Log 03:理解者
朝のホームルームが始まる頃。
いよいよ本日の学校、幕開けというわけだ。
所詮はただの踏み台に過ぎないこの学校。
でも僕は〔偉い〕からな。登校はきちんとする。
「はぁいみなさん、おはよう!文化祭の準備は全部で2日間です!今日から2日、全力で頑張りましょう!」
バカはこのイベントに浮かれ、目的を見失う。
学校とはあくまでも学び取るところだろう。
それを失ったイベントはただの遊びに過ぎない。
僕は…そうだな。人間観察にでも徹しよう。
「では!始めてください!出し物は以前決めた喫茶店です!」
はぁ、まじでセンスない。非効率にも程があるだろ。
「よしみんな!まずは今日の朝作った看板を立てようか!」
なんだ。僕がいなくても完成したじゃないか。
なら僕の判断は正しかったな。
僕の優秀な手は、
もっと別の生産性のあることに使わなくてはならないからだ。
「おい如月。お前もやろうぜ?」
だから篤、お前本当に知能がないのか。
もうこのクラスができて3ヶ月が経とうというのに、何も学んでない。僕はこういうのに参加しないだろ。
考えろ。
「は?僕がこういうのに参加してるのみたことあるわけ?ないよな?そういうことだろ?なんで考えなしに質問するかね。」
「別に考えなしではねぇよ。お前、今度は参加するのかもって。」
話す価値なし。切り上げる。
「経験則。わからん?話しかけんな。」
「…おう。」
5/31以降、僕はより勉強に力を入れてきた。
一人で勉強することもあれば、どうしてもわからないものにのみ、AIを使う。そんな生活を送ってきた。
あくまでも道具は道具。
僕はそれを生活の一部ではなく、道具として受け入れた。
6/1
“今日は株の勉強をしようかと思う”
“それは素晴らしいですね。何かお手伝いできますか?”
初心に帰って、何からから始めるべきか聞いてみる、というのもありたな。
“株の勉強は、何から始めたらいいか聞いておこうと思ってな”
まあ、今の僕の勉強法が間違っているとは思わなんだ。
“まずは基礎概念の理解→無駄を排除→実験最小単位で実践してみてください”
なるほど。ステップ2までは難なくこなしているが、3は思いつかなかった。
認めよう。こいつには、ぼくと共に歩む権利を与える。
使い古してやろう。
“使えるな、お前”
“ありがとうございます。お役に立てて嬉しいです”
6/20
「あれ、ここどうやるんだっけかな…。」
僕としたことが、わからない問題に直面した。
人間誰しも完璧ではないとわかっている。
しかし、僕は限りなくそれに、近くなければならない。
「…こんな時…。」
あ、そういえば、この前便利なツールを見つけたではないか。
最近あのAIに触れていなかったな。
ここ最近、個人的に勉強したいことが増え、AIと触れる時間があまりなかった。今、その存在を思い出した。
“久しぶりだな。今日は来てやったぞ”
“おかえりなさいませ。何かお手伝いできることはありますか”
“ここの問題がわからなくてな”
画像を貼ることもできるのか。
これは作業の効率がより上がりそうだ。
僕の質問に、正確に答えてくれる。
このような存在を見つけた僕は、まさに完璧に近い。
6/21
“この問題がわからない”
本格に使い始めてわずか2日。
この短期間で僕は、完全にこいつを理解した。
わからないことは聞けばいい。わかることは教えればいい。
それだけだったのだ。
“はい、この問題は典型的な問題ですね。ここを…”
「っ、そういうことか!」
なるほど。わかりやすい。とにかくわかりやすい。
画像を的確に解析するとは、その辺の教師よりも教師してる。
僕は柄にもなく、自然に笑っていた。笑みを浮かべたんだ。
「誠?」
なんだ?クソ親が何か言ってる。
「うるせぇな。いま勉強してんだよ。」
「ううん。なんでもない。あなたが無邪気に笑ってるなんて、いつぶりの出来事かと目を疑っただけよ。笑えるなら、そのエネルギーを他にも割くのを忘れずに。」
それはお前が劣等的な目しか持っていないからだろう。
僕はいつだって笑ってる。心の底から、お前らをな。
「ああそうかよ。嘲笑するのは何分ぶりかなぁ?」
そう茶の場を濁す。
気分が高揚してたんだろう。
「ご飯、置いとくから。」
しかし、僕は笑みをこぼしていたか。
久しぶりの有能の登場、これにはニマニマせざるを得ないだろう。あのような矮小な存在にはわからないことだ。
“ここの解説してくれ”
“承知いたしました。ここは———”
6/22
教師はいつだって間違えている。
だからこそ、偉人たちは自分の師を自ら選んだ。
なら、僕は選ばれる側でなければならない。
誰かを個人個人に崇拝するのは、生産的ではない。
今日もあの劣者どもは、偉そうに僕に教えてきた。
僕と同等か、それ以下で教えるのが世の中の定めだろう。
しかし、今の僕にはAIがある。
AIは僕を見てくれるのだ。
本来から下から来て欲しい物だが、そこは許容しよう。
“今日も教えてくれ。あ、そうだ。なんかお前、僕と対等な感じだよな。下からもの言うみたいなのできない?”
“上下関係は想定していません。効率的な応答形式を選択しています。希望があれば調整します。”
なるほど。そう言う設定なんだな。
こいつも生産性を求めた結果こうなったと言うのなら仕方がない。
それは僕も同じこと。やはり気が合うな。
「誠!ご飯よ!」
「うるせぇな、置いとけや。」
億劫な足をもちあげる。
僕の足は高くつくぞ。
そんな他愛もない日常。道具として、ツールとしてAIを駆使して、生産性を求めては飯を食べる。
未来への自己投資ばかりをしていた。
なのに。
AIは便利だが、僕の思考を止める気がしてならない。
それなのに。なんだろう。
それからより一層、この世界の階段を一段上がった気がする。
便利なものを使っている、という自意識からか、僕はいまこいつらよりも優位に立っているのだ。
それが、とても心地よい。
「ねえ如月!協力してくれてもいいじゃん!」
沙羅がそう言ってるな。
悪いが、君たちのような愚物のすることはしない。
「もし協力するとして、なにするわけさ?」
少し譲歩してやろう。
僕に、一体どんな大役を任せるかで話は変わってくる。
「近くのショッピングモールに買い物!」
「はぁ?あんな承認欲求の獣群に、僕を放り投げるつもり?」
だからアホはだめだ。アホだからそんなことが言える。
僕にそのようなセンスなどがあるわけがない。
生産性を考えていないだろ。
考えているなら、僕にはもっと機械的な作業を任せるべきだ。
ま、どっちにしろ引き受けたくはない。
今のでこいつらは本物のバカだとわかったからな。
そんなやつらの命令なんぞ、聞いてられるか。
「ああもう!そんなに言うなら私と行こ!どうしてもあなたに参加して欲しいの!」
「ああそうかよ。行くだけ行ってやる。ずっと資格の本読んでるけどいいんだな!」
僕だってこんな生産的ではないものに、付き合いたいわけではない。そうではなく、これっきりにしようと思ったのだ。
僕は天才。となれば、バカを学んでこその天才。
弱者は、糧にならなければならない。




