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生産性至上主義はアイを知らない。  作者: のどちん
社会貢献プロジェクト:始動編
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Log 23:異常在庫

少年は絶望した。

それが今後の人生観を大きく変えてしまったのだから。


少年は歓喜した。

自分の目的が明確になったのだから。


少年は混乱した。

パラダイムシフトが、短期間に2回もあるのだから。


少年は悲観した。

自分の罪に囚われたのだから。


少年は受け入れた。

それが自分の力なのだから。


少年は生きた。

それが、それこそが“彼”の願いだったのだから。




◆◆◆




10/4

「んがっっ!」


…なんだ、家か。

悪い夢でも見たみたいだ。


ふと周りを見ればいつもの木目、ベッド、煩雑に乱れた勉強机。

何も変わりなく今日も始まる。


ここ2週間、実は結構楽しみにしてたんだ。

なんか、何かが始まる気がしてさ。




「お、誠きた!」


そこにいけば、もう全員集まっていた。

今日は集合が遅くて12:30。

雄志の予定の影響だったっけかな?


「わるいわるい!ちょっと遅れた!」

「もう、タイムイズマネーなんだからね〜?」


こんなことを言われても、何とも思わなくなってきた。

これは明らかな変化だ。

少し気持ちが煩雑だが、今は触れないことにする。


今は今に集中すべきだと、そうは思わない。

でも少なくとも、今はその価値がある。


「わかったって、じゃ入ろ!」


昔ながらの扉を開ければ、そこはやはり賑わっていた。


ショッピングモールとは違う類の賑やかさ。

誰かの喋る声ばかりが聞こえてくるから、だろうか。


「あら、来てくれたのね〜!」


その言葉と同時に、沙羅ママは手を振った。

レジで会計をしながら常連さんと話をする。

そんな光景は、やはり古びた商店街そのものだな。


「お邪魔します、おばさん!」

「…は?」


雄志は激しく睨まれた。


「お、おねぇさん!」

「いらっしゃい雄志く〜ん?」

「う、うす!」


店内が笑いで充満する。

高圧的なのに、そんな感じがしない。

普通、人が怒ればその言葉が上からのしかかる。

僕のデータは、そう言っているはずなんだけどな。


「中に沙羅いるから、ちょっと行ってあげてね!」

「わかりました!」


篤の返事と共に、僕たちは店内に足を踏み入れる。

玄関には銀杏の葉が散乱していたり、

隣の家から舞い散る楓の葉も窓にへばりついていた。


「へいさっちゃ〜ん!」

「あ、みんな来た!」


そうそう、雫は沙羅のことをさっちゃんと呼んでいる。

親しみやすいのはなによりだが、

もちろんまこっちは承諾していないからな。


「にしても…なぁんだこれ?」


雄志がそういうのも無理はない。

この前まで綺麗だった通路が、荷物で埋まってるんだからな。


「あーこれ…?これはね…その…なんでもないよ!今月の仕入れ!」


…バカ…なのか?従来の在庫の2倍はあるぞ?

この量を売り切れるなんて、よく思ったもんだな。


実は、僕は以前沙羅ママに色々聞いたことがある。

その時、以下のことを話された。


・在庫の発注は30日で、1週間後に届く。


この情報から、この時期には在庫が届かないはず。


僕の疑念は、少しづつ深まる。


まだこの段階でいくら僕たちが尽力したとしても、

従来の在庫を売り切るのが関の山だろう。


何も話題にしてないし、何の策も実行してない。

その時点でこの在庫は間抜けがやることだ。


生産性どうこうの話じゃない。

頭のネジが外れてる。


「バカじゃねぇのか?こんなの売り切れるわけないだろ!」


僕は何を言われても正論を言うぞ。

どう考えても、これは常軌を逸している。


「ご、ごめん…その…買っちゃった!」

「買っちゃったじゃないんだよ、取り返しつかないぞ!?」

「まあまあ誠、売ればいいだろ?」


雄志が口を割るが、偽善だ。

ほんとはみんな思ってる。

みんなが言えないような、

ほんとの本音をぶつけるのが僕の仕事なのかもしれない、

と思い始めた。


…いや、それは違う。僕はもっと重要なはずだ。


「この量をか?よく考えてみろ!」

「それはそうだけどもよ、まだわかんないだろ?」


わかんない?わかるよ。


「わかるに決まってるだろ!僕は真面目な商売しに来たんだよ!なのにこのザマか?この量は大手がやる量だぞ!」


一息でそう言ったので、かなり息が荒くなった。

自分でもみっともないと思う。

しかし、僕は何も間違ってないぞ。


「し、仕方なかったんだよ!私だって…その…」


誰かに何かを言い返される感覚、それは本当に久しぶりだ。

こんなに鼻につくとは。


「言ってみろよ。」

「…いや…なんで…も…ない。ごめん…。」


少し静寂が訪れた。

昨日の夕飯も、多分レトルトカレー。

黒ずんだ雨漏りの跡もすこし肥大化している。


そんな感じに、なんとか沙羅に顔を向けないようにする。


その時、空気を刺したのは雫だった。


「ま、まあ、どっちも一理あるよ、一言で片付かないのはわかるでしょ?ね?今日はそれが目的じゃないでしょ?」


本当なら言い返していたところだが、言葉は出なかった。

このまま議論を長引かせるのは、多分得策じゃない。


「…そうだったな。」

「私の部屋使っていいよ。2階いこう!」


切り替えの速さだけは一人前だな。

雄志と篤なんて、まだ顔曇ってる。


しかし僕のせいじゃないんだからな。

これ、絶対沙羅のせいだ。

その感覚だけは残して、2階の階段を上がる。




「いいよ、この部屋!」


そう言って沙羅は扉を開けた。

瞬間に理解する。


これは、ただの女子高生の部屋じゃないと。


置いてあるアニメの推しグッズ。

鏡。

大量の課題。

クローゼット。

視覚じゃ普通の部屋なのに、おかしいんだ。


なんてったってさ。

タバコ臭いんだよ、この部屋は。

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