Log 22:笑顔のあちら側
「まず飴の値段は確実に上げ?からな。」
「えぇぇ?買ってくれるのかな…?」
「飴の包装に特別感出したらいいんじゃない!?」
「そっれっだ!」
「この案だと学割とかは?」
「下校中の高校生とかが寄りやすくするってこと?」
「いいやん!」
「この案のイベントやりたいね!」
「子供も楽しめそう!」
討論すること約1時間。
「まさか…2時間でここまで決まるなんてね…。」
僕がそうこぼすほど、今日はおかしかった。
全員が自分の役割をこなしていた。
「ね、めっちゃ成功しそうだよ!」
「ただあっつんのメイドカフェは…まだ私たち諦めてないんだからね?」
「うるせぇ却下だ却下!」
確かに篤のメイド服はウケるだろうけど、
想像すると気持ち悪くてまあ面白い。
にしても悪くはなかったな。
僕一人なら、まあ小一時間で終わったが…。
このメンツなら上出来ってもんよ。
もちろん、学割、イベント、飴の値段だけじゃない。
もっといろんなことが決まり、少しワクワクする僕もいる。
「メイド服の発注しとく?」
「そんなことより次集まる日決めようぜおい?」
ちょうどその話題になったので、僕が先陣を切る。
「次集まるなら、店がいいと思う。
もちろん明日からできることもないわけじゃないけど、著作権とか一応あるわけだし、直接店に一回行った方がいいかなって。」
いくら商店街の店だからと言って、著作権をガン無視してはいけないわけだ。
沙羅に許可をとってきてもらうってのもできるけど、やっぱりこういうのは…その…ね。あるだろ?
「だな。賛成。」
「10/4とかは?」
「いーね、もともとその日だったもんね。」
こんなにスムーズに行くものなのかと驚くところもある。
複数人で何かする時のデメリットとして、
予定を合わせるのが難しいというところがある。
その点だけで言えば、こいつらは結構すごい。
「まこっちは?」
「あ、うん。大丈夫。」
いいさ、認めてやる。
「店は?今日みたいに休店してない?」
「よゆーだよ!」
こいつらなら、
「やっば、電車10分後やぞ!」
「ええぇ!?ゆーちん早く言ってよ!」
「ごめんな沙羅誠!先行くわ!」
…利用するに値する。
抽象的だが、何かが出そうで出なかった。
「じゃねー!」
僕と沙羅、二人。
あいつらの残り香と、ドタバタと走る床の鳴く音。
ブラインドから差し込む、眩い光。
いやあな記憶が、蘇る。
ーお前は…俺みたいに…なる…な。
うるせぇ。
「…誠くん、私もそろそろ行く。じゃね。」
沙羅も、それがわかっていたのか。
そそくさと逃げ出すように会議室を出た。
ここにいても、何もない。
早く帰ろう。
そう言えば最近、出かけるときに参考書持っていかないな。
というか、その思考すらあんま出てこないな。
次から単語帳ぐらいは持ってこよう。
あまりに、暇だ。
◆◆◆
9/13
「ありゃ…誰か気になるナァ。」
「…。」
「おい!櫻井さんの質問に答えろ!」
少女と、その母。そして店主。
男どもが、4人ほど。
商店街に響き渡るその声は、まさに腹の底を突き刺した。
店内にもう人はいなく、
店主が営業終了の看板を立てる直前。
「は、はい、彼らは…その…」
「わ、私の…友達です…。」
その言葉を聞いたその男どもは、
低い声で嘲笑した。
「高校生のガキが、いったい何の用だったんだナァ?」
「うちの売り上げを…上げてくれるそうなんです…。」
再び嘲笑する男どもは、より声高らかだった。
カラスの鳴き声が耳に響き、
それに反応した犬がわんわんと吠える。
櫻井は鬱陶しそうに足をトントンさせると、
頭を掻きながら深くため息をついた。
