Log 24:作戦会議
「いいよ、この部屋!」
そう言って沙羅は扉を開けた。
瞬間に理解する。
これは、ただの女子高生の部屋じゃないと。
置いてあるアニメの推しグッズ。
鏡。
大量の課題。
クローゼット。
視覚じゃ普通の部屋なのに、おかしいんだ。
なんてったってさ。
タバコ臭いんだよ、この部屋は。
あと少し強めの香水の匂いが染み付いている。
その匂いに、沙羅が気づいてる様子がない。
それだけ染み付いているのだろう。
この前の黒服か。
しかし、僕にそれを深掘りする覚悟はなかった。
というか、僕の人生において不利益なだけだった。
「じゃ!まずは私からね!これ!」
そう言った雫は、手元にビラを出してきた。
この店の宣伝、電話番号、コメントなど。
意外にも真面目なビラだ。
「これを学校のみんなに配るってのはど?駅前とかいろんなとこで配るのも楽しそうだと思うよ!」
正直一番堅実なのはそれだ。
ねずみ算的に広がれば、大きな利益が見込める。
「まあそうだよな。それは採用でいいと思う。」
「よしっ、まこっち承諾ゲッツ!」
「んだよそれ。」
みんなが笑ったところで、僕はため息をついた。
いや、特に意味はない。
そしてすかさず次の手が伸びる。
「はい俺のターン!ドロー!」
机に叩きつけた代物を確認する前に、
みんなの冷たい視線が篤に刺さった。
「…えええ…。」
「いや、わ、悪かったって…。」
しかし、モノが悪いわけじゃない。
「俺は飴入れる袋のデザイン考えてみたぜ!」
一枚のB4サイズ紙に描かれているデザインは、
確かにどれもおしゃれだし世界に唯一無二だ。
「凝ったのはここ、右下のとこ!」
「ロゴ…か。」
この店にはロゴというロゴが存在していない。
しかし、どんな店であれ自分のロゴぐらい用意するモノだ。
そこをついた篤のデザインはなかなか鋭い。
「後で確認しよう。」
「俺もゲッツ!」
「だからんだよそれ。」
また笑ったところで、次は雄志のターンドローだ。
「俺はどっちかっていうと、ものじゃなくて考えなんだけどさ、いい?」
「うん。ブレインストーミングだと思えばいい。」
「おうよ!」
考えってのはつまり、イベントとかを考えてきたわけだな。
前回のブレストで、いろんなイベントの案が出た。
その詳細な内容を考えてくるのもありにしたし、
奇想天外な雄志の案は、多分結構いいと思う。
「名付けて、『学割で学生ゲット作戦』っだ!」
「何そのバカみたいな名前。だっさ。」
素で出た反応だったのか、あっやべっ、
という感じで雫は口を覆った。
「そんなこと言うなよぉ…。」
ニマニマしたような顔で雄志がそう言うので、
特に重い空気に鳴ることなく話は進む。
うーん、なんだか心地いい。
「まず学割だろ?自習スペースの確保とか、俺たちがあって『ありがてぇ!』って思うものとかをめっちゃおけばいいと思う。」
確かに、そう言う滞在時間の価値化は重要だ。
この店はすでに居場所を売っている。
悔しいが認めざるを得ない。
なら、それを強化するのは自然の考えだろう。
「たしかに、それはあるね。沙羅ママに聞いてみよう。」
「で、俺が考えてきたのはその具体案なんだけど、ここにまとめた。」
なんだ、想像以上に有能すぎるな。
もちろんこの程度で僕は認めたわけじゃない。
だけど、いいな。
「これは実現しやすそう!」
「…おい、なんだこれは!まだそのネタ擦ってんのか?」
篤が声を上げて指を刺したところには、赤い太字でまじまじと書いてある文字がいた。
「メイドカフェってお前な!流石にそろそろ擦りすぎだろ!」
「えー、もう買っちゃったからさー?」
驚愕の事実が雫の口から出てきた。
「は!?誰の金だよ!」
「私の自腹〜。」
バカの二乗は大馬鹿だな。
篤のメイド服は確かにおもろそうだけど、
それを売りにできるほど強くはない。
…まあ、あって損はないと思うけど。
「その金どっから出たんだよ…。」
「バイト代だよ?」
確か雫は、観光地でバイトしてるっぽかった。
バイトはしたことないし、
そんなことするなら勉強すべきだと思ってる。
だからこいつはアホに相違はないんだが、
なんだか少し羨ましい。
「まじかよそこまで需要あるのか???」
ない。たぶん。
「あるある〜。…ってか、まこっちは?」
ガキの子守をする大人のような気分に入り浸っていた時、
雫はそう言った。
みんなの顔か、一斉にこちらを向いた。
急に視線を向けられると、すこしびっくりするものだな。
「僕はいくつか考えてきたから、みんなで是非を判断してほしい。」
前回のブレストで出た意見、全てを採用することはできない。
だから今回の場が設けられた。
厳選しなきゃならないんだよ。
この店を変えるには、本気を出すほかない。
「案1。イベントの定期的な開催。さっきも出てたかもだけど、具体案いくつか考えてみた。」
僕は手を一の形にして、意味もなく部屋を歩いた。
心理的に処理が落ち着かない時、人は意味もなく歩くらしい。
余計なことが連鎖する。
この時だけ、僕の地頭を恨んだね。
「まずはやっぱり飴作り体験だと思うんだよね。この店の最大の武器は飴だよ、それを売りに出さないのは損すぎる。特典とかもつけてさ、飴作り体験を定期開催するのありだと思う。」
「確かに…それはうちでやったことなかった…。」
沙羅が感心した目でこちらをみた。
だから僕は続けた。
「っでもよ、それどこで告知するんだ?ビラ作り直すのも時間かかるし…。」
「そこで。」
僕は、持参したノートパソコンをガバッと広げる。
開く手は結構浮かれてた。
この時、多分僕はみんなのことを見てなかった。
完全にパソコンの中身にしか目がいってなかったよ。
「ホームページ作るぞ。」
「ほ、ホームページ!?」




