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生産性至上主義はアイを知らない。  作者: のどちん
社会貢献プロジェクト:ハヅウィン編
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47/51

Log 47:生産性

———次は生産駅です。


…眠っていたのか。


気づけば頬を伝う水が鎖骨に落ちた。

握った拳は膝に置かれ、あの日を思い出させるよう。


気分悪いから、隣にいる沙羅を起こしてさっさと降りよう。


「おい沙羅、もう俺の最寄だから。じゃな。」

「…あ、ああ待って…。」


今まで寝てたくせに僕に命令とはな。


「なんだよ。」

「あの…その…!」


無能は鈍い。本当のようだな。もう行こう。

そう思って、僕はドアの前に立った。

一分後ぐらいに着く。


「待ってよ。私言いたいことある。」


なら早くしろ。


「なんだよ。」

「…クリスマス…ひま?」


だいぶ先の話だな。


「別に何も予定なんてない。強いて言うなら…勉強かな。」

「ああもう、鈍感だな!一緒にあそぼーよ!」

「あのメンバーで?いいよ。」

「ちーがーう!!!二人!」


…は?いや…その…お前に使う時間なんて…!


「い、いい…けど。」


よくねぇだろ、今からでも訂正すべきだ!


「やった!」

「いやおい…」


次の瞬間、ドアが開く。

過疎っている駅なので、すぐに閉まってしまう。

だからもう降りるしかない。


…そう、仕方なくぼくはこの約束をしたんだよ。


「じゃね!誠くん!」

「…お、おう…。」


また、非生産的な予定が増えちまった。




◆◆◆




『やるんですね?』


櫻井はその画面をずっと睨みつけていた。

小一時間は経ったであろう既読無視も、

特別なんの罪悪感もない。


「…櫻井さん、どうするですかい?」

「やる…。やるにはやるナァ…。」


相変わらず殺伐とした商店街は、いつもと惰性でなにも変わらない。

ただ一つ、変わっていることがあるとするなら。

櫻井は、明らかに動揺している。


「…ワイの話でもしておこうかナァ…。」

「さ、櫻井さんの話…ですか?」


将棋を打つ音が消え、全員が櫻井を向いた。


「なぜ、ワイがこんなに生産性を気にするかをナァ。」

「確かに、いつも櫻井さんはそう言ってますよね。」

「これは…ある男から教わったこと。…いや、教わったんじゃない…。反面教師ってやつか…。」


櫻井は、つらつらと話し始める。


「お前らには、会社員だったことまでは話したよナァ。でも、辞めた。その理由、それはいじめられたってだけだ。」


屈強な男から放たれる言葉に、少し驚愕の顔を見せる者もいれば、頷く者もいる。


「ワイの上司、優星。ヤツは…嫌なやつだった。自分のミスを他人に押し付けるような典型的な嫌なヤツでもあったが…、それ以上に他人を痛ぶることが楽しく感じる異常者ってわけさ。悲しくもワイは標的にされ…、いやあまり詳しく語りたくはない。」


全員が息を飲む。その音だけが部屋に響いた。

どこかの家の犬が吠え、それに呼応するようにカラスが鳴く。しかしそれがノイズになるほどに、引き込まれていた。


「とにかく言いたいのは、優星が感情で動く滑稽な野郎だったってことだけ。だから思ったのさ。ならワイはそうはならない。徹底的に合理を愛し、感情を排除する。いいかお前ら。そんな風に…なるな。」


そして声色が変わる。


「この計画が罪悪感なんかで外に漏れると、本当に終わる。ワイらだけじゃなく、この商店街がだ。合理だ。感情を捨てろ。不要だ。いいか…?…返事しろよナァ。」


頷くだけで、言葉はない。




◆◆◆




如月誠は、後悔を知らなかった。

でもそれは、今夜崩れ去るのである。


電車で揺られ、降りて。

迎えの車に乗り込んで。


「…誠、今日はどうだったの。」

「は?別になんともない。」

「…そう。」


瞬間暗い車内で光る、スマホのパネル。


『バカ楽しかったw』

だとか、

『またいこ!』


などという通知が飛び交って、車内の黒を少しだけ彩った。

誠にはそう見えていた。少なくとも、その時まで。


「…?」


ピコン、と音がした。

LINEじゃない通知だった。


篤の考えたロゴが画面上に表示されて、

なにやら長文が書かれている。


ああ、これはただのレビューか。


そう受け流そうとした。


いつものことなのだ。自分のサイトにレビューがつき、星の数を見て安心する。

それが彼のルーティーンだったのだ。


母がなにも言わず運転しているので、

特に賑やかなわけではないこの車内。


誠の頭は、揺れていた。


『★⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 最悪の店です。なにもできてない。いかないほうがいい。早くなくなるべき』

『★★⭐︎⭐︎⭐︎ ちょっとバズっただけの高校生がイキってるだけ。普通になにがいいん?』

『★⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ はよ潰れろ』


声にならない、声。

押し殺した何かは巡りに巡り、決壊を迎える。


窓ガラスを叩く音がした。

母が怒る、その声はきこえていない。


聞こえるのは、自分の心臓の音とコオロギの声。

夜空に浮かぶ月は、まるでこちらを嘲笑している。


ピコン。


ピコン。


ピコン。


ピコンピコン。


ピコンピコンピコン。


ピコンピコンピコンピコン———。


ここまで読んでいただき、感謝しかありません。

ここまでが当作品、「生産性至上主義はアイを知らない。」の第二部とさせていただきます。

ハヅウィン編を終え、より一層誠の過去や今後の展開に味が出てきたことかと思います。

一部とは一味も二味も違う誠に、何を思いましたか?

続きは三部でお送りいたします。

ただし、自分は学生なので多忙もあり、あまり執筆できておりません。三部の投稿は10月か11月の頭になるかと思います。近況はたまに報告しますので何卒宜しくお願い致します。

もし興味のある方はブックマークや評価をいただけると、とっても嬉しいです!


これからもよろしくお願いいたします!

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