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生産性至上主義はアイを知らない。  作者: のどちん
社会貢献プロジェクト:ハヅウィン編
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Log 40:逆行する軌跡

誠が店を出て数分後、すぐに店内で動きがあった。

篤と雄志が残り、他の二人は隣の店に出かける。


そうなった時すぐ、

篤は何かに潰されそうに下を向く。

ただ一点を見つめる彼は、誰がどう見ても不安を抱えていそうだった。


「はいありがとうございます!」

「現金のみでしたらこちらのレジもご利用できます!」


言葉は大きくて明るい。

でも雄志が見る横顔は、それとは反比例しているのだ。


「はい、飴が5袋と…えっこんなに!ありがとうございます!」

「いやいや、娘が君たちのこといつも見ててねぇ、どうしても買ってきて欲しいって言うから、たくさん買っちゃったよ…w」

「是非是非娘さんともご利用くださいね!」


そのお父さんが外へ出て、一旦会計待ちの客がいなくなるタイミング。そこを逃すまいと雄志が話しかける。


「おい篤。ちょっとこい。」


レジには休憩中の札が置かれ、

雄志たちはバックヤードに潜る。


沙羅ママたちも休憩中だったので、

見つからない程度に廊下を進んだ。


「な、なんだよお前!」

「いやそれはこっちのセリフなんだけどな!」


雄志は怒っているようだった。

わけもわからない篤は、そのまま後ろによろけた。

雄志が手を引くと、篤はより下に視線を落とす。


「なんか…隠してるよな。お前おかしいぞ。」


篤の表情は曇り、

同時にタバコの匂いが鼻に焼きついた。


「そんな…大したことじゃねぇ。」


それを聞いた雄志は、唇を噛んで舌打ちした。


「…お前さ、俺をなんだと思ってんだよ。」


急に低くなった声に、篤も思わず雄志の顔を見る。


「俺は、お前の友達超えて親友なんだぞ。何年お前と一緒にいると思ってんだよ。」

「いや…でも本当にしょうもない…」

「お前がそれをしょうもない悩みだと思ってたとしても、俺にはわかるんだよ。それは、いつかお前の心を貪り始めるぞ!」

「いや…でも自分でわかるし…」


体勢的に、篤は片腕を掴まれて吊るされているようになっている。

必然的に雄志が篤を見下す形になり、もう気持ち的に言い返せない。


口撃は続く。

いや…口撃というより説得だろう。


「いやいや!悩みなんてさ、自分で本当の質量がわかるようにできてるわけねぇだろ!第三者が見てやらねぇと、わからないようにできてんだよ!」

「なら…いう。」


篤の目が変わり、心配を浮かべた。


「昼にさ…。たまたま在庫見にこの辺通ったんだ。その時、たまたま誠が独り言言ってるとが聞こえてさ。」


———父さん…。僕はちゃんとやってる。安心して。もう、あなたのようになることはない。僕はやり遂げます。だから、どうか許してください。


「だったかな。もうさ。俺心配になっちった。しょうもないよな。他人の心配で自分の精神削るとかさ…。マジで。」

「…そんなこと、言ってたのか。」


そして雄志は、この前の通話を思い出す。


母親の乱入と、その会話。

決して軽くはない。


「前のお母さんのこともだし、あいつは多分頑張ってるんだ。俺たちがどうこう言うようなことじゃないんだとは思うけどな。心配なら悩みあったら言えよぐらいで留めた方が得策だとは思うぜ。」


それが正論だった。

この場を収めるただ一つの道でもある。


篤の目はすぐに戻り、

大きく息を吸った後に片手で膝を叩いた。


雄志の手を解き、少し微笑んだ。


「なぁ雄志。」

「あ?」

「お前は…やっぱすげぇな。説明下手なのに、言い得て妙って感じだぜ。」

「説明下手と言い得て妙は共存できねぇだろ!褒めてんのかどっちかにしろおい!」


笑い声は廊下だけに響き、

やがて客の声がする。


「店員さーん?」

「ほらそろそろいくぞ。」

「おうよ。」



僕はあそこを出て15分後に電車に乗り込み、5分ほど乗車した後下車。

そこで彼を見送った。


「Thank you cool boy!(ありがとよ!)」

「You’re welcome !(いえいえ。)」


もう、僕を褒めちぎってもいいんだぜ。

ここ20分、僕は一度も会話を途切らせなかったぞ。

しかも英語でだ。


逆の電車はしばらくないし、

効率的に帰るならバスだな。

乗ってあの商店街まで帰るなら、あと10分ぐらいで着く。




バス停に着くとすぐ、次のバスがやってきた。

臭いエンジンの匂いとやかましい音が入り混じり、

僕は少し落ち着いた。


人がかなり乗っていて、僕は立つことを強要されそうだ。まあ帰れればいいけど。


「あ、お願いします。」


料金は先払いみたいだ。220円…。

あったあった…。


ここで、僕はふと思い出す。

前に文化祭準備で、沙羅とバスに乗ったこと。


220円を払うのを渋ったような気がする。


なぜだろうか。

僕はこの時、自己嫌悪に陥ったのである。

平成20年の100円玉を見つめ、

一つ大きくため息をついた。


僕は、あの頃の僕は確かに正しいんだ。

労力を割いたなら、対価があって当然のこと。


あの時、僕はその対価を金で見ていたよ。

だけど、今となってはこいつらと親密になる第一だったわけだ。


そこに価値がないと言われれと、

僕は少し腹立たしい。


そういえば、もうしばらくバックに参考書を入れない。必須アイテムだったあれも、いつからそうなったのだろう。


そんなことを考えるうち、僕は怖くなってきた。


何が怖いのか今までならわからなかっただろう。

でも、わかった気がする。


それは…、いや、、まて。

それを考えたらもう後戻りできない…。


やめて…おくか…。


「ただいま渋滞ですので、少々お待ちください。」




…ふと我に帰り、僕はここで気づいたんだ。

このバスは、反対のバスだってことを。


第一、このバスは渋滞によって遅延した一本前の逆方向バスだったと言うわけさ。


「は、はぁ…?」


誰にも聞こえないであろう、そんな声でそう言った。

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