Log 21:過剰適応
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1週間が過ぎた。
その頃僕たちは、とある会議室を借りていた。
「ブレインストーミング…?」
僕は劣等感を感じたくない。
どれだけチームに貢献するかなんて、正直眼中にない。
僕は、僕がどれだけ納得するかで世界を測る。
なぜなら僕の目は、いつだって生産性を見てるから。
間違った判断なんてない。
「そう。お前らは知らないと思うけど、有名な解決策を出す方法なんだよ。」
「…なんかムカつくなおい…。」
篤が不満を漏らすと同時に、僕はペンを握った。
「先週沙羅の店に行って、さまざまな問題点があったと思う。実際僕は問題だらけの破綻寸前店だと思ってる。」
「ひっどぉい!」
その言葉と同時に沙羅が台パンする。
あまりの出来事に、ふざけだとわかっていても笑みが溢れた。
「まあまあ、事実だろ?」
こんなに意味のない質問するべきじゃない。
早く、早く本題に入らねば。
「事実だけどさあ…。」
「はいはい、て、ブレインストーミングだけど、簡単に言えば質より量って考え方だよ。」
実際、問題点が多過ぎて一点に絞り込むと話が進まない。
「誰もその人の案を否定しない。
変な案だって歓迎するし、他の人に乗っかってもOK。
『これ言ったらみんなから引かれるかも…』とか言うくだらない感情捨てて、とにかくたくさん案を出す!」
みんなポカーンとしてるな、仕方ない。
「とにかく、恥ずかしがらずに案出すってこと!」
「わ、わかった!ならまずはSNSを運用する!だ!」
「あっつんあんたね、そんなの成功するわけ…」
話聞いてたかよこの野郎。
「ストップ。雫、他人の意見を否定しないのが、ブレインストーミング、ね。」
「あ、、、ご、ごめん。」
事実、SNSで成功を収めるのは簡単ではない。
しかし案として出してくれることだけで、感謝ってもんだ。
「いいってことよ!」
「お詫びに私も!チラシを学校で配るとかは?」
「いいね、僕はここに出た案を描いてくから、どんどん言って。」
ブレインストーミングは通常、
思考時間10分と案を出す時間20分などで分ける。
しかしこの場合、
そんなものはいらないって思うくらいの案が出てるんだ。
そこは素直に、感心したよ。
「よし、だいぶ案が出たね。正直ここまで出るとは思ってなかったかな。」
「ひど!任せろやい!」
雄志は結構ガチですごかったかも。
ちゃんと理解してたからな。
篤の出した1点の案を、連想の広さを生かして100点で再発案したり、恥ずかしがらずに案を言ってたし…。
いや、何褒めてんだ。無駄すぎる。
「なら次は選ぶターン。再現性、生産性、全部加味して考えるよ。」
「きたな、生産性…っ!」
ちょっと恥ずかしくなった。
「う、うるせー…。」
みんな笑ってるから別に良いけどさ。
「茶番はここまでね。初めは案を消すとこから始めるよ。」
よし、いいぞ僕。切り替えが全てだ。
早く決めて、早く実行する。
そうしなければ成功もクソもないからな。
「真っ先に消すのはこれだな、『篤メイドカフェ』。誰だこれ出したのはっ!!!」
「俺じゃないぜ〜?」
「消せ消せ!!!」
ちょっと無視してみようかな?
「おい誠!消せよ!」
「ん?」
「ほう、お前もそっち側か?いいぜ?俺のデスボイス萌え萌えきゅんが炸裂してもいいのか…?」
それはやだな。
「あー無理無理無理!」
僕がそう言いながら消すと、会議室に笑い声が充満した。
「まこっち、こういう時のコツとかないの?」
一変して、とてつもない真面目質問が飛んできた。
ちょっとあまりに急だったので、僕は驚き顔をする。
「うーんコツね…、商売って2パターンあってさ。ウケるものを作る、ってのと一部の需要に極限まで答えるってやり方。」
会議室が、一気に静寂を轟かせる。
「メイドカフェなんてその一例だよ。あれをよく思わない層もあるけどさ、溺愛する層と普通の層があることで成り立ってるわけじゃん。それに比べて服屋とか、ああいうのは極端に嫌がる人少ないじゃん。メイドカフェにはあった、よく思わない層、が少なくなるようにするやり方もあるわけ。」
「あんまりメイド馬鹿にしてると、田村先生が怒るぞ?」
「いやそんなつもり毛頭ねぇよ!」
話を逸らすなよ!
…ちなみに田村先生はメイドカフェ通らしい…。
「ああいう商店街の場合、前者の方が売れ行きは良くなる。地域のニーズに極限まで応えるんだ。だからそのためにまずは地域でアンケートでもして…」
ここで、僕は思うんだ。
ひょっとして循環論法かも。と。
沙羅の店、たしかに売り上げは馬鹿すぎた。
でも的確に地域のニーズに応えていたではないか。
居場所を売ること、値段を安くすること。
つまりあの店は、ニーズに応え過ぎた末路だったわけだ。
「誠くん、うちの店はさ、それやってきてるつもりだったよ?」
「…ちが…違う…。」
何て返せばいい?
どう返せば僕が正当になる?
「あの店は、応え過ぎたんだ。値段を安くすれば、確かに人気も出るし愛される。でもそれは、悪く言えばカモられてるんじゃないのか?応えてはいけないニーズってあるんだよ!」
しまった、言い過ぎた。
「そう…だよね…。」
沙羅が椅子に座り直したどすっという音が、
やけに大きく反響する。
沈黙が痛いって、まじどういうことなんだよ。
「ごめん、そんなつもりはなくてさ。その…なんだ。ちょっと強く言い過ぎたね。でも事実は事実なんだ。ニーズに答えすぎると店の形に悪影響がある。結局店は破綻しちゃうんだよ。」
何で僕が謝らないといけないんだ。
正論言っただけだろ。
「なら、どうすればいいの…?」
「それを今から決めるんだ。みんなで出したこの案から。」
正直、今日ここで話し合った内容はまだ生産性を帯びてない。
今からここで決める案、それすなわち未来を決める。
みんなわかっているのか、口角が自然と上がっていた。