「んなこと、できるわけねぇだろナァ。借金、どうしてくれるのかまだ聴けてねぇナァ。」
「…まだ、無理そうです。」
すると、櫻井の真横にいたサングラスの男が声を上げる。
「ふざけんじゃねぇぞ!!!1円も返せねぇのか?おい!いくら残ってると思ってやがるんだ!」
「まあまあ落ち着くんだナァ。こっちにも考えがあるナァ。」
何を言われるのかと身構えるのと同時に、
3人は深く目を瞑る。
「10倍、10倍だナァ。」
言葉を聞いた4人は、過度に震えていた。
脂汗が背中を伝い、瞳孔が開いて目が痛い。
無自覚に食いしばっていた歯も痛み、
ついには膝が笑い始める。
「3月までに、売り上げ10倍にするんだナァ。もし9.9倍でもゆるさねぇからナァ。この店、潰すからナァ?」
「…はい…。」
意外とすぐに、その言葉は放てるものだ。
今の肯定は、破滅への入り口だったのかもしれない。
「言ったナァ?絶対潰すからナァ?」
「………。」
そう沈黙しただけなのに、しただけだったのに。
そう思ったはずだろう。
「おい!!!」
そう言い、すぐに横の男が髪の毛を掴んだのだから。
「い、いやぁ…!」
それも、少女の方だ。
「いやなんて言わせねぇからナァ。
借りたのはお前たちだろナァ?」
「…ごもっともです。」
「ッチ。」
舌打ちと同時に、少女の髪の毛は離される。
数本抜け落ちたそれが宙を舞い、日光に映った。
いつもまにかカラスはどこかへ飛び立ち、
犬も興奮を抑えている。
それが切り替えのトリガーになったのか、
櫻井はすぐ車に向かう。
「今だけだからナァ?その程度で済むなんてナァ。」
黒い車は扉を開けて櫻井を乗せる。
全員が乗ったことを確認すると、
櫻井は窓を下げてこちらに顔だけ見せた。
「まぁせいぜい頑張れよナァ。」
すると、櫻井は去り際に唾を吐いた。
排水溝の手前に落ちて陽の光を反射するので、
尊厳が穢されたような気がする。
「おい大木、さっさと出せよナァ。」
「へい、わかりやした。」
運転手の名前は、大木らしい。
「借りたもんは…返せよナァ…。」
車が行くまで深く頭を下げ、
車が行くと同時に抱き合う3人。
暑苦しいのなんてどうでもいいほど、消耗していた。
店主は涙を浮かべ、母はくっ、と不意に声を出す。
少女だけ、何も感情を浮かべない。
いや、彼女は浮かべないようにして、
誤魔化しているだけだが。
刹那、母だけがその静寂を突き破る。
「ごめん…ごめんね…沙羅………。」
「謝らないでよ…。」
その言葉と同時に、
沙羅は大粒の涙を声を上げずに落とした。
ここまで読んでくれた読者様、本当にありがとうございます。
自分はただの高校生で、文才も何もない。
ですが、この小説だけは必ず綺麗な形で終わりにします。
自分が伝えたいことは、ここまでではほとんど伝えられていないと思っています。
ですので、ここまでが
「セイサンセイシジョウシュギはアイを知らない。」
の一部ということにさせていただきます。
二部のストックはすでに5.5万字ほどあるのですが、
自分の納得できるように終わらせたい。
少しでも読後感の悪くて、沈黙が生まれる。
そんなラストを描き切るために、少しの間だけ投稿を中止します。この小説を楽しみにしてくれる人がどれだけいるかわかりませんが、自分は自分の納得できるように頑張ります!
ですから、温かい目で見守っていただけると幸いです。
どんな感想でも構わないのでぜひ感想も欲しいし、どんな酷評も、良評も甘んじて受け入れます。
ぜひ、応援お願いいたします!
二部の投稿は8月の初めからを予定しています!
そして最後に。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!!




