蜜芽が消えた理由(2)
パソコンを起動させると、いつものサイトへと飛んでみた。
「重吾。本当に手がかりがあると思ってるのか?」
「あるかないかは分からないけど、蜜芽が家出するなんてこと、考えられないだろ。だとすると、昨日何かがあったんじゃないかと思うんだ」
「そりゃそうだろうけど」
二人の前に置かれたジュースとポテトチップ。
ジュースは、こんな時だからこそ良く冷えていた。
なぜ、こんな時だからなのか。
それは、冷蔵庫を開けては閉める犯人が家にいないからだ。
そのおかげで冷蔵庫にしまわれていたはずのジュースは、気持ちよく冷えていた。
「食べてばかりいないで、健太も考えろよ」
重吾がポテトチップを口に運んでいる健太に向かって言うと、
「考えるのは重吾の係りだろ。オレは行動担当だから」
と訳の分からないことを言っている。
『しょうがないヤツだなぁ』と重吾。
日課のようにキーボードを叩き、クリックを繰り返しているだけに、パソコンの操作は見事なものである。
なまじの大人よりパソコンに詳しい。となると、その技術を生かして欲しいと思うのは親の願望であり、希望となる。が! この程度のことなら、今やどこのお子さんにもできることなのだからどうにもならないのだ。
さて、ネットを開きお気に入りを展開する。
そこには、蜜芽が気に入ったサイトが優に百は超える勢いで登録されていた。
「スゲーなー。これだけあったら、見て回るのが大変だなぁ」
確かに健太の言うとおり、毎日これだけのサイトに訪問していたら、時間がいくらあっても足りないだろう。
「まずは、毎日行ってるサイトに行ってみよう」
毎日行っているというと、三人が集まるところになる。
「へぇ~。蜜芽のヤツ、ここで男アバ使ってたんだ」
勝手にサイトにインしているのだ。
一応親にはパソコンを使いますという宣言はしてあるので、後で文句を言われることはないだろう。
が、蜜芽にばれたらビンタの一発では済まされないだろう。
「まぁ、蜜芽が女アバ使ってたら、逆に怖いだろ」
これまた失礼である。
さて、あっちへこっちへと移動し、結局何も手がかりなんてありそうもないブロックのゲームサイトへとたどり着いてしまった。
今のところ三人が揃って遊ぶサイトである。
三人が揃っているということは、蜜芽一人でそのサイトで遊んでいることはあまりないと思うのだが、それでも一応ということで来てみたのだ。
「昨日も一緒にいたけど。別に何もなかったよな」
健太がサイトを眺めながら言うと、重吾もサイトをぼんやりと見つめて言った。
「昨日蜜芽が出かけたのは夕方だ」
「蜜芽の父ちゃんもそう言ってたな」
「俺たちが学校から帰ってきたのが、四時を超えていた」
「昨日は結構早くに帰ってきたからな」
「部活はあったが、健太はサボっていた」
「そこは触れないでくれ」
「帰宅するとすぐにインしたから、四時半にはみんなパソコンに揃ったよな」
「オレは、トイレで頑張ったから、五時近かった」
「健太のトイレまでは聞いてないよ」
「そうか? 一応、ちゃんと推理するためには必要かと思ったんだが」
「オレが落ちたのが六時十分だった」
「オレは六時だった」
「オレは塾に行くから、六時十分に落ちたんだ」
「塾とか言いながら、コンビニで立ち読みしてる姿を見たことがあるが、内緒にし
ておいてやろう」
「今はそんなことはどうでもいいんだ。健太は何で落ちたんだ?」
「オレは飯だったから」
「なるほど。それで、蜜芽だけ残った」
「そういうことだな」
「蜜芽が出かけたのが夕方と言ってたけど、それって何時なんだろうな」
「夕方というくらいだから、六時以降だろう」
「なぜそう思う?」
「なぜって、オレたちが落ちるまで一緒にいたんだから、それ以降だろう?」
珍しくまともなことを言うと言いたげに、重吾が驚いて見せた。
「重吾よ。お前、自分だけが頭が良さそうに見せているが、俺はお前がしょんべんたれだったことを知ってるんだぞ」
「そ、それは小学校の低学年までの話だ!」
「オレにでかい口はきくなって事だよ」
しばしの沈黙。
そして、何事もなかったように笑いあうのだった。




