Log 04:利用価値
「このバス、近くのショッピングモールまで続いてるから。これに乗ろ!」
学校から徒歩数分。あるバス停に連れてこられた。
この数分があれば、いったい幾つの英単語を覚えれただろう。
「金、どうすんの。」
「?自腹でしょ?」
「は!?」
冗談じゃない!僕は行ってやる側だぞ!?
なぜ費用はそっちで持ってくれない!
「いやいや、そこはそっちが出すべきじゃない?わかんなの?」
「え、いや。」
バカとはこう言う生態なのだと、再び気付かされた。
「僕はしかたなく、しかたなくついて行ってる。なのになんだそれ!逆に金払ってもらうくらいじゃないの!それを妥協してやってるんだぞ!」
人の流れを止めてる感じがしたけど、仕方ない。
これは僕を証明する論争なのだから。
「ちょ、落ち着いて…。ここは…払ってあげるから。」
妙に上からで本当にイライラする。
「それでいいんだよそれで。」
まあここで揉めても仕方ない。さっさと買い物を終わらせるしかない。
まあ、かく言う僕はずっと単語帳でも見ようかと思っているわけだが。
「はーい。220円ねー。」
運転手のおっちゃんが、そう急かしている。
所詮どこの会社にも、どんな趣味も仕事にできなかった落ちこぼれなんだろう。
あまりに火力の高い言葉だから、自分で言うのをやめたけど。
「如月くん?」
「なに。」
僕がせっかく単語帳に夢中になってる時に、なんだと言うのだ。
troublesome。煩わしいね。
「誠くん、ってよんじゃだめ?」
…思考が止まりかけた。こいつは、いったいどれだけバカを重ねるのか。
「あのなぁ、神と人間を同列にあげる神話があってたまるか。そう言うことなんだよ。」
「そっか!なら、私が初めてだね!誠くん!」
この女、日本語理解が足りていない。
「呼ぶなって言ってるんだよ。反吐が出る。」
「ダメ…か、ごめん。」
「そんなことのなにがいいんだか…。バカはわからん。」
本当にそうだ。
下の名前で呼ぼうが、上の名前で呼ぼうが、結局同じものを指しているのだ。生産性の欠如。
ましてや僕は天才であり、他の奴らとは違う神なのだから、如月様と呼ばれるべきだ。
それを、如月くんで許容している僕は本当に寛大。
「じゃ、じゃあ降りよっか。着いたし!」
なんだ、意外と近いじゃないか。
こんな距離のためにバスを使うのか。
ならばここにいる乗客全員ドアホだな。
走ったり、チャリに乗るほうがよっぽど効率がいいと言うものだ。
多少時間はかかっても運動になる。
「誠くんはさ、ショッピングモールとかきたことある?」
「だから呼ぶなって言ってるだろ。それと、僕はこんな非生産的な場所に来ないから。いつもネット通販ね。時間の無駄だろ。」
「へーそーなんだ!」
誠くんだと?こいつ、馴れ馴れしすぎやしないか。
「お前馴れ馴れしすぎだろ。なんなんだよ。」
「…。」
刹那、沙羅は静寂に落ちた。
これが僕のせいなのかは知らない。
まあ、関係ないけど。
「あと…」
「いこ!文化祭のウチの出し物、覚えてるでしょうね?」
「喫茶店だろ?着いてくから勝手に見ろ。僕が見るのは単語帳だけね。はいはい、行った行った。」
そんな僕らが向かったのは、いかにも貧乏の巣窟。
百均。
僕は利用したことないからわかんないけど、
なんで100円じゃないのが混ざってるのか。
所詮姑息な商売か。悲しい店だな。
「ね、このレンガみてよ!」
「?」
真面目にお買い物、くだらない。
話を合わせるのに精一杯。
「これ使ったらオシャレになりそうじゃない!?」
「あのねぇ、生産性を重視しろよ。」
周りの客もこっち見てるな。
いい晒し者にしてやろう。
「レンガなんて、中で使うものだろ?もしお前が客だとして、まず初めに目に入るのはなんだよ。」
「…外装…とか?」
ほう。わかってるじゃないか。
それを活かさないとは、本当にバカなんだな。
「わかってるならなぜやらないんだ。人間、ファーストインプレッションが脳みそ支配してんだよ。」
何か言いたげだけど、バカに発言権は今ない。
「きったねぇ外装だったら、中に人来ないだろ。そしたらその用意したレンガとかも無駄なの。この世は生産性でてきてんの。」
「け、結構しっかりしたこと言うんだね…。」
「しっかり考えようぜ?こうやって話してる間も、本当は無駄なんだよ。僕はもっと有益なことしたいから。」
これに懲りたら、もう僕に何も求めてこなくなるはず。
大勢の前で、自分の無能さを知らしめられたこいつは、もう僕に話しかけることをトラウマとして記憶に保存するはずだ。
「す、すごい!やっぱ誠くんがいれば儲かるよ!だから———」
「はい、僕もう手貸したから。もうなにも貸さない。」
当然の因果だろ。神に道具を求めた人間が、どうなったか。
その結果は代償か、悲劇。
今のうちに甘い蜜を吸うのはやめておくんだな。
「ケチだなぁ。…!今、誠くんって言っても怒らなかった!」
僕は目を見開いた。
「………やめろ。もう呼ぶなよ。」
「ふふ、どうしよっかな?」
あんまり調子に乗るようなら、2度と口を効かないぞ。
社会的に切り捨ててやる。
「で、何買うんだよ。早く帰りたいんだけど。」
「そうだなぁ、このモール意外とでかいんだよね。そういう店ないのかなぁ。外装とか。」
知るか。そんなもん。興味なさすぎ。
知らないことを、一番に出せるやつなんているわけない。
そんな有能、僕の支配下におきたい…。
「いや…待てよ。」
AIという存在が、いたではないか。
いいか。これは決してこいつらに協力しているわけではない。
こいつの才能を試すだけ。
…いや。使うか…?
まあ、使うだけ使ってみるか。
“おい。カフェの外装を可憐に仕上げるために何か欲しい。いい店はないか?このレオンモールセーサンシュギ店近辺で。”
“それであれば、《セイシュギ百貨店》などはいかがでしょうか?”
やはり有能だな。
これからも、こいつをたくさんこき使おう。
「おいバカ女。セイシュギ百貨店ってとこがいい。僕も早く帰りたい。だからさっさと済ませろ。場所は…2階フードコートの隣。早くしろ。生産性落ちるだろ。」
「はいはーい。」
百均にいた時間は本当になんだったんだ。
まあ、より生産的なことができるなら、それでいい。
「ねぇ、誠くん。」
「だからやめろって言ってるだろ。あんまり舐めてると、本当に何するかわかんないから。」
「昔はさ、もっと…笑ってたよね。」
この女、つくづくゴミだと感じるな。
何を隠そう、いや。こんな無能と同じとは思われたくない。
だが…。
でも、悔しいことに事実。
こいつと僕は…
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