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生産性至上主義はアイを知らない。  作者: のどちん
社会貢献プロジェクト:始動編
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Log 27:夕陽が照らす欺瞞

何かが僕を抑止する。

これ以上進めば、何かがあるような。ないような。

拒絶するのが何かしらないし、声が詰まる原因もわからない。


だからこそ困るのだ。


「み…せ、、、…」


なんで声が出ないんだ。

僕は無能じゃない。

僕が補わなきゃならないだろ。


沙羅に負けて、恥じろ。

僕は僕をムチで打つ。


なんでこんなことで苦戦してんだって、そう思われるかもしれない。

でもさ、そんなん僕が一番聞きてぇんだよボケが。



「ま、誠くん、大丈夫?無理、絶対しないでね?」


…うざ。


「うるせぇなんも無理してない。」


ど田舎が故、1時間に一本の電車。

登り下りを合算すれば、1時間に2回。

ここには居れても3時間だ。

ビラは僕と沙羅を合わせて750枚。


つまり、一電車につき125枚。

このままではまずいだろ。僕、声出せ。


「び、ビラお願いし…ます!」


ガキの宣伝のようだな。

頭ではこんなに言葉が湧出するのに、口から出ない。


「お願いします!」

「おねがい…、します!」


全ての人が自分たちの前を通り抜けた。

唯一の救いとして、この駅には需要がある。


この駅が、街のはずれなのは事実なんだ。

でも、電車すら通っていないような村、街が近くにいくつもある。その人たちはここから乗り降りするわけだ。


だから、結構人は降りてくる。


「いやぁ結構配れたくない?」

「んなことより、ここに本当に3時間もいるのかよ?」


正直、今配れたのは50枚くらい。

これでも上々ってなもんだけどさ。

3時間で300枚配れればいい方、だろ。

ならもっと都市部に移動したほうが生産性があるはずだ。


なにより、今日はクソ寒い。


「3時間もここはきつい、今からでも都市部の方行かない?」


強要したい、絶対このままじゃダメ。

なのにその言葉は、どうしても喉に突き刺さってしまう。


「…今日さ、私がこの場所選んだんだよね。」

「…?」


なら相当センスないな、そういわれたいのか?


「なんでかって、誠くんとめっちゃ話できるから。」

「…え?」


なんだよそれ。


「あの…!私…!!!…ん、その…絶対成功…させよう…ね!」


この時沙羅が言おうとしたことがそれだったか、

それは知る由もない。


だが、あいつの目は希望が5割でさ。

その裏に隠れている絶望を僕は見落とさなかった。


虚像の笑顔とかいう、クソの塊を僕は今見ているのだろうか。

いや、ずっと見せられてきたんだろうか。


そう考えるだけ、なんだか怖くなるから。

僕はその考えを捨てたよ。


沙羅の次の言葉を待つ。


「都市部ってことは…上りだね、15分後に電車ある!」


何事もなかったように取り繕っている感じが、

どうしても払拭できてない。


僕の中で疑惑が湧き始めるのがわかった。

前までの僕ならきっと、もっと早く気づけていたかも。


そう考えてる時点でさ、僕はもう変わっちまったんだ。

元の如月誠は、バカと絡んだせいでバカになりかけてる。


怖かったから、これ以上は堕落しないって決めた。


もう、バカを重ねない。

踏み込むことは、しないようにしよう。


「田舎だなぁ?」

「し、仕方ないでしょばかばかばかばか!」


そんなに怒るなって言おうとしたけど、

寒い風に靡く髪の毛が綺麗でさ。


放課後は遅いから、もう夕陽が出てて。

その光が差す沙羅の感情が、欺瞞だとは思えなかった。

怒るような、嬉しいような。

絶望の%が、錯覚のように消えていく。


「ごめんごめん、てか寒くない?コート貸してやるよ。」

「えっ……その…あ、…ありが…と。」


別に…普通だし。




この日、僕たちは368枚を配った。




◆◆◆




「櫻井さ〜ん。」

「…?」


ここは、商店街の一角。

どこかはわからない、薄暗い部屋。

男が何人か、そこで談笑する。


「あの店のことで相談なんですがね…。」

「言ってみろよナァ。」


もう時刻も遅いというのに、やけに部屋は明るい。

部署内の誰かが将棋を打つ音、タバコを吸う匂い。

全てが絡まり合って、異様なまでに不快な空気を落としている。


「やはり、期待するのは無理かと思われます…。早く切ってしまうのも手では?」

「ああ、それが本来一番効率いいんだよナァ。でも、あそこを簡単に潰しちまうと、他の店からの反感がつよくなるんだよナァ。それは非効率だから、仕方ないんだよナァ。」


椅子に踏ん反り返って櫻井は言う。

すると、深いため息と同時にサングラスを取り外した。


「それに…あの少年が気になるんだよナァ。確信は持てないが…少し…ナァ…。」

「は、はぁ…。ではその方向で進めます。」

「くどいナァ。」

「す、すみません!」


部署内が重たい空気を纏う。

櫻井の一存で一体どこまで変わるのか、それは一目瞭然たろう。


「………昂介…。」


櫻井の呟きは、静かにそこに沈んでいった。




◆◆◆


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