところだ。
それゆえ、適当なことを言うと足元をすくわれてしまう、恐ろしい兵器でもあるのだ。
「健太、父ちゃんにだまされたな」
重吾が面白そうにそう言うと、健太が頭を掻き毟ってうなった。
「分からないことは、ちゃんと検索してから使えよ」
さて、蜜芽がどうしていなくなったのか、その理由をパソコンから探ろうと試みた二人だが、さすがにそこまでの理由を知ることはできなかった。
しかし、出かけた理由が分かっただけでも、良しとしなければならない。
「カノンに会いに行ったことが分かったけど、これからどうするか」
蜜芽の家から出ると、それ以上何をしたら良いのかが思い当たらないのだ。
「ドラマなんかだと、この辺で素晴らしい展開がパパッとやってきて、チャチャっと原因究明なんてことになるんだけどな」
玄関ドアの前で、制服姿の中学生が腕を組んで佇む姿は、いたずらを企んでいるように見える。
「健太はテレビの見すぎだよ」
「そういう重吾だって同じようなものだろう」
確かにその通りだ。と言うよりは、誰もが見ているものを見ていないと、翌日クラスで繰り広げられる会話についていけないのだ。
これも中学生であるための努力なのだ。
「何が努力だよ。見たいだけだろ」
健太が笑い飛ばすと、重吾が『そんなことはない!』とシラを切るが、幼い頃からの友だけに、何を言ってもどうにもならない。
全てがお見通しなのだ。
「そうだなぁ、とりあえず蜜芽の残像思念を追いかけてみるか?」
「ざんぞうしねん? なんだそりゃ」
新たな言葉を聞いたと言いたげに健太がビックリして見せた。
「残像思念。物質や空間に残る人の念だよ」
「へぇ。それって、いつ習った? 授業でやったか?」
「授業なんでやるか、バーカ!」
「るせー、バーカ!」
しばし、『バーカ』の応酬があったが、喧嘩するわけでもなく元に戻り、話しは続くのだった。




