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生産性至上主義はアイを知らない。  作者: のどちん
社会貢献プロジェクト:開幕編
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21/52

Log 21:過剰適応

9/20

1週間が過ぎた。

その頃僕たちは、とある会議室を借りていた。


「ブレインストーミング…?」


僕は劣等感を感じたくない。

どれだけチームに貢献するかなんて、正直眼中にない。


僕は、僕がどれだけ納得するかで世界を測る。

なぜなら僕の目は、いつだって生産性を見てるから。

間違った判断なんてない。


「そう。お前らは知らないと思うけど、有名な解決策を出す方法なんだよ。」

「…なんかムカつくなおい…。」


篤が不満を漏らすと同時に、僕はペンを握った。


「先週沙羅の店に行って、さまざまな問題点があったと思う。実際僕は問題だらけの破綻寸前店だと思ってる。」

「ひっどぉい!」


その言葉と同時に沙羅が台パンする。

あまりの出来事に、ふざけだとわかっていても笑みが溢れた。


「まあまあ、事実だろ?」


こんなに意味のない質問するべきじゃない。

早く、早く本題に入らねば。


「事実だけどさあ…。」

「はいはい、て、ブレインストーミングだけど、簡単に言えば質より量って考え方だよ。」


実際、問題点が多過ぎて一点に絞り込むと話が進まない。


「誰もその人の案を否定しない。

変な案だって歓迎するし、他の人に乗っかってもOK。

『これ言ったらみんなから引かれるかも…』とか言うくだらない感情捨てて、とにかくたくさん案を出す!」


みんなポカーンとしてるな、仕方ない。


「とにかく、恥ずかしがらずに案出すってこと!」

「わ、わかった!ならまずはSNSを運用する!だ!」

「あっつんあんたね、そんなの成功するわけ…」


話聞いてたかよこの野郎。


「ストップ。雫、他人の意見を否定しないのが、ブレインストーミング、ね。」

「あ、、、ご、ごめん。」


事実、SNSで成功を収めるのは簡単ではない。

しかし案として出してくれることだけで、感謝ってもんだ。


「いいってことよ!」

「お詫びに私も!チラシを学校で配るとかは?」

「いいね、僕はここに出た案を描いてくから、どんどん言って。」




ブレインストーミングは通常、

思考時間10分と案を出す時間20分などで分ける。


しかしこの場合、

そんなものはいらないって思うくらいの案が出てるんだ。


そこは素直に、感心したよ。


「よし、だいぶ案が出たね。正直ここまで出るとは思ってなかったかな。」

「ひど!任せろやい!」


雄志は結構ガチですごかったかも。

ちゃんと理解してたからな。

篤の出した1点の案を、連想の広さを生かして100点で再発案したり、恥ずかしがらずに案を言ってたし…。


いや、何褒めてんだ。無駄すぎる。


「なら次は選ぶターン。再現性、生産性、全部加味して考えるよ。」

「きたな、生産性…っ!」


ちょっと恥ずかしくなった。


「う、うるせー…。」


みんな笑ってるから別に良いけどさ。


「茶番はここまでね。初めは案を消すとこから始めるよ。」


よし、いいぞ僕。切り替えが全てだ。

早く決めて、早く実行する。

そうしなければ成功もクソもないからな。


「真っ先に消すのはこれだな、『篤メイドカフェ』。誰だこれ出したのはっ!!!」

「俺じゃないぜ〜?」

「消せ消せ!!!」


ちょっと無視してみようかな?


「おい誠!消せよ!」

「ん?」

「ほう、お前もそっち側か?いいぜ?俺のデスボイス萌え萌えきゅんが炸裂してもいいのか…?」


それはやだな。


「あー無理無理無理!」


僕がそう言いながら消すと、会議室に笑い声が充満した。


「まこっち、こういう時のコツとかないの?」


一変して、とてつもない真面目質問が飛んできた。

ちょっとあまりに急だったので、僕は驚き顔をする。


「うーんコツね…、商売って2パターンあってさ。ウケるものを作る、ってのと一部の需要に極限まで答えるってやり方。」


会議室が、一気に静寂を轟かせる。


「メイドカフェなんてその一例だよ。あれをよく思わない層もあるけどさ、溺愛する層と普通の層があることで成り立ってるわけじゃん。それに比べて服屋とか、ああいうのは極端に嫌がる人少ないじゃん。メイドカフェにはあった、よく思わない層、が少なくなるようにするやり方もあるわけ。」

「あんまりメイド馬鹿にしてると、田村先生が怒るぞ?」

「いやそんなつもり毛頭ねぇよ!」


話を逸らすなよ!

…ちなみに田村先生はメイドカフェ通らしい…。


「ああいう商店街の場合、前者の方が売れ行きは良くなる。地域のニーズに極限まで応えるんだ。だからそのためにまずは地域でアンケートでもして…」


ここで、僕は思うんだ。

ひょっとして循環論法かも。と。


沙羅の店、たしかに売り上げは馬鹿すぎた。

でも的確に地域のニーズに応えていたではないか。

居場所を売ること、値段を安くすること。


つまりあの店は、ニーズに応え過ぎた末路だったわけだ。


「誠くん、うちの店はさ、それやってきてるつもりだったよ?」

「…ちが…違う…。」


何て返せばいい?

どう返せば僕が正当になる?


「あの店は、応え過ぎたんだ。値段を安くすれば、確かに人気も出るし愛される。でもそれは、悪く言えばカモられてるんじゃないのか?応えてはいけないニーズってあるんだよ!」


しまった、言い過ぎた。


「そう…だよね…。」


沙羅が椅子に座り直したどすっという音が、

やけに大きく反響する。

沈黙が痛いって、まじどういうことなんだよ。


「ごめん、そんなつもりはなくてさ。その…なんだ。ちょっと強く言い過ぎたね。でも事実は事実なんだ。ニーズに答えすぎると店の形に悪影響がある。結局店は破綻しちゃうんだよ。」


何で僕が謝らないといけないんだ。

正論言っただけだろ。


「なら、どうすればいいの…?」

「それを今から決めるんだ。みんなで出したこの案から。」


正直、今日ここで話し合った内容はまだ生産性を帯びてない。

今からここで決める案、それすなわち未来を決める。


みんなわかっているのか、口角が自然と上がっていた。


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